表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/207

76.デモ体験③〜小手調べ〜

◼️前回までのあらすじ◼️

七夕イベントに参加した真雪は、ブレバト紹介ブースに足を運び、なんとデモ体験に指名されたのであった。

一緒に指名された冴華とともにデモ用のアバターを作成し動作確認をするのであった。

「さて、どうしよっか。

 私としてはSnowちゃんにリベンジマッチしてもいいんやけど」


 動作確認用のバトルフィールドに転送された私達は互いに顔を見合わせ、冴華さんはなんだか嬉しそうにパラソルを回しながらそう告げる。


「えっ」


 まさか、私と再戦するために冴華さんはデモ体験に参加したのかな? でも――


「ふふふ、冗談、冗談」


 私の驚いた顔を見ると、冴華さんは小さく笑って首を横に振った。


「取り敢えず、真雪ちゃんは初心者ってことになってるから、試したいスキルを撃って来てええよ。私は適当に防御するから」


 冴華さんはクルクルと回していたパラソルを閉じて、ゆったりと構える。


 そ、そうだよね。楓先輩にも正体がバレないようにって釘を刺されてたもんね。


 アバターが異なっても冴華さんはタイトル持ちのトッププロだ。とんなスキルであろうが防御は可能であろう。


「そ、それじゃあ、魔法系のスキルを試してみますね」


 そう宣言すると、杖を構える。足元に魔法陣が出現し『詠唱状態』となる。この状態を一定時間キープすると魔法系スキルが発動可能となる。相手にしているとすぐに魔法系スキルを撃ってきているように思えるが、いざ自分が使用してみると体感時間が全く違う。今使用しようとしているスキルの詠唱時間は3秒。それが凄く長く感じる。私の本アバターの職業『拳闘士』ならば3秒も無防備でいるなんて事はありえない。


「スキル発動――【星屑(スターダスト)氷嵐弾(ブリザード)】!!」


 私が発動したのは今回のアップデータにて新規で追加されたスキルだ。杖の先から氷の奔流が飛び出して冴華さんを襲う。


「なるほど、新規の『星屑(スターダスト)系の魔法』やね。

 じゃあ、私もこの武器の性能を試してみるわ」


 冴華さんは閉じていた傘を開いてそれを『盾』として使用する。次々と襲う氷の礫を傘が防ぐ、が――


「っ! あかんな。耐久が低いっ!」


 手元の感覚からすぐに傘の耐久が限界を越えるだろうと判断した冴華さんは、仕込み刀の刀身を引き抜いて、すぐさま回避行動に切り替える。

 瞬間、傘が破壊され、冴華さんが居た場所には小さな炎が残るのみであった。

 移動時のエフェクトから、どうやら冴華さんのデモアバターは『火』属性のようだ。


 対する私も魔法発動でぐんぐん体力が減少しているのを確認して慌てて魔法を停止する。


「なるほど。仕込み刀については、耐久が低くて常時盾として使うのはちょっと無理やね。

 いざというときに使う程度が正解かな。でも、傘部分が破壊されても、刀部分が残り続けてくれるのは嬉しい仕様ね。多分、傘部分と刀部分で二つの耐久値を持ってるみたいね」


 今の一連の遣り取りで得たことを確かめるように手元に残った刀を振って状況を確認する。


「真雪ちゃんの方は得るものがあった?」


「はい。新規スキルの星屑(スターダスト)系の魔法ですが、放射時間が無制限なのですけど燃費が悪いですね。10秒足らずの時間、放出しただけですけど、体力が3割近く消費してしまいました。確実に命中するタイミングで使用しないと自滅しかねないスキルですね」


 私も今得たことを伝えながら、魔術士の固有スキル【瞑想回復】にて体力を回復させる。【瞑想回復】は魔法系スキルにて消費した分の体力をゆっくりとだが回復してくれる便利なスキルだ。


「なるほど。星屑(スターダスト)系の魔法は無制限に放射可能って触れ込みだったけど、デメリットもあるわけね。

 私も【星屑(スターダスト)炎熱弾(フレイム)】を登録していたけど、確認は省略して良さそうね」


 私の言葉を受けて、冴華さんが小さく頷く。


 ちなみに既存の放射スキルは放射時間、もしくは球数が決まっていて、その時間もしくは球数以下ならばキャンセル可能ではあるが発動時に固定の体力量が消費される仕様になっている。

 今回新規に追加された『星屑(スターダスト)系』のスキルは放射時間は無制限で、消費体力は放射時間に比例して消費されるものであった。便利そうなスキルだが、やはり使ってみないと良し悪しは分からない。


「使ってみた感じ掃射速度は『乱舞弾(シェルパレッド)系』の掃射魔法と殆ど変わらなかったのですね」


「って事は、私達にとっては脅威ではないスキルって事かな?」


 冴華さんの言葉に「そうですね」と頷いて見せると、冴華さんは「ぷっ」と吹き出して笑い始めた。


「えっ、えっ? なにか変なこと言いましたか?」


「はははははっ…… ごめん、ごめん。

 今の質問に、強がりでも奢りでもなんでもなく、正直に肯定するのって、貴女ぐらいやで。

 乱舞弾(シェルパレッド)系魔法っていったら盾装備が出来ない職業が範囲に入ったら負けを覚悟するものなんよ」


 笑い過ぎたためか涙目になった瞼を擦りながら説明してくれる。


 そう、なのか……

 あまり実感がないけど、そうみたいだ。そうか、私は拳の速度に自信があるから対処可能だけど、普通のプレイヤーは対処が難しいみたいだ。


「それじゃあ、次は――」


 次に試すスキルについて話をしようとしたその時、大きな歓声が聞こえた。


 上空に表示されている画面に目を向けると、舞台で行われている討伐バトルが終盤に差し掛かり盛り上がりを見せていた。


 討伐対象となっていたのたレアモンスター『ゴブリンキング』だ。

 緑の肌を持つ巨体のモンスターで、武器・防具も扱い知性も高く、発達した筋肉により繰り出される攻撃は凶悪で俊敏も高い上級モンスターだ。

 さらに一番厄介なのは配下のゴブリンを召喚して物量で攻めてくる点だ。

 しかし、今回はデモ用に調整されているようで数体しかゴブリンは召喚されていなかった。そのゴブリンも金色装備のアバターによる伸びる槍の攻撃によって一方的に屠られていた。そしてゴブリンキング本体も二刀流のアバターによって押し込まれており体力も赤ゲージまで低下している。


『さあ、ゴブリンキング討伐ミッションも大詰めだぁ!

 おおっと、ここでゴブリンキング、赤ゲージになったため瀕死時スキルの【憤怒】が発動だぁ!』


 実況の声とともに、ゴブリンキングが雄叫びを上げ、その筋肉が更に肥大化し上半身に纏っていた鎧が弾け飛ぶ。その代わりに全身が真っ赤なオーラに包まれゴブリンキングの攻撃力が大幅に上昇する。

 そのゴブリンキングの変貌に観客席が恐怖しどよめく。


 ゴブリンキングの雰囲気と闘気に充てられ、男子高校生二人の攻撃の手が止まる。


 このままじゃ、まずい。完全に萎縮してしまっている。


 形勢逆転となりうる大きな隙を見せてしまったのだが、舞台に響いた女性の声がその状況を覆す。


「諦めないで、相手の体力はあと少しよ!

 私が援護します。スキル【氷結縛鎖(フリーズチェーン)】――多重詠唱(マルチキャスト)――独自魔法(オリジナルマジック)『アンドロメダ』発動っ!!」


 その声はセシル叡王のものだった。

 セシル叡王のスキルにより生み出された幾重にもなる氷の鎖が凶暴化したゴブリンキングを拘束する。


『ぐるおおおおおおおおっ!!!!!』


 ゴブリンキングは必死に抵抗するが拘束を破ることができない。


「くっ、あまり持ちそうにありませんわ!

 一気に決めて下さい」


 その言葉に、ゴブリンキングの咆哮に慄いた状態だった二人のアバターは正気を取り戻し「分かりました」と言葉を返し頷き合う。


「よし、一気に行くぞ!」


「応っ!」


 覚悟を決めた声とともに、二人は一気にゴブリンキングへと駆け出す。


「奥の手だ。【渾身】発動。

 いくぜ、必殺スキル【刺突乱舞】!」


「スキル【属性纏衣】――更に【連撃の極意】を重ね掛け。

 うおぉぉぉぉぉっ! スキル【星屑(スターダスト)剣連撃(ソードスラッシュ)】発動ぉぉぉっ!」


 身動き取れないゴブリンキングに高速の刺突と、雷を浴びた二刀流の連撃が襲う。


『ぐっ、ぐおぉぉぉぉぉぉっ!!!!』


 ゴブリンキングはなんとか反撃しようとするがなす術がなく、現環境での最強装備をつけた二人の攻撃を全身に浴びて断末魔の叫びを上げ、全身を粒子に変えて消えていった。


 その光景に会場全体が湧き上がる。


 デモ参加者の男子高校生の二人も「はは、俺たちA級の討伐モンスターを倒しちゃったぜ」「セシルさんの援護があったとしても、A級討伐なんて夢みたいだ」と喜び合っている。



 私はその光景を見ながら「す、凄いね」と言葉を漏らす。


「う〜ん、そう見えるか……

 私から見たら、ぶっちゃけ茶番劇やね。

 あのゴブリンキングについてはデモ用にだいぶ強さが下方修正されてたみたいだし、あれくらいのモンスターだったらセシルさん一人で倒せそうやけど、それでも敢えてギリギリを演じて参加者に倒させるように演出したんやな。

 プロとして観客を沸かせるようにするのは理解できるんやけど、未だにこういう演技じみたバトルは好きになれへんな」


 冴華さんは不満気な表情でそう感想を呟いた。


「えっ、そう、なんですね」


 冴華さんの評価に驚いて振り向くと、冴華さんは慌てて「あっ、ごめんごめん。冗談や。今の無し」とぎこちない笑顔を作って否定した。


 その後、何だか気まずくなって少し会話が途切れてしまう。上空に表示されたモニターから歓喜の声と歓声がただただ聞こえてくるのみだ。


「ねぇ真雪ちゃん。この調子だと次の討伐クエストもすぐ終わっちゃいそうだし、意見交換は後回しにして、バトル形式で時間いっぱい楽しまない? もちろん本気は出さずにだけど」


 冴華さんは真っ直ぐにこちらを見据えると、そう提案してくる。

 上空のモニターでは2組目の挑戦者として社会人カップルの組が舞台に呼び出されていた。


 なんだろう、この感じ。やはり冴華さんは私と本気で闘いたかったのだろうなと直感的に感じた。


「分かりました。私も【超過駆動(オーバードライブ)】を使用しないでどこまで闘えるか試したかったので、是非ともお願いします」


「ありがとう、真雪ちゃん。ほんじゃ、ひと勝負よろしくね」


 冴華さんは傘部分が無くなった仕込み刀を構える。


「あの、お手柔らかにお願いします」


 私も魔法の杖を構えて戦闘態勢となった。

次回、デモ用アバターでの真雪vs冴華の再戦です。

本気を出しての闘いは出来ないですが、どうなっていくでしょう。乞うご期待下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ