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62.練習試合⑥〜個人戦〜

◼️前回までのあらすじ◼️

千葉県立津張工業高校との練習試合。

団体戦3回戦はSnowの活躍で勝利を手にした。

(今回は三人称視点でのお話です)


※その他、ご報告※

作者の洲雷ですが、体調を崩していたとお伝えしていましたが、8/23にPCR検査を受けたところ新型コロナのデルタ株の陽性と判定されました。

なんとか重症化する事なく、回復致しましたのでご報告です。

まだ体調は万全ではありませんが、連載を再開しますので、これからも応援よろしくお願いします。

 団体戦3戦目は波乱の幕切れとなった。


 両高校が隠していた秘密兵器たる最強の『切り札』が激突し、そして神里高校の切り札であるSnowが勝利を収めたのだ。


 両校とも想定外の結末に言葉を失っている。


 最強の切り札たるジョーカーの参戦で、どんな事が起きても勝利は揺るがないと思っていた津張工業高校の面々。

 そもそも切り札を使う予定が無かった神里高校の生徒たちも、まさかの両校の『最強』の激突となったことに驚きを隠せずにいた。


 Battle Ended


 バトルが決着したとこでバトルモードが解除され、観戦モードだったアバター達がバトルフィールドに現れる。


 最後までバトルフィールドに残っていた勝者のSnowは、右腕を上げて団体戦メンバーに勝利の合図を送ると、最初に退場となったアカネが抱きついて喜んだ。


「まったく。一人になったら棄権しろって言ってあったのにな」


 もう一人の団体戦メンバーのカエデは一つ息を吐くと、ゆっくりとSnowに歩み寄りぐしゃりとSnowの頭を撫でた。


「よくやったなSnow。だけど――」


 チラリと相手チームの方へ視線を向ける。


 そこにはSnowに倒されたジョーカーに集まる相手高校の生徒達の姿があった。


「まさか、ジョーカーさん、大丈夫ですか⁉︎」

「ジョーカー」「ジョーカーさん!」


 心配する仲間の声を遮るように腕を上げると、ジョーカーはゆっくりと上半身を起こし立ち上がった。


「ふふふ、ははははは! 敗けたよ。清々しいまでの完敗だ」


 ジョーカーは投げ捨てた学生帽を拾い上げると、それを目深に被る。


「ジョーカーさん。やはりあの相手は」


「ああ、間違いなく『くまたろう』だね。まさか、ここまでの実力差があるとは思わなかったよ」


 巨漢のゴウキが声を掛けると、ジョーカーは被った学生帽の鍔の位置を合わせながら答える。


「やはり相手にSnowの正体がバレてしまったようだな」


 カエデの言葉にSnowははっとする。そう。Snowの実力を隠すために、もし一人だけとなった場合には棄権するように言われていたのだ。

 今の試合で対戦相手だったジョーカーはSnowがオールスターゲームにて乱入し女王を倒したアバターである事に気づいたようだった。


「あっ、えっと、どうしよう……」


 Snowはオロオロと辺りを見回すが、周りの仲間達は苦笑を浮かべるのみであった。そんな周りの反応に「あう……」と声を漏らすSnowに声を掛ける者がいた。


「いい試合でした」


 それは先程まで対戦していたジョーカーであった。バトル中の荒々しい雰囲気ではなく、気の弱い優等生のような柔らかな空気を纏っていた。

 Snowは差し出された手を握り返すように握手に応じた。バトル時とは全く違うジョーカーの雰囲気に戸惑っていると、その心を見透かしたかのようにジョーカーが言葉を続ける。


「バトルの時と雰囲気が違って驚いているみたいだね。僕は人を傷つけるのが苦手で、ゲームのバトルになるともう一人の自分が出てくるんだよね。簡単にいうと多重人格、みたいなものかな。今話しているジョーカーが素の人格だから、気兼ねなく話してくれると嬉しいです」


 にこりと柔和な笑みを見せる。Snowは戸惑いながらも「あ、あの。はい。分かりました」と答える。


「ふふふ。貴女も僕に近いのかな?

 なんだかバトル中と比べると印象が違うね。もう一人の僕が部員の事を『ザコ』と言ってしまった時の凛々しくて圧倒されるような強さがあまり感じられないね。

 これならば『着ぐるみ装備』をしていなければ、貴女が『くまたろう』だって気づく人も少ないだろうね」


 握手をしたままジョーカーが言葉を続ける。


「あっ、あの、私が『くまたろう』だってことは……」


「あぁ、もしかして秘密だったかな?

 安心してよ。今のバトルはここの学校のローカルネットワーク内で行われた事で記録は残らないし、うちの学校の生徒もそのことを言いふらすような人はいないから……」


 Snowの言いたい事を先読みして、ジョーカーは言葉を紡ぐ。そして、握手をしていた手を離し、学生帽の鍔をぐいっと一度目深に下げると「そうだよな、お前ら」と呟くと、ビリビリと空気が震え、津張工業高校のアバター達は震え上がるように背筋を伸ばし「はいぃっっ!!」と答えた。


「ははは。ほらね。いい仲間達でしょ?」


 学生帽の鍔の位置を元に戻しにこやかに笑うと、ジョーカーは自分の高校のメンバーの中に戻っていく。


「あっ、言い触らしはしないけど、今のバトルでうちのみんなは貴女が『くまたろう』だって知ってしまったからね。

 この後の個人戦ではうちのメンバーはそのつもりで闘うから、手抜きはしないで本気で闘ってもらえると嬉しいな」


 一度立ち止まって振り返ると、ジョーカーはそう言葉を残して行った。


「おおー、ジョーカーさんを負かしたその実力、今度は俺に見せてくれよ!」


「はっはー、俺様の棍捌きを見せてやんぜ!」


「くっそ、世界レベルの強さ、闘ってみたらと思うとゾクゾクするぜ。個人戦で是非とも闘いてぇ!」


 不良軍団に見える津張工業高校のアバター達が嬉しそうに声を上げた。


 その後、一旦昼休憩を挟み、午後に個人戦を行う事となった。


 午後になると、なんとSnowの周りに個人戦を申し込もうと津張工業高校のメンバーが集まった。強い相手と闘いたいと思うメンバーが多かったのだろう。

 このまま希望してでの個人戦とすると対戦が偏ってしまうと判断から互いの参謀であるレッドリーフとジョーカーが話し合い、システムのランダム抽選機能を使っての個人戦となった。


 こうして満遍なく互いのアバターと戦う事になり、その対戦結果に一喜一憂する事となった。

 津張工業高校の実力は当初想定していたものに比べて遥かにレベルが高く、個人戦の成績もトータルでは神里高校がやや劣勢となった。


 個人戦で良い成績を収めたのは、5戦全勝だったのがセツナとクルミ、そしてSnowの三人のみであった。

 セツナは部長の意地があり、初戦から奥の手の『 天羽々斬(あめのはばきり)』を召喚し勝ちをもぎ取った。あと直情的な戦闘スタイルが多い津張工業高校のメンバーに対して搦め手を得意とするクルミの戦法がハマり勝利を収めた。


 そして、その二人以上に実力を見せつけたのがSnowだった。

 個人戦の3戦目、ランダムでの対戦相手が決まった時に響めきが起きた。その対戦カードが


 Snow 対 ゴウキ


 であった。それまで並行して5戦が同時に行われていたのだが、そのビッグマッチについては観戦したいという希望が殺到し、一旦他の対戦をストップさせて、その対戦のみが行われる事となった。


 結果はSnowが勝利。風属性での射程強化と元からの剛力にて序盤はゴウキが押していたのだが、Snowの『流水の捌き』を突破することができず、蓋を開ければSnowの圧勝となった。Snowの体力ゲージも半分(きいろ)まで減っていたが、その差以上の実力差が見えたバトルとなった。


 こうして、津張工業高校との練習試合は、相手高校の実力No.1と2を倒して全勝したSnowの実力が際立つ形で終える事となった。


 ひとつだけ不安要素を挙げるとしたら、個人戦5戦全てが終わったタイミングでSnowが体調を崩して一人先にログアウトする事となったこと。

 やはり一日中ぶっ続けてゲームをする事はまだSnowとしては負担が大きいのだと、練習試合後の三年生によるミーティングで話し合われる事となった。


 夏の全国高校ブレバトグランプリに向けて、県予選が始まるまであと僅か。想定以上にレベルの高かった千葉県立津張工業高校との練習試合を終えてレギュラー選考も佳境となっていくのであった。

次回は、津張工業高校のNo.1の『ジョーカー』視点のお話になります。

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