51.オールスターゲーム⑩〜それぞれの決意〜
◼️前回までのあらすじ◼️
オールスターゲームにて最強と呼ばれていたSaeKaを倒した真雪。
その試合を受けて、それぞれ心に決意の火を灯すのであった。
side:柊木 真雪
会場に戻ると刹那先輩に直ぐにチャットに入る様に合図された。
席を外していた私達3人は頷くとすぐにチャットに入る。
セツナ:さっきのクイーンとのバトルに出たのって、柊木か?
いきなり核心をついた質問が画面に踊った。
ルナ:えっ、えっ? アナウンスだと飛び込みで楓先輩じゃない誰かが挑戦したって出てたけど、そんな事ありえないんじゃ……
突拍子も無い質問に美月ちゃんの狼狽た声がアプリに拾われて文字として表示された。
レッド:席を外して帰って来なかったことと、あの戦闘スタイル。これは実際に対戦したことがある俺等しか感じ取る事は出来ないかもしれない事だが、やはりあの白熊は柊木としか思えない。
椛谷先輩の冷静な分析が続く。
楓先輩と朱音ちゃんがこちらを見る。その視線には私への信頼が込められていた。正体を明かすも隠すも私に一任しているようだ。
私は少し考え小さく息を吸うと、言葉を発してチャットに文字を表示させる。
スノウ:うん。私だよ。けど、偉い人にお願いして正体を隠してもらったんだ。
にひひ、と笑みを見せる。
やはり私は隠し事は苦手だ。なので、やはり先輩や美月ちゃんには本当のことを言おうと思ったのだ。
それを聞いた三年の先輩、美月ちゃんはもちろん、楓先輩と朱音ちゃんも私の言葉に驚いていた。
カエデ:意外とあっさり打ち明けるんだな
最初に反応を返したのは楓先輩だった。
セツナ:やはりそうか。Snowが強いのは分かっていたが、まさかクイーンを倒してしまうほどとはな……
確信していた様な言い回しだったが、どうやらカマをかけていただけだった様だ。真実を知った驚きの言葉が文字として踊る。
レッド:イベントを見てブレバトに興味を持ってもらい入部への動機になればという計画だったのに、逆に俺達がSnowに入部してもらいたいという想いが強くなる結果になってしまったな……
椛谷先輩の言葉が続いて表示される。先輩方も秘めた思いを隠すではなく、正直な思いを打ち明けてくれた。
しばしの空白。
その沈黙を破ったのは、朱音ちゃんだった。
アカネ:風祭先輩、ひとつお聞きしていいですか?
チャットに文字が踊る。
チラリと朱音ちゃんの方を見ると、なにか決意に満ちた表情をしていた。
カエデ:構わねえぜ。なんだ?
アカネ:先程の会話で、真雪が風祭先輩の格闘技の師匠だって聞きましたが、最近になって先輩がすごく強くなったのって真雪のお陰だったりするんですか?
カエデ:ああ。間違いなくSnowのお陰だ。
朱音ちゃんの受取り様によっては失礼に当たるかの様な質問に、しかし楓先輩は即答で肯定する。
思いもよらないやりとりに、私は「ええっ」っとオロオロするばかりだった。
アカネ:私も真雪に指導してもらったら強くなれると思いますか?
続けての質問。その質問にしばし考えてから楓先輩が回答する。
カエデ:ジョブが違うから断言は出来ないが、強くなれるとアタシは思うよ。Snowの凄いところは格闘術の強さではなく、相手の動きを見切る眼だと思っている。その眼で見てもらい助言を貰うだけでも強さは変わってくるはずだ。
その文字を見て朱音ちゃんは真っ直ぐにこちらを向く。その真剣な眼差しにたじろぐ。
アカネ:真雪…… eスポーツ部に入って欲しい
急な言葉。誰かに言われるだろうと思っていたけど、まさか朱音ちゃんに言われるとは思わなかった。
アカネ:実際にクイーンと闘って分かったの。ただ楽しんでいるだけじゃ、私の言葉はクイーンに届かないって。私、強くなりたいの。だから、真雪に指導して貰いたい。
真っ直ぐな視線。多分、朱音ちゃんの中で葛藤があっただろう。
私も決断しなくちゃいけない。
朱音ちゃんの眼差しに真っ直ぐな視線を返すと、私は柔らかく笑って見せる。
みんなが私の事を想って無理に勧誘してこなかったのは気付いていた。学校のクラス以外での団体活動に溶け込めるか不安で、みんなの気遣いに甘えていた。けど、本当はすこし憧れてもいたのだ。みんなで同じ競技を行い、日本一という目標に向かって頑張る姿に惹かれていたのだ。ただ、ちょっとの切欠が欲しかったのかもしれない。
今がその時なのだと思う。だから――
「うん。分かったよ。私、部活に入る」
そう答えた。
美月ちゃんと、先輩方は私の言葉がチャットに表示されると目を見開いて、それぞれ異なった反応を示す。
刹那先輩は喜び、ガッツポーズを作っていた。
椛谷先輩は「色々と画策したが、決め手は同級生の言葉だったか」と冷静に状況分析してメガネの位置を直す。
楓先輩は驚いた顔を見せたが、すぐに「アンタ自身が決めた事だ。アタシはそれを尊重するよ」と納得してくれた。
美月ちゃんは話の展開についてこれずに、オロオロしていたが、飛び上がって喜びを表現していた隣の朱音ちゃんに抱きつかれて顔を真っ赤にしていた。
こうして私は部活加入を決心したのであった。
★
side:姫野宮 冴華
敗けた……
私は呆然と敗者モードとなった画面を見つめていた。
敗けたのは、どれくらい振りだろうか。
多分、初めて『名人』と対戦して新人連勝記録が途切れた時か。
あの時はこれがプロの世界の最高峰か、と感心したのを覚えているが、手の届かない様な強さだとは感じなかった。
しかし、今回は違う。相手は底の知れない強さだった。
奥の手である奥義を繰り出しても届かなかった相手。
どんな相手であっても引けを取ることはないと思っていた私のプライドは粉々に砕け散った。
スポンサー企業の用意してくれた最高の環境での訓練で私も強くなり、プロデビューしてからも勝ちを重ねていた私は自惚れていたのかも知れない。
試合が終わったことでバトルフィールドが消えて、通常空間にアバターが現れる。
まずは対戦相手が誰であったかを確認する必要がある。
私の敗北に場内が騒然となり、アナウンサーが騒ぎ立てているがそんな事は気にならない。
――っ!!
白熊の格好をした相手に声をかけようとして、相手の姿がないことに気づく。
アバター欄には「ログアウト済」の文字のみが残っていた。どうやら、バトル終了と同時にログアウトした様だった。
『SaeKa闘聖。今のバトルの感想を頂けますか?』
本来ならば勝利した選手に対してのインタビューが先に行われるのだが、その相手がいないため私にマイクが向けられる。
正直、私の心は穏やかではないのだが、プロとしてインタビューには応えなくてはいけないので、笑顔を作って対応する。
「会場の皆様にはお恥ずかしいところをお見せしてしまいましたが、対戦相手が想像以上に強くて驚きました」
無難な答えを返す。
『やはり連戦の疲れが出てしまった感じですかね?
対戦相手は闘聖が望んだ相手でしたか? 連戦だったとはいえ闘聖を倒した実力。どの様な方なのか教えていただけないでしょうか』
インタビュアーから矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
相手のことなんて、私が知りたいよ!
そんな心の声とは裏腹に、冷静を装って返答する。
「連戦の疲れなど言い訳にならない程、相手が強かったです。
相手についてですが、私が望んだ相手とは違っていたみたいですね。相手がどなただったのか、私も知りたいところです」
その回答にインタビュアーは驚き、会場が騒めく。
やっぱりあの強さ、高校生のはずないよな……
他のプロだったのでは?
もし素人だったら即プロ昇格もあり得るほどの強さだったよな
もしかして冴華をモデルにしたアニメのラスボスの妖王が現代に現れた、とか?
様々な憶測が飛ぶ。
『相手が誰か分からない、のですか。しかし、最新のセキュリティで決められた選手しか参加できないはずでは――っと、ここで新たな情報が入りました。
えっと、対戦相手側のダイブルームのエンジニアからの情報によると「永久格闘技参加資格権」を持ったプロ格闘家が飛び入りで参加した、とのことです。
なんとなんと、ゲームとは別の本物の格闘家がサプライズ参戦したようです。これは想定外のスペシャルマッチだった模様。具体的にどの方が参加したのか、現在調査中とのことです!』
新たな情報がインタビュアーから告げられ、更に会場が大きく騒ついた。
プロの格闘家?
少しだが相手と話したが、そんな感じはしなかったのだが……
『SaeKa闘聖にも知らされていなかった、飛び入り参加の異種格闘技戦となっていたのですね!
これは闘聖が驚くのも無理ありません。
さすがに高校生と思ってた相手がプロ格闘家だったとなると、番狂わせが起きても仕方ないですね。
今回のオールスターゲームでは、今までに無い特別な試合が多く繰り広げられていて、見ている私達もハラハラワクワクですね!
SaeKa闘聖、連戦後のお疲れのところインタビューに答えていただき、ありがとうございました。
では、準備が出来次第、次のバトルに移りたいと思います!』
インタビュアーはそう締めくくって、イベントを進行させた。
私は騒つく会場の観客に手を振ると、ゲームをログアウトした。
★
その後、つつがなくイベントが進行しオールスターゲームは終了した。
冴華はイベント中は平然を装っていたが、イベントが終わるとすぐに2つメッセージを送った。
一つは楓に宛ててだ。
最後まで正体不明だった白熊の着ぐるみを着た格闘家。バトル内で話した内容から、その正体は楓の知り合いに間違いがないと確信していたからだ。
「それに、謝罪をすると約束したからな……」
メッセージを打ちながら、冴華は呟く。
あのバトルにて、白熊の格闘家と交わした約束。一方的に突き付けられた約束だが、守らなくてはならないと思っていた。
まずは最初に自分の我儘に巻き込んですまなかったと、楓に対する謝罪を
次にいくら機嫌が悪かったからといって、相手の言葉も聞かずに一方的に叩きのめしてしまった神里高校の選手に対して謝罪をする場を設けてほしいとの要望を
そして最後に、自分を負かした白熊の選手についての問い合わせをしたためてメッセージを送った。
最後の質問についてはもしかしたら回答は貰えないかもと思っていたが、楓からの返信にあっさりと回答が返ってきた。
秘密は厳守してくれ、と前置きがあり、あの白熊の正体が書かれていた。その内容を見て驚愕する。
あの白熊の正体は神里高校の後輩だと書かれていたのだ。
「まさか、年下。高校一年の少女だなんて……」
信じられなかったが、楓が嘘をつくはずもないので真実なのであろう。
ブレバトの世界で国内最高の頂の近くまで上り詰めていたと思っていた自分が恥ずかしくなる。
年下で、しかも部活にすら入っていなかった少女。
幼少期には神童と呼ばれ、ブレバトでも高校では無敗で日本一となり、プロでも勝利を重ね周りに天才だと持て囃され、その気になってしまっていた自分を反省する。
上には上がいる。その少女こそ、紛れもない天才だ。
プロになってどこか慢心してしまっていた部分があったのかも知れない。子供の頃、大人に勝てず、泣きながら必死に木刀を振っていた頃があった。それに比べて今はどうだ。最高の環境で練習はできている。しかし、あの頃の必死さはあっただろうか。機械の弾き出す数値にばかり目が行っていて、必死さは忘れてしまっていたのかも知れない。
楓からのメッセージの続きにはこう綴られていた。
その少女がeスポーツ部に入部する事になった、と――
心の中に火が灯る。
「あの子ならば必ず全国高校ブレバトグランプリに出てくるはずだ」
新たな目標を見つけた。相手はどう思っているか分からないが、最高の好敵手だ。
冴華は新規のメッセージウィンドウを開き、文字を打ち込む。
2通目のメッセージは自らが契約しているスポンサー企業に宛ててだ。
メッセージの内容は『オールスターゲームで発表したプロ専念の発表を撤回したい』、そして『全国高校ブレバトグランプリへの出場手続きをプロ機構に申請したい』との旨の文字を打ち込んだ。
「次は私が挑戦者だ」
心はもう決めていた。
冴華は吹っ切れた様な清々しい笑みを浮かべると、メッセージの送信ボタンを押下した。
これにてオールスターゲーム編終了です。
やっと真雪が部活参加です。
キリがいいとこまで来たのと、ここ最近酷評の感想・メッセージが続いてモチベーションが低下しているので、一旦投稿を休止します。
次回の投稿は2021/07/10 7:00予定です。
(評価、ブクマ入れていただければ、モチベーション上がって再開が早まるかもなので、オネシャス…)
※こっそり書き溜めていた本作品の前日談をこっそり投稿しました。気になる方は是非そちらもご覧ください。
https://book1.adouzi.eu.org/n1037hb/
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