43.オールスターゲーム②〜トッププロの闘い(討伐クエスト編)〜
◼️前回までのあらすじ◼️
ブレバトのオールスターゲームを観戦するよ。
「ほぇ〜、すごい〜」
思わず感嘆の声が溢れてしまう。
目の前の舞台で戦闘が行われており、その様子が大型スクリーンに映し出されている。
こういうイベントは初めてなんだけど、これほど凄いとは思わなかった。
舞台では大型のドラゴンに三人のアバターが対峙している。
それは本物と見間違える様なリアルなものであるが、それはゲーム情報を最新のホログラム技術にて映し出された三次元映像だ。
大型スクリーンに映し出され、テレビ放映されている平面な映像よりも、舞台で繰り広げられている立体映像の戦闘の臨場感が半端ではない。
それこそ、会場で見ている観客だけが味わえる臨場感だ。ブレバトにログインし、観戦モードで見るならばその臨場感も味わえるだろうが、大型イベントについてはゲーム内での観戦は不可となっている。
『討伐ランクS級の古代竜に果敢に立ち向かうのは、最強の拳闘士フェルギナス! 目にも止まらぬドラゴンのため攻撃を難なく回避し距離を詰めるぅ!!』
アナウンスの声が熱を浴び、会場のボルテージが上がる。
ドラゴンの攻撃は苛烈で、爪の攻撃や尻尾の叩きつけ攻撃など、美麗な立体映像と現実味を帯びた効果音で、まるで本当に衝撃波が襲ってきて、地面が揺れているような錯覚に陥る。
そんな凶悪な攻撃の嵐を巧みなステップで躱しながら、懐に飛び込み拳の連打を叩き込んでいる拳闘士がいる。
それはプロの中でも最強と呼ばれる『名人』位を持つアバター名『フェルギナス』だ。
一発一発は軽微なダメージだが、それを何度も連打で浴びせかけ、エネミー特有の三段で表示されている莫大な体力ゲージが目に見えて減少している。
ドラゴンは堪らず身を捻り尻尾による横薙ぎ攻撃を繰り出す。しかしそれをフェルギナスはスキル【二段跳躍】を駆使して巧みに躱す。
すごい身のこなしだ。
柳のように相手の攻撃を受け流すことを得意とする真陰熊流と異なる、完璧に回避することに特化した名人の動きに、こういう防御方法もあるのかと感心させられる。
「名人にだけいい所持ってかせねぇぜ!」
『おおっと、ここでウェポンマスターの二つ名を持つ武仙・ケンヤが動く!』
先程から蛇腹剣にて牽制攻撃を繰り返していた戦士が、大振りの行動をとったドラゴンの隙を突いて、武器を鞭モードから剣モードに変化させて間合いに飛び込む。
そのアバターは『武仙』のタイトルを持つトッププロ『ケンヤ』である。
ドラゴンも近づいてくる敵を察知すると、すぐさま息を吸い込み火炎吐息を吐き出して応戦する。
「きゃああっ!」「うおぉぉっ!」
その迫力ある炎の立体映像に、観客席から悲鳴とどよめきが起きる。実際に炎の奔流が客席にまで襲いかかったかのように見えるのだ。もちろん立体映像なだけで熱や吹き付ける圧力を感じることはない。
続いて戦士アバターの後ろにいた観客から歓声が上がる。
そこに座っていた観客には炎が届いていなかったからである。
「神羅無双流・海割り」
間合いを詰めながら戦士であるケンヤが炎のブレスを切り裂いていたのだ。技名にもなっている海を割って道を指し示した先導者のように、目の前に迫っていた炎の波が割れて一筋の道が示される。
「それじゃ、この日の為に仕込んだ特別な武器を披露するぜ! スキル発動【武具錬成】!」
普段ならば対戦相手以外の声は遮断されるバトルだが、イベントのため観客の声が戦闘中のアバターまで届いている。
自らの技で盛り上がる観客の声を受けて、テンションを上げたケンヤは観客に向けて大技を繰り出すと宣言すると、スキルを発動させて武具を具現化する。
現れたのは人の背ほどもある大きな杭打ち機だ。それが剣を持っていない左腕に装備される。
とんでもない重量のはずだが『戦士』の固有スキル【武器重量軽減】によって軽々と片手で扱ってみせる。
「行っくぜぇーーーーー!!!!」
炎が割れ、ドラゴンの顔が現れると、ケンヤは跳躍し身を捻り身体を真横にする様にして縦回転し、アッパーの要領で喉元に杭打ち機を叩きつける。そして――
「パイル、バンカーーーーーー!!!!」
叫び声と共に杭打ち機を起動させ、杭を打ち出す。打ち出された杭はそのまま相手の喉元に突き刺さる。
「ギギャアァァァァッ!!!」
ドラゴンの絶叫と共に体力が大きく減少する。
『大技が炸裂ぅぅぅぅ!!! これは、やったか!?』
アナウンスの声が興奮気味に響き渡る。
「ちょ、それダメだから。その言葉フラグだからっ!」
杭打ち機の反動で弾き飛ばされ無防備となったケンヤが不安を口にした瞬間、怒り狂うドラゴンの目と合う。
「グルガァアァァァッ!!!」
ドラゴンの爪攻撃が、ケンヤを襲う。先程の攻撃の反動でバランスを崩しているケンヤは回避不能だ。
しかもドラゴンの爪は赤いオーラが立ち上っている。
エネミーが大ダメージを受けた時に稀に発動する攻撃威力倍化スキルの【逆鱗】が発動したのだ。
ただでさえとんでもない攻撃力のエネミー。その攻撃力を更に倍化させた一撃を繰り出したのだ。まともに喰らってしまえばひとたまりもない。
絶体絶命のヒーローを案じて観客から悲鳴が上がる。
「まったく仕方ないですわね。感謝しなさいよ!
スキル【氷結盾】――多重詠唱――独自魔法『アイアス』!!」
距離を取って様子を見ていた魔導士アバター『セシル』が複雑な積層型の魔法陣を展開して魔法スキルを発動させる。このアバターは6大タイトルの中で唯一職業の縛りがある『叡王』のタイトルを持っているトッププロだ。
シュウウと大気中の水分が急速に冷やされ寄り集まってケンヤの前に大きな氷の盾が出現する。それは伝説の盾『アイアスの盾』を彷彿とさせる七層の盾だ。
多重詠唱により「氷の盾」を出現させるスキルである【氷結盾】を七つ並列発動させたのだ。代償として体力が1割減少するが、7回スキルを発動させた時と比べてると減りは少なく、コストパフォーマンスは極めて高い。
しかし――
バキバキバキィィィィィン!!!
「う、嘘だろぉ!!」
とんでもない威力であったドラゴンの一撃はその七層の盾を砕き貫いてケンヤを襲う。なんとか蛇腹剣で防御したのだが、その威力にケンヤは弾き飛ばされ地面に転がる。
「逆鱗状態の攻撃ならばやはり抑えきれないですわね。まぁ、即死じゃなかっただけ御の字って事で」
セシルは冷静にそう分析すると、再度詠唱状態に入る。
「くっそ、毎回思うがエネミーの設定、おかしいだろ……」
ケンヤは愚痴りながら剣を杖代わりにして立ち上がる。が、蛇腹剣の弱点である耐久の低さが災いして、立ち上がった瞬間、その剣が砕け散る。
「どわっ、っとっと。って、ヤバっ」
体制を崩したケンヤが目にしたのは、突進攻撃の予備動作に入っているドラゴンの姿だった。
「グオオオッ!!!」
唸りながらドラゴンが地面を蹴る。
「ヤバヤバヤバ、スキル【武具錬――
間に合わない、セシル、何とかして!!!」
スキルが間に合わないと判断したケンヤは、唯一の防具である鉄甲にて防御態勢となり、必死に仲間に助けを求める。
「言われなくてもっ、ですわ!
スキル【氷結縛鎖】――多重詠唱――独自魔法『アンドロメダ』!!」
セシルが魔法を唱えると、氷の鎖がドラゴンの突進を止める。が、それも一瞬だ。すぐに鎖に亀裂が走り、破壊される。
「くっ」
セシルの口から苦悶の声が漏れる。
捕縛型の魔法が破られ、反動として通常の消費以上の体力が削られる。
「ほっほっほ。上出来じゃ。この一瞬があれば十分。
二人ともお膳立てありがとの」
緊迫したこの場面にそぐわない柔和な声。声の主は最初にドラゴンと近接格闘を行っていたフェルギナスだ。
「我流奥義・波濤烈拳!!」
ドラゴンの真正面に飛び込んだ名人フェルギナスは、拳の連打を突き刺さっていた杭に叩き込む。
その衝撃でその杭はドラゴンの喉を貫通し致命の一撃判定となり、ドラゴンの体力が一気に0となった。
『討伐完了! やはり決めたのは最強のフェルギナス名人!
討伐成功率5%以下と言われるSランクエネミーを一組で、しかも一人も欠けることもなく討伐。これぞプロの闘い。まさに『さすが』の一言に尽きます』
アナウンスの声に、会場は大歓声に包まれる。
『ちなみに本討伐クエストのドロップアイテムについては、今回は一律判定ではなく、会場のお客様に対してランダム判定にて配布されますので、後ほどブレバト内にてアイテムストレージをご確認いただければと思います』
さらに続いたアナウンスにどよめきが起きる。
なるほど、だからこのエキシビションクエストが始まる前に「ブレバトを起動しておくと特典があります」とアナウンスがあったのか。
周りのみんなは直ぐにバイザーを展開してアイテムボックスを確認している。
私も確認してみたけど、残念ながらアイテムは増えてなかった。
会場の中ではチラホラ「当たった。やったー!」などの声が上がっている。
「あー残念。ハズレだったわ」
「私も……」
どうやら朱音ちゃん達も外れたみたいだった。
そんな会場のみんながアイテムを確認している間に、舞台では立体映像が消え、インタビューの準備が進められていた。
『へいへいへーい。会場のみんな、アイテムの確認は終わったかな?
さて、ここからはしばらく俺っち達のMCの時間だ!
ちょ〜っと、時間をくれくれだぜぇー』
『ブレバトアンバサダーの「えるあーる。」です。よろしくお願いします』
舞台には二人の人影があった。
それはブレバト説明動画で見たことのあるお笑いコンビだった。
『今のエキシビションクエスト、マジぱねぇって感じだったよな兄貴』
『ああ、映像だけだったのにファイヤブレスとか本当に熱を感じたような錯覚に陥ったからな』
『それにしても、トッププロの闘いはとんでもねーって感じだったな』
『さてさて、みんなそんなトッププロに会いたいよな』
その振りに会場の熱気が上昇する。
『それじゃ、呼んじゃうぜーい。カモン!
まずは先程の討伐でとどめを刺した現在の日本の頂点。連撃の神様。『名人』位のタイトルホルダー『フェルギナス』こと鷹橋 玄十郎名人だ』
その言葉と共にプシューと煙が巻き上がり、初老の男性が舞台に現れる。
『続いては先程は杭打ち機にてド派手な一撃を繰り出した、どんな武器でも使いこなすウェポンマスター。『武仙』のタイトルホルダーで名人のライバル。『ケンヤ』こと宝殿 剣哉武仙です』
逆立てた髪が特徴的な青年が片手を上げながら登場する。
『さらに高難度の討伐クエストにはこの人の支援がなければ成功率が三割落ちると言われる支援職の天才。
先程も多重詠唱にて防御・妨害で活躍したまさに勝利の女神。最強魔導士の称号である『叡王』のタイトルホルダー。『セシル』こと氷室 聖知叡王』
ドレスを身に纏った落ち着いた女性が小さく頭を下げてから舞台に歩を進める。
こうして先程見事なバトルを繰り広げたトッププロ3名が舞台に登場し、インタビューが行われた。
◼️ Brave Battle Onlineについて◼️
討伐クエスト
高難易度のエネミー討伐クエスト。
最大3人にてパーティーを組み、最大4組(12名)で対象のエネミーを攻略する。
討伐成功すると低確率でアイテムがドロップする。
ドロップ判定はパーティー単位で行われ、一人でも生存していれば判定が入る。
ドロップした場合は、パーティー全員に追加される。
課金せずにアイテムが手に入るため人気のモードであるが、難易度は超難関。
トッププロが対峙したため少人数で討伐できたが、一般的には一組のパーティーで討伐するのは不可能に近い。
3倍近い体力と、クリティカルでなくても直撃をくらうと一撃死するような攻撃が多数ある。また、アバターと違いスキルの上限がないため、大量のスキルを所持しているエネミーもいる。
プロのタイトル『叡王』について
一対一対戦が主流のブレバトにおいて、日の目を見ることが少ない遠距離職、支援職業に注目したタイトルである。
他のタイトルは一対一で行うリーグ戦にてタイトルを取得するのに対して、叡王については団体バトルの貢献度と討伐クエストの成功率にてタイトルが与えられる。




