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42.オールスターゲーム①〜会場〜

◼️前回までのあらすじ◼️

真雪はeスポーツ舞台のメンバーに誘われて、ブレバトの祭典・オールスターゲームを観戦することになったのだった。

「お父さん、行ってくるね」


 駅まで送ってくれたお父さんに手を振って見送る。


 車の中ではお父さんは「真雪は可愛いなぁ」と連呼していた。なんだかとっても恥ずかしかった。


 今日、私は朱音ちゃん達と一緒に買ったお洋服だ。

 淡い水色のワンピースに薄手の白いカーディガンを合わせている。肩から掛けたウエストポーチにはお守り代わりにいつも着けている熊のぬいぐるみが揺れている。


「真雪ちゃん、おはよー」


 待ち合わせ場所に着くと、美月ちゃんが声を掛けてくる。

 今日の美月ちゃんはなんだか大人っぽい。


 ゆったりとしたボトムスに半袖のシャツを合わせている。アクセントとして胸元で赤い石のネックレスが揺れている。

 なんて言うか同性の私から見てもドキッとする美しさだ。それに――


 ネックレスの揺れる美月ちゃんの胸元と、自らの胸元を比べて、小さくため息をつく。


 上着を内側から押し上げている大人の主張をしている美月ちゃんの胸に対して、私の胸はなんて慎ましやかなのか……

 病気が治って、いっぱい食べて肉付きも良くなってきたけど、まだまだ私の身体はボリューム感が足りない。


「おはよー。二人とも早いね。あれっ、私、遅刻じゃないよね?」


 背後からの元気な声は、朱音ちゃんのものだ。


「おはよう。朱音ちゃん」


 朱音ちゃんに返す言葉が、美月ちゃんと重なる。


「5分前。ギリギリ、セーフかな」


「うあー、美月先生は手厳しい」


 左手に着けた桃色で可愛い腕時計に視線を落として美月ちゃんが言い、笑顔で答える朱音ちゃん。


 今日はみんな私服だ。


 朱音ちゃんは前に一緒に買い物行った時もそうだけど、動きやすそうなスポーティーなお洋服だ。

 半袖のシャツにホットパンツ、ニーソックスにスニーカーという出立ちだ。バッグもボディバッグのため、そのまま走り出せそうな格好である。


 私達はそのままコンビニで飲み物を購入して電車に乗る。

 会場となる大型アミューズメント施設は隣の県なのだけれども、私達の住んでいる町が県の奥地であるためか、電車でも片道2時間ぐらいかかった。


 その間に朱音ちゃん達と今日のイベントのこととか、イベント会場近くで何を食べるかなど話をしていたらあっという間に着いてしまった。


 折角の遠出という事で早く会場近くに着いた私達は、アミューズメント施設の中に併設されているご飯屋さんでイベントコラボメニューを食べて、グッズショップで小物を買ったりした。


 そうこうしているうちに、先輩達との待ち合わせ時間になったので待ち合わせ場所の不思議な形のモニュメントの場所まで移動した。


「おう。一年達、お疲れ」


 集合場所に到着すると既に三年生の先輩二人が待っていた。部長さんと副部長さんだ。

 和風美女とインテリ系美男子のコンビは、なんだかお似合いのカップルの様だ。

 部長さんは黒を基調とした上着にゴシックスカートを合わせた服装で、副部長さんはスラックスに夏用のジャケットだ。なんだか二人とも凄く大人っぽい。


「お疲れ様です。あとは風祭先輩ですかね?」


「ああ、楓なら電話が来たみたいで、ちょっと外している。すぐ戻ってくる筈だ」


「って事は私達が最後だったんですね。待たせてすみません」


 朱音ちゃん達が状況を確認して、自分たちが最後だった事を謝り頭を下げた。


「いや、構わないよ。早く来てこの辺りを回っていたんだろ? 私達もさっき着いたところだしね」


「あれ、でも何で私達が早く来ているって知ってたんですか?」


「ああ…… それはアタシが部長に伝えたからだ」


 朱音ちゃんの疑問に答えたのは背後からの声。風祭 楓 先輩だ。


「あっ、風祭先輩。お疲れ様っす」


 振り返って朱音ちゃん達が挨拶する。


「でも、ならなんで風祭先輩が――」


「アタシはSnowから話を聞いていたからな」


 楓先輩が私の方に視線を向ける。


「どうだ、楽しめたか?」


「うん。凄く楽しかった。って、あ、すみません。いつもの癖で」


 楓先輩の問いかけに答えた後、言葉遣いがいつも通りのタメ語になってしまったのに気付いて慌てて訂正する。


「別に構わねぇよ。アタシもいつも通りSnowって呼んでるしな」


 ギョッとしている朱音ちゃん達を他所に楓先輩が口の端を吊り上げて応える。目つきが厳しい印象と、このぎこちない笑みのせいで怖い人だと誤解されがちだが、とても優しい先輩なんだ。


「ま、ま、ま、ま、真雪。あんたちょっと」


「風祭先輩、すみません。私達がちゃんと言い聞かせておきますので」


 朱音ちゃんと、美月ちゃんが慌ててそう取り繕うが、私も楓先輩もなにを慌てているか分からず疑問符を浮かべる。


「そうか、二人は風祭と柊木が既知の仲だってこと知らないのか。風祭が気にしないって言うなら、その通りなので気にしなくていいぞ」


 椛谷(もみじや)先輩が眼鏡をくいっと上げながら告げる。


「こいつはアタシの姉弟子に当たるからな。ブレバトでは指導を受ける都合上、タメ語を許してるんだ。まあ、この子だけは『特別』ってことだ」


 近づいてきて私の頭をワシワシと撫でながら楓先輩が言う。


 朱音ちゃん達はその視線にビクッとなりながら「はい!」と答える。

 そんなに怖がらなくても大丈夫なのにな、と思いながら私は苦笑する。


「それじゃ、会場に向かうか」


 刹那先輩(―部長―)達に促されて、私達は会場に向かう。

 その途中、小声で朱音ちゃん達に、私と楓先輩の関係を聞かれた。私は素直にブレバトのグローバルエリアで偶然会った相手が先輩だったことを伝えると、「えー」と目を丸くして驚いていた。私もすごい偶然もあるんだな、と思っていたのだが、その反応を見て少し笑みが溢れた。


 楓先輩はTシャツにダメージジーンズのパンツを合わせたラフな格好だが、その腰に着けたウエストポーチには熊の人形が揺れていた。

 私の持っている人形と同じ『ロックベア』と呼ばれる格闘家をモチーフにしたキャラクターだ。といっても全く同じではなく、衣装とポーズは違っている。私の持っている人形はとてもレアなものらしかった。

 楓先輩はモチーフになった格闘家である師匠の大ファンらしく、一度その話を聞いたら凄く詳しく教えてくれた。というか、その話だけで1日終わってしまったことがあった。楓先輩はこう見えて、一つのことにのめり込む一途な一面も持っているのだ。


 会場ホールに近づくと人の数が一気に増える。もはや人混みといってもいいレベルだ。


「す、すごい人だね」


 こんなに人が集まっているのを見たことがなかったので、ついつい感想が口から溢れる。


「そうか、真雪ちゃんはこういう人の集まるイベント、初めてだもんね」


「買い物行った時のターミナル駅でもビックリしてたよね」


 美月ちゃんと朱音ちゃんが微笑みながら言葉を返してくれる。


「おっ、すごいな。ほぼ真正面に舞台が見えるすごくいい席じゃん」


 電子チケットを携帯端末に表示させて席を確認していた部長が、自分達の席を見つけて驚きの声を上げた。


 その言葉通り、とても良い席でこれならプロ選手達の試合を見ることが出来る。


「生の試合、楽しみだね!」


 朱音ちゃんが嬉しそうに笑う。私は「うん。そうだね」と応えながら自分の席に座るのだった。


 


誤字脱字報告、とても助かっています。


真雪達の私服を考えるのと、プロ選手のキャラ考案に時間がかかってしまい投稿が遅れてしまいました。


オールスターゲームについての構想が出来上がったので、ここから少しずつ投稿ペースが上げていければと思ってます。

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