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40.楓に届いたメール②

◼️前回までのあらすじ◼️

部活が終わって帰る途中に、楓に一通のメールが届いた。

それは高校No.1と言われる女王・姫野宮冴華からのメールであった。

 とりあえずコンビニに立ち寄り、備え付けのベンチに座ってメールを確認する。


「ったく、うっかり既読をつけちまったからな。ちゃんと読まねぇワケにはいかねーな」


 はぁ、と一つ溜息をついて、端末のバイザーを展開してメール本文を表示する。


 冴華からのメールは予想に反して長文であった。数行レベルのメール内容なら歩きながら確認出来たのだが、この量は流石に歩きながらだと無理だ。


 コンビニで買ったドリンクで喉を潤してから、メールに目を通す。

 指を動かし画面をスクロールしながら内容を確認する。


 まずはアタシへの不満が綴られていた。


 なんで相談もなしに転校したのか。

 なんで連絡をくれないのか。


 そんな内容だ。冴華は一つ上であるのだが、幼少時から同じ流派の剣術を学んでいたので幼馴染みたいなものだ。

 子供の頃は「お姉ちゃん」と呼んで親しくしていた。


 冴華は今でも変わらずの関係でいると思っていて、こうやって親しい口調で連絡をくれる。


「変わってしまったのはアタシの方か……」


 スクロールする指を止めて、ポツリと零す。


 努力すればするだけ強くなる冴華。どんなに努力しても壁を破れないアタシ。どんどん開いていく実力差。冴華が気にしなくても、評価する大人が、見ている他人の目がアタシ達を比較して口々に評価を口にする。


 冴華は天才だと称賛し――


 楓は凡才だと憐れむ――


 特に家系を重んじるアタシの両親や親族からの当たりが強くなった。そしていつしかアタシは剣を振る事が嫌になり、冴華と一緒にいる事が苦痛となった。


 アタシは冴華と距離を置く様になったのだが、冴華は気にすることもなく「同じ高校で日本一になろう」とほぼ一方的に約束され、去年にその夢を掴んだ。しかし、去年はアタシは高校一年でレギュラーを掴めていなかった。


「来年は二人でもう一度、日本一を取ろう」


 冴華は瞳を輝かしてそう言った。


 だから何も相談せずに転校したアタシを怒っているのだと思ったのだけれども、メールには『楓のお母さんが大変だったの、気づけなくてごめんね』と謝罪の言葉が綴られていた。


「謝るのは、こっちだよ……」


 その文章を目にして、思わず言葉が漏れる。


 その後はプロの世界の愚痴が綴られていた。


 去年、高校日本一となって高校生でありながらブレバトのプロチームと契約が交わされたのだ。


 いまや冴華はプロゲーマーだ。しかも、最年少で6つある国内プロタイトルの一つ『闘聖』のタイトルを獲得している、今や雲の上の存在だ。


 プロになる連中に普通な奴なんて居るはずもなく、ネジが一、二本ぶっ飛んでいる曲者、怪物だらけだと綴られている。

 高校生活を送りながら、そんな怪物達と闘う日々は多忙を極め、さらに冴華がモデルで製作されたアニメ『紫電の刃』の人気が止まるところを知らず、イベントに呼ばれてはコスプレ紛いの格好をさせられているみたいである。


「冴華も大変なんだな……」


 メールを読み進めていくと、最後に『楓とまた会いたい』と書かれていた。


「そうね。別れの挨拶すら出来ずに別れたからな」


 さらにこう記されていた。


――――――――――――――――――――

 今月末に千葉のある大型VRゲームミュージアム施設で開催されるイベントに私も参加するので、もし良かったら見に来て欲しい。そっちの学校でもeスポーツ部に入っていると思うので、新しい仲間も誘って見に来てね。

 そして、もし時間が合うなら久々に会いたい。

――――――――――――――――――――


 そして、6人分のチケットが添付されていた。


「これって、入手困難なチケットじゃないか」


 その内容を見て驚きの声が漏れる。


『Brave Battle Online オールスターゲームフェスティバル』


 添付されていたチケットにはそうイベント名が記載されていた。


 それはプロの中でも最高峰と言われる6つのタイトルホルダーと人気投票で選ばれたトッププロが集結し、行われるドリームマッチのイベントだ。

 といってもオールスターの対戦結果は年間成績には含まれないので、どちらかと言えばエンターテイメント的な意味合いが強くファンサービスなども多く行われる大人気イベントである。


「しかも6人分ってことは、冴華はアタシがこっちの学校でレギュラーを取れてるって疑ってないな」


 はぁと溜息をつく。6人というのはブレバト全高大会のレギュラー人数だ。補欠4名をプラスした10名が高校代表として登録され、日本一を決める。


「その期待がどれだけプレッシャーになってるか、冴華は分かってねぇんだよな。てか、まあ、それでも6人分ものチケットを用意してくれただけで、ありがたいんだけどな」


 アタシはバイザーを仕舞い、飲み終えたドリンクパックをゴミ箱に投げ入れると、ゆっくりと立ち上がる。


「そういえばSnowの同じクラスの榎崎は、やたらと冴華に興味を持ってたな。

 もしかしたら榎崎を通じてSnowを誘えば、Snowが入部するキッカケになるかもしれないな。

 明日、部長に相談でもしてみるか」


 そんなことを思考しながら、歩き出す。


 気づけばもう日も落ちてしまった。


「やれやれ、取り敢えず帰ったら冴華に礼の返信しなくちゃな……」


 適当に数行で返信してもいいのだが、そうすると拗ねた長文メールがすぐさま飛んでくるのが目に見える。


「冴華もこの真面目で重い性格をなんとかすれば扱いやすいんだけどな」


 軽く愚痴りながら、暗くなったのでアタシは家路を急ぐのであった。

 

ブレバトについてはプロ制度があります。

一般大会で個人優勝、もしくは大きな大会でMVPを受賞した選手に資格が与えられます。

ゲーム制作に携わった企業(※)と契約することで、正式にプロと認められます。


※:国家計画で作成されたため複数のゲーム会社が携わっている。プロ契約を行なっているのはその中で4社となっている。


国内で認められているプロのタイトルは以下の7つ。複数取得も可能。最高位とされる世界共通タイトルの『覇王』以外は国内タイトル(海外では海外での国内タイトルがある)

 ・覇王(4年に一度行われる世界大会のMVPに与えられる)

 ・名人

 ・武仙

 ・王座

 ・叡王

 ・闘将

 ・闘聖 … 現在『SaeKa』(姫野宮冴華)が保持


オールスターゲームは上記の『覇王』を抜いた6つのタイトルホルダーに2名の国内人気選手がトーナメントで激突するドリームマッチイベント。

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