表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/207

36.風祭 楓

◼️前回までのあらすじ◼️

ブレバトのゲーム内通貨が増えていたので買い物をしたよ。

その後、クマ子さんと会ったんだけど、クマ子さんから「話がある」と話題を切り出された。


★改訂のお知らせ★

クマ子=楓の口調が統一できていなかったので、以下の修正をしました。

一人称:私、アタシと複数使っていたのを、『アタシ』に統一しました。

二人称:君、あなた、お前と複数使っていたのを、『あんた』に統一しました。

また、たまに丁寧語になっていた箇所がらあったので、ぶっきらぼうな言い回しに変更しました。

印象が変わるかもしれませんが、楓は目つきが悪くて、口調もぶっきらぼう。怖いって勘違いされがちな先輩って思っていただければと思います。

「今日はアタシが今まで特訓してきた成果を見てもらおうと思っている」


 クマ子さんが切り出したのはその言葉からだった。


「もう正体はバレているんだし、この格好をし続けている意味はないな」


 メニューを弄ると、クマ子さんの見た目が一瞬で変化する。部室で会った『カエデ』の姿になるのかと思ったら、違っていた。


 上は白で下は紺の袴姿で、胴と肩に武者鎧、腕には鉄甲を装備し、腰に日本刀を佩いている。見た目はカエデと一緒だが、格好と職業が『侍』でありアバター名も『フウ』であった。


「えっ? あれっ」


 私が戸惑っていると「ははは」と笑う。


「ああ、この姿で混乱したか。このアバターはアタシの()()()()()()()()だ。


 と言っても、去年まで使用していたものなのでほぼ本アバターと変わりがないがな」


 説明しつつも「ふっ」と更に笑う。ツリ目がちで怖い印象のある先輩だが、こうして見ると気さくな部分もあるのだなと思う。


「今日の本題で見てもらいたいのはこっちのアバターでないので、この姿は一旦置いておこう。


 アバターを切り替えるので、少し待っていてくれ」


 そう言い残すと、フウの姿が消える。そして、しばらくすると『カエデ』がクマ子さんが立っていた場所に現れる。


「待たせたな。今日、部活でこのアバターは見ているよな?」


 問いかけてくる言葉に、私は「はい」と答えた。


「あまり長く話しても仕方ないので、単刀直入に言う。このアバターとバトルしてくれ」


「えっ」


 あまりに急な事に、私は目をぱちくりする。


「ははは。悪りぃ、悪りぃ。説明を端折りすぎたな。やっぱ、ちゃんと説明するわ」


 カエデは私の反応に苦笑すると、なんで急にバトルをしようと言い出したかについて説明をしてくれた。


 カエデは京都を発祥とする『紫電一刀流』という流派を継ぐ家系に生まれたらしい。


 なんだか聞いたことのある流派だなと思ったら、ブレバトの最強プレイヤーである女王(クイーン)『SaeKa』が使用している流派だということだ。


 それを聞いて私は驚いて「ふへえっ」と変な声を出してしまった。


 詳しい話だとSaeKaの方が本筋の家系で、カエデ先輩の方が分家だということだ。


 二人は生まれた頃から剣術を教えられ、流派を継ぐべく切磋琢磨していたみたい。けれどもSaeKaはとんでもない天才で中学に上がるころには勝負にならないくらい実力差が出来てしまったとのこと。


 私に「勝てると思ったときに勝っておかないと、一生勝てなくなるかもしれない」と言ったのはそんな経験があったからなのかもしれない。


 才能の壁にぶつかって、悩んでいた時にたまたまテレビ放送で目にしたのが伝説の最強格闘家といわれる岩隈という名の日本人選手だったらしい。


 その強さに目を奪われ、その格闘家に夢中になった、と嬉しそうに語る。


 そんな折り、SaeKaが中学から始めたブレバトで全国制覇。高校に上がると世界大会にも出場し、無敗で世界一にまで上り詰め、流派を全国に知らしめることに成功したらしい。


 流派の家系である先輩の両親はそれを喜んだけど、同時に「本家に負けないように強くなれ」と言い出したらしい。


 両親に言われるがままにプレバトを始めてみたが、既に世界一にまでなっているSaeKaに敵う筈もなく、ずっと針の筵にいるような状態だったようだ。


 そんな中、とある切っ掛けでこの町に引っ越すことになり転校が決まったみたい。


 その切っ掛けについては詳しいことは伏せていたけど先輩のお母さんが、こっちの病院に転院したことでカエデ先輩は京都にある道場を離れ、病院のあるこの地に越してきたらしい。


「うちの流派がめちゃくちゃ人気になっちまったからな。親父は京都に残って、アタシ一人で入院している母さんの面倒を見るためこっちに越してきたんだ。


 で、新天地に来たからってことで、今まで培った剣を一旦置いて、憧れだった格闘家として頂点を目指そうとしたワケだ」


 カエデは拳を握って、ニヤリと笑ってみせる。


「そして話が戻るがバトルをお願いしたいのは、格闘家としてSnowに色々教わったものがどこまで身についているか試したい、ってワケだ。


 もしSnowが入部するようだったら学校で何度でもバトれるんだが、今日の様子を見るとその機会も無くなりそうだしな。


 だから、あー、なんて言うか……」


 カエデは恥ずかしそうに頭を掻くと、真っ直ぐに視線をこちらに向ける。


「今更なんだが、フレンドになって、時間が合う時はバトルしてアタシの格闘家としての成長を見守ってもらいたい、ってワケだ」


 そう告げる。


 難しい事を言われるかと思っていた私はそのお願いに笑みを溢す。

 端的に言えば、友達(フレンド)になりたい。これからも格闘技の指導お願いしたい。って事だった。


「なんだ。そんなお願いだったら、むしろこちらからお願いしたいくらいですよ」


 そう応えて、私はメニューを表示して近くのプレイヤーの一覧から『カエデ』を見つけて、迷いなくフレンド申請を送る。


「なんだよ。こっちから申請を出そうと思ってたのに」


 恥ずかしそうに舌打ちしつつ、カエデがフレンド承認をする。



 こうしてその日は、カエデ先輩と何度かバトルを行って格闘の指導をした。


 刀を使わない格闘家同士の戦いならば、まだ私の方が強いので色々と闘いのコツを教えることができる。


「くそっ、『崩穿華』と『流水の捌き』はそこそこ扱えるようになったけど、『水穿』の方がまだまだだ。


 むしろ闘えば闘うほどSnowの凄さが分かるな。あんな崩れた体勢から良く『水穿』が撃てるな……」


 バトル後の感想戦でカエデ先輩が感心している。


「へへへ。『水穿』については師匠にも褒められたから、結構自信があるんだ。

『水穿』は平たく言うとただの連打だから、どんな時でも、どんな体勢でも撃てる汎用的な技なんだ。むしろ全ての拳撃(パンチ)を『水穿』で放つようなイメージでトレーニングすると、いざという時、咄嗟に撃てるようになるよ――って、あっ、なります、だね」


 指導する時、気を抜くとたまにタメ口になってしまう。


「敬語とかはあんまり気にしなくていいぞ。格闘技術についてはSnowの方が実力は上だし、むしろ()弟子になる可能性が高いからな。


 アタシの直近の目標は、病院に行った時にSnowの言うBearというヒトに認められてSnowの()弟子になる事だ」


 嬉しそうに拳を掌に打ち付ける。


「うん。それなら全力で応援するね」


「頼りにしてるぜ、先輩」


「ってもう、カエデ先輩ったら」


「はっはっははは」


 こうして私はクマ子さんの正体であったカエデ先輩と師匠についての対策などを話し合い、その日のブレバトのダイブを終えるのだった。

◼️補足説明◼️


ブレバトについて通常は1プレイヤーで1アバターですが、課金すると最大3アバターまで利用可能になります。


楓は格闘家に憧れていたので、こっちに越してきた時に課金して拳闘士のアバターを作りました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ