表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/207

33.部活見学④〜個人戦・模擬バトル〜

◼️前回までのあらすじ◼️

部活見学をしていたのだけど、話の成り行きで部長さんと模擬バトルを行う事になってしまった。

 ふぅ、と息を吐く。


 試合前の緊張感。周りで見ていた部員達は光学迷彩が施され、この場には対戦相手のセツナと二人きりの世界となる。


「バトルを承認してくれてありがとう。礼として最初に攻撃させてあげよう」


 セツナが鞘から諸刃のショートソードを抜き放って構える。

 見たところ盾装備なしの剣士の様だ。しかし、装備武器がどう見ても片手剣である。盾を装備しない理由がない。


 このチグハグな装備、何が理由がありそうね。


 相手がどういう戦法を取るのか予測しながら拳を構える。


 試合開始の合図。


 最初の攻撃を譲ってくれるというならば言葉に甘える。

 (ブラフ)かもしれないが、初撃のアドバンテージは大きいのだ。


 自動発動に設定しているスキル【超過駆動(オーバードライブ)】の影響で私の身体を青いオーラが包む。


 私は地面を蹴ると、念のため左右にフェイントを入れながら接近し、奥義を放つ。もちろん、相手の剣の動きには注意を払いつつである。


「真陰熊流格闘術・奥義『崩穿華――」


 右拳を繰り出した瞬間、セツナの剣が動いた。カウンターを警戒して左腕は防御態勢を取っていたのだが、その剣の軌跡は想定外のものであった。


 ギイン……


 その切っ先は攻撃を仕掛けた右腕に衝突し、私の右腕を上へと弾き飛ばす。


「なっ」


「騙すようなことしてすまんな。先制攻撃は許すといったが、()()()()()()()()()()()()()


 その言葉にて気づかされる。これは職業(ジョブ):剣士の固有スキル【会心防御(パリイ)】なのだと。防御無視の攻撃を放ったため、頭の中にはカウンターもしくは回避しか無かった。そのため防御されるとは思ってはいなかった。その隙を突かれ、セツナの空いていた方の拳が私の頬を捉える。


 First Hit!!!


 体力が1割削られるが、初撃ボーナスと超過駆動(オーバードライブ)のデメリットでダメージ判定量が増加しただけだ。強力な一撃ではない。むしろ――


「スキル【烈蹴脚】!!」


 続いて繰り出されるスキルを利用した強力な蹴り。こちらが本命の攻撃であろう。


 だが、その攻撃については左腕の鉄甲で防御しノーダメージ。


 その衝撃に弾き飛ばされて、距離が出来る。


「防御するか、流石だな……


 会心防御(パリイ)からのスキルを使用した吹き飛ばし攻撃、そこから一気に乱撃(ラッシュ)を叩き込んで試合を決めるというのが、初見殺しの鉄板だったんだが」


 嬉しそうに語るセツナ。


 私は油断なく拳を構える。防御されたが、先ほどの一撃は完璧なタイミングで繰り出した技だった。相手が行った会心防御は偶然での発動ではない。狙って発動させたんだ。

 迂闊に攻撃するのは危険だ。


 私が警戒を強めていると、セツナは空いていた左手を前に伸ばす。


「?」


 セツナはニヤリと笑う。


「今の攻防だけで、既にSnowの実力を疑うものは居ないだろう。


 だが、折角の試合だ。ここで終わらせるのは惜しい。


 このまま続けさせてもらうぞ。その代わり、Snowの実力を認めた証として、私も本気で行かせてもらう。スキル発動【武具錬成】!」


 そう宣言するとスキルを発動し、左手に一振りの刀を出現させる。


 それは青く輝く刀身を持つ一振りの美しい日本刀。


「私は【武具錬成】として二本(ふたつ)、刀を登録している。一本は代償なしで召喚できるノーマルの刀だ。


 そしてもう一本、この『天羽々斬(あめのはばきり)』は代償として体力を一割も消費する強力なレア武器だ。


 部員にも殆ど見せたことが無い私の奥の手だ。部員の不敬を詫びも込めて、披露させてもらった。


 では、行くぞ」


 セツナはその刀を手に取ると、一気に距離を詰めてくる。


「秘技・双剣乱舞!!」


 二刀流の連撃が私を襲う。


 ギン! ギン! ギギギン! ギン! ギン!


 その攻撃を私は両の鉄甲で防御する。強力な武器であっても拳闘士の固有スキル【武具不壊】は破れない。剣速はそこまで早くない(クマ子さんの抜刀術を織り交ぜた連撃の方が早かった)が、二刀流ということで攻撃量が倍になっている。そのため、両腕でギリギリ防御可能な物量の連撃である。


「ふっ……」


 繰り出されてきた必殺の刺突攻撃を『流水の捌き』で捌く。と思ったら、剣戟に紛れて下段蹴りが繰り出されてきた。それを冷静に脛で防御し、続いて襲いかかる剣の連撃も『流水の捌き』を織り交ぜながら防御する。


「はっ、はは! 私の本気の乱撃(ラッシュ)を全て防ぎきるかっ! ならばっ!」


 息を切らせながらもセツナが嬉しそうな笑みを浮かべている。瞬間、発動したであろうスキル名が視界に入る。


蜃気楼(ミラージュ)


 ゾクリ、と悪寒が走る。クマ子さんに忠告されたスキルだ。


 ドン!


 私はとっさに剛の歩法『列脚』を使用して後ろに飛ぶ。「気」を利用した強力な蹴足で爆発したかのような音を残して、一気に距離を広げる。


 瞬間、セツナの姿が幻のように消えたと思うと、私のいた場所にいくつもの水の刃が降り注いだ。


「まさか、【蜃気楼】からの天羽々斬(あめのはばきり)の『刀剣解放』まで避けられるなんて」


 始めて見せるセツナの焦った声。これは好機(チャンス)と私は攻勢に入るべく、一気に距離を詰める。


「はああああああっ!!!」


 拳の連打を叩き込む。セツナは技後の硬直から解けると、必死に二本の剣にて防御を試みる。防御に余裕がなかった為か、先程と違い会心防御は発動しない。その防御の隙を縫って、連打で打ち込んだ攻撃の何発かが相手の体力を削る。


「まだまだっ!」


 さらに追撃しようとしたところで、拳がセツナの身体をすり抜ける。


【蜃気楼】


 発動したスキル名が表示される。


 カウンターに備えて、私は距離を取るが、少し離れた位置にセツナが出現する。


「ふぅ…… まさかここまでの実力とは、流石に私も余裕がなくなってきた。一気に行かせてもらうぞ」


 いつの間にか左右の剣を入れ替え、右手に持った青い宝剣を振るう。


【水刃】


 発動したスキルが表示される。振るった剣の軌跡から水の刃が放たれる。


【水刃】【水刃】【水刃】【水刃】【水刃】【水刃】【水刃】……


 さらに連続で剣を振るい、スキルが連続発動して幾重にも重なった水の刃が襲い掛かる。と、同時にセツナが地面を蹴る。


 何重もの水の刃とともに特攻してくる。これはヤバいかも。


 斬撃を飛ばす【斬波衝】と違い、水属性の【水刃】は実体があり、かつ属性の特有である「遠隔操作」の恩恵で「追尾」の効果が付与しているのだ。

 直線状に飛んでくる衝撃波と違い、広範囲に打ち出された水の刃は、弧を描いて僅かな時間差を置いて様々な角度から私に殺到するのだ。


 大丈夫。これくらいならば対応可能だ。


 私は頬を伝う汗の感覚を感じながら、集中し両腕を振るう。


「真陰熊流・防御術『流水の捌き』っ」


 パシャッ! パシャッ! パシャッ! パシャッ!


 水の刃を鉄甲にて逸らしながら、相手の動きを警戒する。しかし、いくつかの水の刃は鉄甲に触れた瞬間、霧散し視界を奪う。


 しまった。斬撃に特化させた攻撃の中に、攪乱用のものも混ぜていたのか。


「スキル発動【蜃気楼】!」


 さらにセツナはスキルを発動させ、その姿を暗ます。


(しまった。見失った)


 慌てて距離を取ろうとバックステップするが、水の刃が追尾してくる。


(厄介だけどここは無理にでも距離を開けなくちゃダメだ)


 カウンターを放つために溜めていた「気」を脚力に用いて一気に加速して距離を取る。剛の歩法『列脚』だ。


 これで水の刃から距離が出来て余裕が出来た――


 ドッ!


 衝撃と痛みが腹部に走る。


「なっ、なにがっ」


 痛みのした腹部に視線を落とすと、青い刃の日本刀が突き刺さっていた。


「やっとダメージが通った。畳みかける。スキル発動【武具錬成】」


 水の刃とともに近づいてくるセツナ。空になっていた右手に通常の刀が召喚され握られる。


(まさか、奥の手の宝剣を投擲したってこと。しかもスキル発動の表示がなかったってことは、スキルの恩恵なしでの投擲。やばい、二刀流のラッシュが来る)


 脇腹に突き刺さった刀を抜いて放り投げると、必死に防御態勢に入る。


「秘技・双剣乱舞!!」


 想定通りの二刀流による乱撃(ラッシュ)。しかも厄介なことに【水刃】が届くタイミングと合わせての攻撃だ。


「くっ!」


 私は迫り来ていた水の刃を思い切り横薙ぎの裏拳で破壊すると霧状に飛沫が爆散する。それに合わせて真横に移動する様に回避する。


 ザジュッ! ヒュッ! ヒュッ!


「なっ、消え――」


 セツナの驚きの声。


 一撃は貰ってしまったが、次の攻撃を連続で空振らせることに成功した。


 ここまで温存していた静の歩法『幻歩』を利用しての動き。


 激しく動く『烈脚』に慣れた目では消えた様に感じたはずだ。霧状に破砕した水の刃も視線誘導(ミスディレクション)の効果の一環となる様にしたのだ。


 さらに地面を蹴って距離を詰めると、私を見失っているセツナに渾身の奥義を叩き込む。


「奥義『水穿』!!」


 ドブッ!!


「かはっ……」


 鈍い音とともに拳の連打が脇腹に突き刺さる。


 クリーンヒット!!


 相手の意識外からの攻撃であった為か、体力ゲージが一気に削られる。

 セツナの体力ゲージは半分近く削れて、五割以下(きいろ)を通り過ぎて二割以下(あか)に変化した。


 もう一丁、とどめの一撃!


 逆の腕からも『水穿』を繰り出そうとした瞬間――


 ザシュッ!!


 首筋に鋭い痛みが走る。


 ――!!


 致命の一撃(クリティカルヒット)!!


 画面にその文字が踊り、一瞬にして私の体力が0になる。


「何が、起きたの?」


 痛みが走った首元を確かめると、しっとりと濡れていた。

 ヴァーチャルの世界では傷もつかないし血も出ない。それでも濡れているということは水属性の攻撃だ。


 私は理解する。


 最後の一撃は【水刃】による一撃だったのだ。

 相手が私を見失っていても、追尾の効果はシステムによって継続されていたのだ。


 勝ちが見えた事で、警戒が緩んでしまったみたいだ。


 目の前に表示された『You Lose…』の文字を見て、私は負けたのだと再度認識したのであった。

 

 

 こうして、急遽始まった私と部長との模擬バトルは、私の敗北で終了したのであった。

◼️捕捉説明◼️


天羽々斬(あめのはばきり)

 討伐クエストにてドロップする激レアアイテム。

 海獣・ワダツミをソロで討伐時に極稀にドロップする。

 効果:

 ・常時【属性纏衣・水】が付与されている。

 ・【刀剣解放】を使用する事で、対象範囲内に【水刃】の雨を降らすことが出来る(ただし、追尾の効果は無く、使用後は硬直が発生する)

 ・初期装備不可。【武具錬成】での召喚でのみ呼び出すことができる。ただし、召喚出来るのは1本のみ。



★作者の独り言★

すみません。推敲が間に合わなく7:00投稿が間に合いませんでした。

毎日投稿が間に合わなくなってきたので、隔日更新になるかもしれません…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ