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仮想空間でのイジメ問題について

◼️今回のあらすじ◼️

仮想空間でのいじめについて、とある事件がきっかけになり表沙汰となってしまった。

その騒動が収まるまでのお話です。


※:一度没にしたいじめ問題の解決編です(なので話数のナンバリング無しでの投稿になります)

※:重い内容かつ説明多めのお話なので、苦手な方は読み飛ばして下さい(本話は読み飛ばしても、次の話が繋がるようにしています)

 その日、衝撃のニュースが日本中を駆け巡った。


『ヴァーチャル世界でのいじめについて』


 そう銘打たれて、一斉に各テレビ局が報道したのだ。



 その事件は一人の女子生徒の自殺未遂で明らかになった事実である。


 その少女はクラスメイトからいじめを受けていた。


 毎日毎日、クラスメイトから暴行を加えられ、追い詰められ、最後には現実から逃げ出す為に睡眠薬を大量に飲んだのだった。


 たまたま発見が早く、処置が間に合ったため、その少女は数日後に目を覚ます事となるのだが、その時に見つかった日記が物議を醸し出したのだ。


 それは悲痛な内容が綴られていた。


 元々、引っ込み思案で周りに馴染めていなかったその少女は中学時代から慢性的にクラスメイトから忌避されたり、小さないじめを受けたりしていたのだが、それについては黙って耐えていた。


 しかし、ある日にいじめっ子のメンバーが思い付いた新しいいじめ手段によって状況が一変したのだ。


 フルダイブ型のゲーム内でのいじめ実行。


 ゲームに疎かった少女はクラスメイトに脅されてフルダイブ型のゲームをインストールさせられ、言われるがままに設定を委ね、最悪な設定変更をされてしまったのだ。


 それからの地獄の日々が克明に綴られていた。


 殆ど現実の感覚と変わらない世界で何度も何度も暴力行為を繰り返されたのだ。


 最初は傷もつかないし、親にも心配されないで済むことに安心し、耐えることができたのだが、段々行動がエスカレートしていき、耐えられなくなったのだった。


 現実では大怪我を負うような暴力行為も、ヴァーチャル世界で行われたなら痛覚のみ現実にフィードバックされ、外傷は残らない。

 現実世界に証拠が残らないため、いじめっ子たちもそれがどれだけ残虐な行為なのか理解できずに、ただのゲーム、ただ単に自らの愉悦のためだけに、行動をエスカレートさせていたのである。


 初めは【スキル】と呼ばれる必殺技の実験台にされる程度だったが、悪意を以て手や足の骨を折る部位破壊。拷問じみた急所攻撃の繰り返しなど、一線を超える暴行を繰り返した。


 結果、少女は追い詰められ、正常な判断ができなくなっていたのか『自らの命を絶つ』結果に繋がる最悪の選択をしてしまったのだ。未遂に終わり命が助かったことが不幸中の幸いなのである。


 そしてこの事件がマスコミにリークされ、少女の日記の内容とともに大々的に報じられた。


 フルダイブの技術は今では多岐に渡って利用されている。

 鋭い感性や感覚が必要なスポーツ(ゲームとして扱われているブレバトは別ジャンル)や、細かい感覚が大切な医療のリハビリなど、高いフィードバック率での使用用途はあるため設定の必要性がないわけではないのだ。


 いくつかのスポーツ競技については、フィールドをヴァーチャル世界に移したりしているのだ。

 行動制限(スポーツ用にカスタマイズされたフルダイブシステムは【スキル】という機能は実装されていない)により現実でのトレーニングの成果がヴァーチャル世界のステータスになるため、現実を疎かにすることがなくなり、かつ選手の基礎能力が数値化して見えることで解析能力も向上し、そのデータはゲーム業界に於いても、現実の数値により近い内容のソーシャルゲームを作るために有効利用された。

 さらに、試合時に怪我をするような場面に遭遇しても現実には大きく影響しないため、スポーツ選手の平均選手生命もフルダイブシステムの登場後に大きく伸びることとなったのである。


 そんなフルダイブ型のシステムの基礎を担っていたゲームにて大きなスキャンダルが生じた事により、ゲーム業界のみならず、各界に激震が走ったのだった。


 様々な評論家、コメンテーターが意見を交わす。


「これは現代特有のいじめ事例ですね。早々に対応しないと同じような事件が再度起きてしまう可能性が高いと思います」


「この事件は氷山の一角に過ぎないのかもしれません。一斉に全国に実態調査をすべきです」


「メーカー、運営会社はこの事情を、なぜこんな事件が起きるまで把握できていなかったのか?!」


「目に見えない、ヴァーチャルの世界はやはり危険だ。

 同じシステムを使っているスポーツなども、既に疫病の脅威も克服できているのだから、昔ながらの現実世界での競技に戻すべきだ」


「政府の肝煎りで作られ、世界でもトップシェアを誇る日本のフルダイブシステムはそう簡単に捨てられる訳がない。

 政府の介入が入って有耶無耶にされてしまうのがオチだろう」


 様々な意見が飛び交い、とある局が特集を組んで放送したことをキッカケに全ての局でも話題とする流れとなる。


 そして、ヴァーチャルシステムを管理している合同会社の対応は早かった。


 ニュースが流れるや否や、その日のうちに謝罪会見を行い、すぐさまシステムを緊急メンテナンスとしたのだ。

 それは奇しくも文乃(ふみの)真雪(まゆき)の設定を元に戻した日の翌日と重なる。あのタイミングで文乃が病院を見舞い、設定を解除していなければ、現在進められているゲームサーバ内のログから同じいじめをしているプレイヤーを炙り出す調査に引っかかっていたかもしれなかったのだ。


 菫麗(すみれ)もたまたまだが、捜査線上から名前が外れたのだが、二人にブレバトでのいじめの方法を教えた下田(しもだ)亜子(あこ)については、バッチリと捜査網に引っ掛かっていたのだ。


 むしろ、自殺未遂した少女こそ、亜子が殴り人形(サンドバッグ)と言って殴り(いじめ)続けた生徒だったのである。


 最初にニュースが流れた時は亜子はことの重大さに気づいておらず、他校の友達である菫麗と文乃に『うちの学校名がニュースに出てんだけど、まじすごくね?』とグループラインを送る程度であった。


 しかし、そこから事態が大きく動く。


 その少女の日記が公開されるや否や、ゲームはメンテナンス状態になり、大々的に報道され始める。

 そして亜子の学校にマスコミが押し掛け、学校は翌日から臨時休校。

 それでも亜子は『うちのクラスの子が自殺しようとしたっぽくて、明日はうち臨時休校。ラッキー』と楽観視していた。


 しかし、フルダイブシステムの信用失墜を避るため早期解決を図った警察の手は早かった。

 翌日の朝に容疑者として確認された生徒達の元に逮捕状を持った警察がやって来て出頭させられる。


「うちの子は関係ない! 証拠はあるのか!」と家にやってきた警察に対し亜子の父親が抗議するが、そこで見せられた映像にぐうの音も出なくなる。


 ゲーム利用規約に『宣伝やPRのため、ゲーム内の画像・映像情報は弊社の資産とし利用する場合があります』とあったのだ。警察の捜査に全面協力した運営会社は今回被害にあった少女のアバターがどのようなバトルをしていたのか、ログから抽出した画像データを警察に全て提供していた。


 そこには泣き叫ぶ被害者の目を抉り、鼻を潰し、腕の骨を砕く残虐行為を笑いながら行う複数のプレイヤーの姿が映っていた。


「この中の一人、このプレイヤーは貴女ですよね。下田亜子さん」


 和やかな口調で画像を再生した警官が訊く。


 亜子はその画像を見て、全身が震えて答えることができない。こんな画像が記録されていたなんて知らなかったからだ。


「まぁ、貴女の端末を調べれば真偽はハッキリしますからね。ですから、端末を持って署まで御同行願います。


 おっと、もし端末を壊そうとか思っているならば無駄ですよ。既に証拠は揃っていますので、証拠隠滅の罪が増えるだけですから」


 その警察官はゾッとするような笑みを浮かべる。


「親御さんもこれで分かったでしょう。


 それでもまだ我が子は何もしていないと言えますか?


 もし不服でしたらこのデータをマスコミに検証していただくことも出来ますよ」


 未だに不満気な表情を浮かべる亜子の親にトドメの一言を添える。


「おっと、私は脅しているわけではないのです。


 これだけ明確な証拠があるのですから、()()()()()()便()()事件解決をしたいと思っているのですよ」


 警官の視線が亜子の親に突き刺さる。


「さて、ご同行願います。


 亜子さんは未成年ですので、親御さんのどちらかもご一緒願いますね」


 そう言うと、画像を見せた警官は帽子を深々と被り、他の警官に任せる。


「これからの手続きをスムーズにする為に、ちょっと独り言を言いますね。


 国家の威信をかけて作り上げたシステムの信用を落とすような行為って本当に困るんですよ。


 今が平和な時代の日本で良かったですね。


 時代が時代だったら『国家転覆罪』で一族郎党全員皆殺しですよ。


 私としてはそれでも良いんですが、あのお方はお優しいので、厳正な今の法で裁けと仰せだ。


 なので下手に上告とかせずに素直に罪を認めて、多少高くなるかもしれませんが、ちゃんと和解金を払って下さいね。


 私に()()()()()()をさせないでくれる事を祈ります。


 では、私は先に戻りますね。後は任せましたよ」


 そう言葉を残して、その警察官はその場を後にした。



 こうして、大きな力の渦に巻き込まれたかのように事件は収束していくのであった。


 政治的な力が働く、と豪語していた評論家が「やはりこうなったか!」と声を荒げてアピールしたが、その話題は『いじめ問題、異例のスピード解決。決め手はゲーム内のログか』という題名で放送された後、パッタリと話題が途切れた。


 また、2日間のメンテナンス後のアップデートにて、幾つかの仕様変更が入り、不正利用の疑いのあるプレイヤーには警告メールが届き、不正利用が確実なプレイヤーについてはアカウント削除(垢バン)されたのであった。


 いじめをしていた生徒が悉く逮捕された事で、一部の掲示板では『国家組織が動いた』と都市伝説的な噂も流れ、ブレバトによる不正利用者は一斉に駆逐されたのであった。


 そして、何事もなかったかのようにゲームのサービスは継続されたのであった。

◼️Brave Battle Onlineの仕様変更内容◼️

・詳細設定のパスワードロック機能を廃止

 (パスワードロックが既にされているプレイヤーについては、データアップデート時に自動で解除された状態になります)

・痛覚フィードバックの設定変更不可

 (こちらもデータアップデート時にデフォルト設定にもどります。設定変更が必要の場合は、お手数ですが所定の公式ショップに端末をお持ち下さい)

・サポート、ヘルプデスク機能の実装強化

・スタッフによる不正監視強化

・メンテナンスのお詫びとして、ゲーム内通貨で10,000ルビィを付与。期間限定にて交換アイテムにレア装備を追加

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あぁ、結局有耶無耶のまま終わるのですね。これなら物語として不要な設定だった。二人も悪役ではなく良心的なキャラとして登場させる事も出来た。大会の練習で主人公が張り切りすぎた結果、入院する…
[気になる点] そもそも何故こんな簡単に思いつく抜け道があったのか謎
[良い点] 評論家さんは各種SNSで「重要なのそこじゃないんだよなぁ・・・(呆れ)」という扱いされていそう
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