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23.有坂 文乃④〜確認〜

◼️前回までのあらすじ◼️

真雪がスポーツ大会中に倒れて救急車で運ばれていった。


文乃は「こんな事件があったのだから、もうスポーツ大会には参加できない」と言葉を残して教室に戻るのであった。


しかし、真雪に敵愾心を燃やす菫麗は、準決勝に出て真雪より活躍してやる、と意気込んでいた。


※後に回そうと思っていた、準々決勝の振り返り話です。

 eスポーツ部入部の切欠となる試合になります。

「ブレバトチームもベスト4まで勝ち進んでるんだよね。

 スゴイ、スゴイね。バスケットボールも勝ち残ってるし、もしかしたらスポーツ大会の総合優勝もあり得るかも!」


 教室に戻ると、クラス内の熱気が最高潮になっていた。


 スポーツ大会の種目、サッカーと、eスポーツのもう一種のレースについては二回戦敗退となっていたが、残っているバスケットボールとブレバトがそれぞれベスト8とベスト4と勝ち進んでいるのだ。

 一年生クラスの中では取得ポイントは頭ひとつ抜けていて、もしどちらも優勝となれば学内トップも視野に入ってくるのだ。

 既に敗退してしまった競技の生徒は教室にて、黒板モニタに映し出された競技選手を皆で応援していた。


 私が教室に戻ると、勝ち残っているブレバトの選手として他のクラスメイトに賞賛されたのである。


「有坂さん、準々決勝は棄権したって言ったのに、めちゃくちゃ強い選手を残してたんじゃん。

 凄すぎて何をしたのか分からなかったけど、圧勝だったね。1回戦・2回戦とアバターが違ったけど、もしかしてあれって柊木さんのアバターなの?」


 質問が飛ぶ。


「うん…… あれは柊木さんのアバターだよ。


 棄権するって伝わってなくて、参加者が居なかったから私たちの代わりに参加してくれてみたい。

 けど、あの試合で柊木さん無理、しちゃって……


 さっき救急車が来たと思うんだけど、あれは柊木さんが倒れて柏葉先生が呼んだものなの」


 端的に状況を説明する。


 その言葉を聞いて、クラスメイトは言葉を失っている。


「だからさ。柊木さんが元気になって戻ってきたら、柊木さんに今の言葉かけてあげてよ」


 そう言葉を締めくくる。クラスメイトもその言葉を受けて「うん。わかったよ」と肯定してくれる。


「あ、そうだ。今話題に出たけど、柊木さんが出場した準々決勝ってどんな感じだったのかな。私、移動中で見れてないんだ」


 気になって聞いてみると、「ならクラス委員長に聞いてみなよ。後で確認できるようにって、クラスの試合を全部録画してるみたいだから」と言われた。


 私は「ありがと」と答えて、言われた通りクラス委員長に話をして、録画データを受け取った。


 スポーツ大会がある今日はチャイムは鳴らず、昼休みは各々取るようになっている。私は昼食がまだだったので、昼食とともにそのデータを再生して確認した。


----------------------------------------


『おおっと、来ました!


 1年E組の選手。


 二回戦までと選手が違うみたいですね。現れたのは補欠で登録された選手のアバターのようです』



 放送部のアナウンスが流れる。


 柊木さんのアバターであるSnowが試合会場に現れた。しかし、その姿はよく見ると、頼りないような佇まいで、覇気も感じられなかった。


『では、試合開始です』


 異変に気付かずに、試合は進行される。


 カウントダウンが始まり、開始の合図。


 スキルが自動発動するように設定しているのか、Snowのアバターがうっすらと水色のオーラに包まれ【超過駆動(オーバードライブ)】の文字が躍る。


 先に動いたのは相手のアバター。

 中世の貴族のような見た目――鮮やかな色彩の刺繍が入った服、胸元にジャボが揺れる、速度重視の剣士タイプのアバターてある。


 ヒュン――


 相手は『風』属性なのであろう、小さなつむじ風を残して高速で接近すると、細身剣(レイピア)を突き出した。


 試合をすぐに終わらそうと致命の一撃(クリティカルヒット)を狙った切っ先がSnowの心臓部に伸びる。


「やめてっ!」


 つい言葉が零れる。Snowは痛覚最大に設定されているのだ、現実で心臓を突かれたような痛みが再現されると思うと思わず声が出てしまったのだ。


 その言葉にクラスメイトが振り返るが、私が端末のバイザーを通じて動画再生を見ていると思うと、ビックリさせないでよという表情を浮かべた。私も、ごめんとジェスチャーで応える。


「あああああぁぁぁっ!!」


 Snowの絶叫が響く。


 ギリギリで急所を避け、左肩の当たりに剣戟を喰らったSnowは、初撃ボーナスと相成って一気に6割の体力が削られる。


 ゾワリ……


 画面越しでも、Snowの雰囲気が変わったのが分かった。


 今の一撃、相当な激痛であろうその痛みで、Snowの瞳に光が宿った。それは理性の光ではなく、獰猛な野生の光――


「『水穿』っ!!」


 肩を貫通した細身剣。それを引き抜けば追加ダメージで勝ち確定であるのだが、相手アバターのレッドリーフは、Snowの悲鳴に一瞬怯んだのだ。その一瞬をついて、Snowの拳が相手の剣を持つ右腕の肘を下から打ち上げる様に打ち砕いたのだ。


「ぐあぁっ!!」


 レッドリーフは苦悶の声を上げて後退する。が、そこに追撃の拳が襲う。


「『崩穿華』!」


 しっかりと溜めを作って撃ち出された拳が相手の体力を一気に削る。


 大技の二連打がモロに入り、この時点でダメージ差は逆転する。


 強力な一撃で体勢を崩したレッドリーフに、さらに追い討ちとばかりに拳の嵐が襲う。


 盾代わりに装備していた鉄甲にて防御を試みるが、片腕が部位破壊されており、左手一本では速すぎるSnowの手数に対処しきれずにどんどん体力が削られていく。


「『旋風(せんぷう)烈蹴脚(れっしゅうきゃく)』!」


 とどめとばかりに、Snowは自身が竜巻になったかのようなキレのある身のこなしにて、強力な回し蹴りを放つ。それを顔面に受けて吹き飛んだレッドリーフの体力が0となり勝敗が決する。


『なんと、レッドリーフの強烈な初撃から一転、目にも止まらぬラッシュにて一気に畳みかけた1年E組のSnowが1勝目を手に入れた。これは波乱の展開。2戦目、このままの勢いでSnowが勝利をもぎ取るのか、はたまた3年の意地を見せつけるのか、これは目が離せません』


 一戦目が終わり、熱を帯びた放送部の実況。


 一戦目を終えた二人は初期位置に転送され、体力が最大まで回復する。

 Snowの左肩に刺さっていた細身剣もレッドリーフの腰の鞘に戻っている。


「素晴らしい攻撃だった。しかし、次は油断せんぞ」


 レッドリーフが二戦目までのインターバル時間に告げる。


「……」


 Snowは無言。


 レッドリーフは先ほど部位破壊された右腕の調子を測るように手を開閉させると、細身剣(レイピア)を抜刀して構える。


『二戦目、開始だ!』


 アナウンスの声とともに、二戦目が開始される。


「スキル【属性纏衣】」


 細身剣(レイピア)に風の属性が付与され、レッドリーフが纏っているマントが巻き上がる。


「接近戦は不利のようなのでな、距離を取って戦わせてもらう」


 そう宣言すると、レッドリーフは目にも止まらぬ速さで剣を振るう。


 発動したスキル【斬波衝】の文字が幾重にも踊り、『風』属性の恩恵でで射程距離の伸びた斬撃がまるで速射砲のように撃ち出される。


 中・遠距離攻撃のない拳闘士、かつ戦闘舞台(バトルフィールド)となっている円形闘技場ステージでは障害物もないため対処不能である、と思われたのだが


 ドン!


 衝撃音とともに、Snowはその斬撃の嵐の中に飛び込む。


「なっ」


 予想外の行動に絶句する。


 そんなことすればなす術もなく斬撃の嵐を受けて一瞬で体力が0になるはずである、のだが――


「なにっ」


 次々と襲い掛かる斬撃をSnowはスキルの恩恵で破壊不能になっている鉄甲にて逸らしているのだ。

 高速移動術の『烈脚』と『流水の捌き』の合わせ技(コンボ)

 まるで斬撃の波を泳ぐかのように高速で接近する。


「くっ」


 必死に斬撃の速度を上げるが接近が止まらない。慌てて横に避けようとするが、爆発するような強力な蹴足での方向転換にてSnowに組み付かれる。


「ぐああっ」


 腰のあたりにタックルを喰らい、そのまま後方へ攫われるように運ばれる。


「くそっ!」


 レッドリーフは必死に剣の柄尻で攻撃をする。初撃ボーナスと多少のダメージは入ったがSnowは止まらない。


 ドン!!


「ぐあっ」


 そのまま運ばれて、闘技場の端の壁に叩きつけられた。1割ほど体力が減少する。


「くそっ、接近されてしまったか。だが、ここまで密接していれば、そちらも攻撃手段がないだろう――」


 背に刃を突き立てるべく、細身剣を逆手に持ち替える。


「『瞬勁』……」


 ド――


「がはっ!!」


 ズガガガン!!!!!


 Snowが押し当てていた拳を引いたかと思うと、レッドリーフが一瞬痙攣し、背にしていた高い耐久を誇るはずの闘技場の壁に亀裂が走り、爆発するかの様に砕け散った。


 そして、9割あったレッドリーフの体力が一気に削られ、0となる。


 まさに一撃必殺。


 …


 ……


『えっ……


 な、な、な、な、なんと、大番狂わせ!!


 勝者、1年E組!


 まさに圧倒! 私も目の前で起きたことが信じられません!』


 呆気に取られ、言葉を失っていた放送部のアナウンサーが、思い出したかのように熱い言葉でまくしたてる。


---------------------------------------------


 そこで動画が終了していた。


 動画が終わってしばらくして、お弁当を食べる手すら止まって見入っていたことに気づく。


「なに、これ…… すごいってレベルじゃないよ。しかも、全身ボロボロで高熱を出している状態、なんだよね……」


 次元が違い過ぎて、意味が分からない。


 菫麗はこれを見ずに、eスポーツ部はレベルが低いと思い込んでいるのだ。舐めてかかったら必ず痛い目を見るはずだ。一言忠告してあげないと、と仮想画面を弄って菫麗に連絡しようとして、手を止める。


「まぁ、いいか。多少痛い目見るくらいが、あの子にはちょうどいいか……」


 そう結論付けて、私は食べかけになっていたお弁当の続きを食べるべく箸を伸ばすのであった。


 

◼️登場人物紹介(アバター編)◼️


レッドリーフ

 eスポーツ部の副部長である椛谷 慎一郎のアバター

 中世貴族を思わせる出立ち。軽装備のスピード重視。手数で押し切る戦術を使う。

職業:剣士

属性:風

主武器:細身剣レイピア

スキル:

 属性纏衣★

 斬波衝★

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