第22話 公爵対公爵
過日に酔いながらあげた20話、21話の内容修正、及び変更をして掲載させていただいました。ご理解とご了承ください。
「ああ、どこかで見たことあると思ったらブランシュタットの小倅ではないか。今はお主の相手をしている時ではないのでな」
「このジジイ…」
そう言って軽くジークの野郎の言葉を流す伯爵。その物言いに額に青筋を立てるジーク。実にいい気味だ。まぁ、奴がここに来たことで本当に苛立っているのはむしろオレの方だがな。
ああ、本当にできる限り早く殺したいぞ! このクソ野郎!!
「おっと、今はそんなことに構っている場合ではなかったな」
ジークの野郎は伯爵を睨んだ後、フロイデンベルク公爵の方を向いて、馬から降りて謝辞を述べ始めた。その態度はここにいる奴など雑魚だと言わんばかりに目の前で部隊を展開しているオレたちをまるで無視しているかのようだった。まったく、ふざけてやがるぜ。
「フロイデンベルク公爵、この度の援軍は誠に感謝します」
「感謝? こちらの都合で参戦したまでよ。貴公に感謝を言われる筋合いはないぞ。それよりも…」
ああ、な、なんだ!? 親父がジークのクソ野郎に話しかけていたと思ったら、突然に奴は口を歪ませて笑うや否や片手で帝国では同の位の公爵である親父を締め上げやがった。
「ック、貴様! 何をしているのだ! 我にこのような仕打ちをしてタダで済むと思っているのか。て、帝国を裏切るのか!!」
首を締め上げられた親父は呼吸ができないことで苦しいのだろう。所々、途切らせながら顔を真っ赤にして呻きながらそんなことを言った。親父、大丈夫かよ。な、なんとか助け出せないものだろうか。
「裏切るとは酷い言い様だ。もとから帝国は私を利用していただけだろう? 君たちはヴァルデンブルクという領地を楽に統治したかった。私は力を蓄える時間が欲しかった。だから、互いにうまくやれていたのさ」
「力を蓄える時間が欲しかった? クッ、放せ。は、は・な・せ〜!!」
オレの心配などまったく意味がないと言わんばかりに徐々に親父の呼吸は厳しくなってきたのだろう。親父は見るからに苦しそうに顔をゆがめている。だが、それでも親父は、
「ああ。もう、ならば永遠に力を蓄えて続けていろ!! 魔導兵よ、こいつを殺せ!!」
と言って苦しい中でも魔導兵を操り、反撃を試みた。オレはこれで親父がジークから解放される。そんな甘い願望的を…
いや、未来を期待していた。だが、現実は思ったよりも厳しかったようだ。確かに襲い来る魔導兵の力は凄まじかった。奴らが拳を振るう度にエグれる大地。普通に考えるとそんな化け物を相手に戦えるはずがないのだが…
「愚かな男だ。こんな泥人形で私に勝てると思っているのか」
ジークの野郎は軽やかに親父が作り出した魔導兵の攻撃を次から次へと避けていく。もはや、曲芸の域と言っても過言ではないかもしれない。大量の魔導兵の攻撃を踊るように避けては粉砕していくのだ。
「ば、化け物め!!」
「お褒めに預かり光栄だよ」
そう言ってジークは爽やかな笑みを作る。実にその笑みがワザとらしくイヤラシイ笑みであったのでオレは鳥肌がたった。
「さてと、止めをさすとするか…」
ジークがそう言って親父を締め上げている手にさらに力を入れるような動作をした。ヤバイ、このままではこのままでは親父が死んでしまう。オレは急いで馬から降りようとした。まさにそんな誰もがこのままではフロイデンベルク公爵がジークによって殺されるだろうと思っていた時、
「油断は大敵じゃと父上に教わらなかったかのう?」
と言って、伯爵がジークに向かって斬りつける。ナイス、フリッツおじさん!!
咄嗟の出来事でさすがのジークも反応が遅れたのか。伯爵の攻撃を避けきれずに顔に微かな傷がついた。その所為で、親父を締め上げていた手の力が緩んだんだろう。大地に倒れてムセながらも荒い呼吸をする親父を見て、ほっと胸をなでおろす。親父、無事で何よりだ。
「ぐっ、ハノファード!! 貴様、よくも私のこの体に傷をつけてくれたな!!」
「ブランシュタットの小倅は相変わらず、細かい。そんな小さな傷などここで死ぬであろう、お主には関係ないだろうに!!」
そう言って伯爵はジークを睨みつけ、力強く微笑むのであった。
祝100万PVを突破いたしましたので8月26日、27日と続けて投稿いたします。読者さまのブックマーク登録やアクセスなどがあることで、ここまで作品が続けてこれました。今後も、引き続き読んでいただけると幸いです。




