第九十九話
今日は横須賀で三笠と護衛艦を激写して帰ります。
「落ちろォッ!!」
噴式戦闘機橘花に乗る将宏は三十ミリ機銃弾を放ってヘルダイバーを撃墜した。
「これで三機目ッ!!」
将宏は後方の確認をしつつ新たな獲物であるコルセアを見つけ、速度を上げてコルセアの後方に追いついて三十ミリ機銃弾を叩き込む。
左翼を吹き飛ばされたコルセアはそのまま海面に叩きつけられた。
「くそッ!! 予想外の攻撃だなッ!!」
将宏は愚痴りつつも東京を爆撃させないよう奮戦した。ハルゼーの第三艦隊がイギリスがシンガポールを攻撃する前、密かに東京に接近していたが哨戒飛行をしていた彩雲が発見して全軍に通報した。
その後、シンガポールが攻撃されるとハルゼーは艦隊をギリギリまで東京に近づけて攻撃隊三六〇機を発艦させた。
一連の動作を見ていた彩雲は全てを通報しており、山本はアメリカ大使に抗議したがアメリカ大使はそれを受け流して宣戦布告の文書を山本に渡した。
「……遂に奴等は宣戦布告した……内地の部隊は即応態勢を取らせろッ!!」
陸海は内地にいる全部隊に警戒が発令されたその矢先、館山の対空電探が南方から飛来する敵攻撃隊を探知した。
海軍は東京近辺の横須賀、厚木等から迎撃隊を発進させた。これは陸軍も同様である。
関東地方に空襲警報が鳴り響いた。
「空襲警報ッ!?」
「そんな、いきなり……」
「まさかアメリカかッ!? だが停戦していたんじゃないのかッ!!」
国民達は動揺はしたが、軍の避難指示の元で地下鉄や軍のトラックに乗って移動を始めた。
迎撃隊は浦賀水道で迎撃を開始した。発進出来た戦闘機は全部で二百十二機であったが噴式戦闘機は四二機もあり米攻撃隊に動揺を誘えた。
「ジャップがジェット戦闘機を使用しているだとッ!? 何の冗談だよッ!!」
『ファックッ!! 後ろに付かれたッ!! 誰か助け――』
『ビリーがやられたぞッ!!』
橘花の迎撃に米攻撃隊は大いに乱れていた。このため各個撃墜される機体が続出して爆撃どころの話では無くなった。
結果、米攻撃隊は満足に攻撃することが出来ず横須賀基地が少々の被害を受けるだけだった。
「ジャップがジェット戦闘機だとッ!?」
最新鋭空母ミッドウェイの艦橋で攻撃隊からの報告を聞いたハルゼーは驚いた。まさか奴等はジェット戦闘機を生産しているとは思ってもいなかったのだ。
開戦初頭にハルゼーの第三艦隊(ミッドウェイ一、エセックス級十隻の空母艦隊)
「……奴等の技術が上か……」
ポツポツと帰還してくる攻撃隊を見ながらハルゼーはそう呟いた。
「レーダーに反応ッ!! ジャップの攻撃隊ですッ!!」
「……来たか」
航続距離は日本の方が上である。米軍の航続距離は日本側より短いため必然的に日本の攻撃圏内だった。
この時襲来したのは護衛の零戦六四機、烈風七一機、彗星五三機、天山四六機、靖国四八機、銀河七八機、陸軍から隼五一機、疾風六三機、飛龍八二機、キ109二八機、彩雲十八機、一〇〇式司偵十二機だった。
銀河は五百キロ爆弾を搭載してはおらず、代わりに新型のイ号一型甲無線誘導弾を搭載していた。
このイ号一型甲無線誘導弾は乙と共に一体化されて全て爆装は五百キロに統一されていた。
先のマリアナ沖海戦の時にも試作の五基が投入されたが全て海面に命中したり失敗していた。
今回は改良を重ねての投入だった。投下高度は三千五百で最大航続距離は約五千、爆撃手の目視による照準である。
「制空隊が敵戦闘機と空戦をしている今が好機だッ!! 行くぞ野郎どもッ!!」
攻撃隊隊長の野中五郎中佐はそう言って突撃を開始した。野中の銀河隊は高度を三千五百で維持しながら飛行している。
「誘導弾発射用ぉ意……撃ェッ!!」
大型空母に照準をした爆撃手が投下索を引いた。誘導弾は母機の銀河を離れてミッドウェイに向かって次々と飛翔した。
「敵ロケット弾が接近しますッ!!」
「おのれジャァァァップッ!!」
ミッドウェイに向かってくる誘導弾を見ながらハルゼーはそう叫んだ。
ミッドウェイは誘導弾の命中を受けて震えた。命中は五発にも及んだが飛行甲板が使用不能になっただけであり、機関には損傷は無かった。
だがまだ日本軍の攻撃は終わったわけではない。ミッドウェイの被害はそれだけだが、他のエセックス級では四隻が被弾損傷をしていた。
そこへ攻撃隊が殺到した。第三艦隊の艦艇はVT信管を搭載した対空砲火を放ち、寄せ付けないようにしたが彩雲と一〇〇式司偵が電探欺瞞紙をばら蒔いた。
VT信管は欺瞞紙に反応して適当な空域で爆発してしまう始末だった。
「くそッ!! これだとジャップは……」
「左舷から雷撃機ッ!!」
ミッドウェイの左舷から天山十六機が迫った。ミッドウェイの左舷対空火器が火を噴き三機を海面に激突させたが残りの十三機は必殺の魚雷を投下して離脱した。
「面舵一杯ッ!!」
ミッドウェイが回避運動をして八本を避けたが五本の魚雷が左舷に命中した。
「注水急げッ!!」
復原作業をしているが右舷からキ109五機が迫ってきた。
「あいつらも魚雷を……」
ハルゼーがそう言った瞬間、先頭のキ109の七五ミリ砲が火を噴いた。
「なッ!?」
先頭の砲弾はミッドウェイの艦橋からは外れて海面に命中して水柱をあげたが、ハルゼー達は驚愕した。
「ジャップは大砲を航空機に載せやがったのかッ!?」
それがハルゼー大将の最期の言葉だったと、生き残りの艦橋要員はそう語った。
他のキ109がミッドウェイの艦橋を砲撃をしてこれが命中、ハルゼーの命を奪ったのである。
しかもこれはミッドウェイの運命を決める一手になった。
ミッドウェイの艦橋が破壊され艦長も戦死したため操艦の指示を出すのが一時遅れてしまった。攻撃隊はそれを見逃さなかった。
「ジャップの雷撃機だッ!!」
天山七機が左舷から再び進入して魚雷を投下して離脱する。ミッドウェイは避けようとするが止めの二本が命中。
これが致命傷となってしまい、ミッドウェイは急速に傾斜していく。
「総員退艦せよッ!!」
軽傷を負った副長がそう指示を出す。アメリカの最新鋭空母はその初陣において見事勝利する事はなく、その巨体は波間に消えていくのであった。
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