第九十二話
「な、何だとッ!?」
ホワイトハウスでその報告を聞いたルーズベルトは愕然とした。
「間違いでは無いのかッ!!」
「いえ……間違いではありませんプレジデント。ウラジオストクの我が米航空基地は壊滅して恐らく半年は使用不能です」
「……何故だ。奴等は航空機を使ったとしても壊滅など……」
「ヤマト以下戦艦部隊の艦砲射撃です。航空攻撃で滑走路を飛べなくしたジャップは大胆にもウラジオストク沖で戦艦部隊を展開させて艦砲射撃を二時間に渡って敢行。基地機能はほぼ喪失、飛べる機体は一機もありません」
爆撃前に第一次攻撃隊が航空基地に殺到。基地側は対空砲で応戦したが対空砲だけでは攻撃隊を押さえる事が出来ず滑走路で待機していたB-17やB-24隊は一機残らず破壊された。
二波に及ぶ攻撃で滑走路は破壊され基地機能は一時低下したが、まだ終わりでなかった。
空襲から翌日の0525にウラジオストク沖合いに大和を旗艦とした第一艦隊が砲撃準備をしていた。
十二機の零式水偵と零観がウラジオストク上空を飛行して観測を行い、座標を大和に送っていた。
「撃ちぃ方始めェッ!!」
大和以下戦艦部隊が一斉に砲撃を開始した。五一サンチ砲を搭載する大和と武蔵の艦砲射撃は凄まじく、備え付けられたカメラが吹き飛ばされたほどである。
二時間に渡る艦砲射撃でウラジオストクの米軍航空基地は文字通り壊滅した。
上空からの偵察で見えている物は全て破壊され、しかも武蔵の五一サンチ砲弾が防空壕に退避していたルメイ少将以下参謀達の命を奪った。
「ですので基地は半年は使用不能です」
「……なんということだ。もう少しでB-29の投入が出来たというのに……おのれヤマモトめェッ!! ウグッ!?」
「プレジデントッ!?」
その時、ルーズベルトが突如胸を押さえた。直ぐにハリーが駆け寄る。
「だ、大丈夫だハリー。ここ暫く働きすぎたようだな」
ルーズベルトは呼吸を整えつつコーヒーに口をつける。
「……兎に角だ。至急、アラスカ経由で工作器等を急いで移送するのだ。一日でも早く基地を復旧させるのだッ!!」
「イエッサーッ!!」
斯くしてアメリカは飛行場の復旧を急がせるのであった。
しかし、日本側もそれだけで満足しているつもりではなかった。
「第五艦隊を強化するのかね?」
「はい、第五艦隊は北方及び本土防衛の艦隊ですが艦艇は旗艦那智以下軽巡多摩、木曽等の小規模な艦艇しかありません。恐らくアメリカはアラスカ経由で物資の輸送をしてくると思うので千島列島辺りで第五艦隊が警戒すれば……」
「ウラジオストクへ向かうアメリカの輸送船団を捕捉出来る……わけだな。よし、第五戦隊と第六駆逐隊を第五艦隊に編入しよう」
堀はそう決断して第五戦隊と第六駆逐隊は第五艦隊に編入されて、細萱中将は旗艦を妙高にして母港を択捉島にした。
また、零式水偵も三六機に増強されて監視が強化された。
陸軍も樺太に二個師団、千島列島に二個連隊を送り、戦車も三個中隊が送られた。
このため日本側は北方をも重視するようになった。
日本が戦力を整えている時、中国は大規模な内戦をしていた。
蒋介石率いる国民党と毛沢東率いる共産党は支那事変が起こっていないため手を組んでおらず、中国は激しい内戦をしていた。
そのため、中国は二分割となり北は共産党が南は国民党が支配していた。両党にはそれぞれアメリカとソ連が支援していたが、国民党に日本が支援したため共産党は次第に押され始めモンゴルへと逃げ込んでいた。
国民党は治安維持を念頭に日本に協力を要請した。
「……どう思うかね?」
「あまり中国に介入したくないのが本音です。中国には一個旅団程度を派遣するのが得策だと思います」
料亭で将裕はそう言った。あまり介入すれば史実の支那事変になるかもしれないと踏んだのだ。
山本達も企業の中国進出は押さえ込んでいたが、企業家達はこぞって反論していた。
「何故中国に進出してはならんのだッ!!」
「中国に進出すればわが社は更に景気は上がるのに政府は何故躊躇するんだッ!!」
企業家達は連日に渡ってそう叫び、それを嗅ぎ付けたマスコミがそれを新聞に掲載して山本内閣を批判した。
山本は緊急記者会見をするはめになり、山本は「全て陛下からの指示であり、中国は我が国の力を借りなくても復興出来ると判断したのだ」と発表した。
山本も陛下に頼み込んでの根回しであり、それが発表されると企業家達もぐうの音が出ず騒ぎは沈静化するのであった。
「……疲れる連日でしたね」
「あぁ……金儲けしか考えない企業家達には疲れるものだな」
「国の事情も判ってほしいですがね」
料亭で山本達はそう話していた。
「兎も角だ。中国には出来る介入しない方針を貫く。これは後の政権にも方針させるようにしておこう」
この方針は後の政権も継がれていく事になった。
「………(沈黙が痛い)」
ところ離れて前田家の夕飯。前田少佐は卓袱台で葬式のような雰囲気を味わっていた。
その原因は霞達三人であり三人からは曇天が周囲に広がっている。
「(あのアホめ……皺寄せは全部俺に来てるじゃないか。何が大丈夫だよ)」
前田少佐はそう思いつつ沢庵をポリポリとかじる。
「(恨むぞ将宏……)」
そう思う前田少佐であった。そして翌日、将裕は中島飛行機のところを訪れていた。
「よく来たね河内……楠木君」
「お久し振りです中島さん」
「まぁ前置きはさておき、早速見せよう。来たまえ」
中島社長はそう言って将裕をとある格納庫に案内した。
「あれだよ」
「あれが……連山」
将裕の前には、史実では僅か四機しか生産されず性能も満足に判らなかった四発爆撃機連山がそこに翼を休めていた。
「機体性能はこの通りだ」
中島社長が将裕に機体性能を見せる。見る限り性能は史実同様であった。
「量産機は既に二十機だ。……いや、何とか二十機に届いたのが現状だな」
「本当なら戦略爆撃用として三百機は欲しいところですが……」
「まず無理だろう。Z計画も順調だが、試作機の試験飛行はまだ終わっていない」
この時、中島飛行機は連山の他にも幻の重爆撃機富嶽も設計、思案していたのであった。
「……これは使えるかもな」
そう呟く将裕だった。
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