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孤独
僕は孤独だった。
もちろん、家族は存命で真の孤独とはいえなかったけれど、失恋、したんだ。
ある日彼女は僕の前に現れて、僕の心をかきみだした。
本当にこれ以上の恋なんて、一生に一度しかないんだと思っていた。
微笑む彼女のためなら、太陽から金の林檎を取ってくることだってできそうだった。
しかし時が流れて、彼女も僕の前から過ぎ去ってしまった。
残酷な時間の天使は、一度与えたものを根こそぎ奪って行った。
時間こそが失恋の特効薬だというけれど、立ち直れる気がしなかった。
コンクリートのジャングルで、大勢の他人が行き交う中で、僕は一人ぼっち。
空を見上げるとどこまでも突き抜ける蒼い空だ。
「孤独」という異質なものと、どう闘えばいいのだろう?
僕は戦士でありながら誰かの救いを待ち望む弱者だった。
立ち止まるな。
一歩だけでも足を前に踏み出せ。
真昼の強烈な太陽光を浴びながら、地球にいる。
誰か。
叫んでみても声にならない。
今流行りの「転生もの」だって役に立たない。
現実の今を生きなきゃ意味がない。
彼女を無かったことには出来ないんだから。




