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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第一章 頑張らない少年
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第十三魔導 後顧の憂いは早めに絶つ

 さて、土曜日の今日は学園は休み。当然、俺としては出かけるつもりもないし、部屋で寝て過ごそうかとも思ったが昨日の事を思い出し俺は部屋から出て、15階のフロアにエレベータで上っていく。


 「そぉーいや、直登と剣呉はどこ行ったんだ?」


 朝食を一緒に取ってから今の時間帯まで直登たちは部屋に居なかった。携帯でメールしても返事は無く、菜月たちに聞いても知らない、と一言メールのみであった。

 今さらだが、携帯は存在している。今まで出てこなかっただけでちゃんとあるぞ。通信費や電話料金なんかもな。


 チン、と目的地であり最上階の15階フロアに着くとまず、顔だけ覗かせ誰もいないことを確認してエレベータから降りる。

降りるとまずは右左を何となく見る。エレベーターから出て右に向かい合うように4部屋。左も同じく向かい合うように4部屋である。


 俺は右へと歩み、一番奥部屋の扉の前に立ち、扉の横に付いているプレートを眺める。

 そこには『藤原 凛』『藤原 智香』と書かれている。そう、見ての通り凛姉たちの部屋である。俺は若干、緊張しがちに扉を控えめにノックする。それに対して


 「はーい」


 と、声が聞こえ、ガチャ、とドアノブが回り、智香が出てきた。

 出てきた智香に驚く俺に、えっ!? と驚きの声を上げる智香は見合ったまま、時間にして3秒が経った。


 「よっ。話があるんだけど、中に入ってもいいか?」


 「えっ!? あっ、うん。 ……どうぞ」


 智香は扉を全開で開け、俺を中にいれた。まぁ、予想道理、中に入ると凛姉が目を真ん丸にして俺をボー然と眺め、一言。


 「しゅ……柊羽くん~!?」


 「おはよう、凛姉。もしかしなくても風呂に入ってた?」


 前回紹介した通り部屋には小さいお風呂、と言うよりシャワールームが存在している。


 で、凛姉はどうやらシャワーを浴びていたようで、濡れた黒髪をタオルで乾かしながら、Tシャツに半ズボンと言うラフな格好だった。


 そんな凛姉はタオルを握りながら顔を真っ赤にしてはわわ、と慌てるのである。

 俺は後ろにいる智香に顔を向ける。


 「……なんで凛姉、慌ててんの?」


 「それはあんな格好見られたら恥ずかしいでしょ」


 「……あんなって、一緒に暮らしてたこともあっただろ? もう見慣れたけどなぁ」


 そう言ってからもう一度慌ててる凛姉に顔を戻す。

 実は慌てふためく凛姉が可愛い、とか思ったのは内緒である。


 「で、何しに来たのよ柊羽?」


 「ん? あー、アレだ。昨日の事に付いて話しておこうかなぁ……なんて」


 頭の後ろに手を当てながら気楽に言おうとしたのだが、二人の顔が急に神妙になると智香は凛姉の隣に歩み寄り、並んで俺を見る。


 俺としても昨日のお詫び、と言うか水魔導を見せてしまったから五大の事以外なら教えてもいいかな、って。まぁ、早めに言っとけば後々楽だしな。

 

 「そんな怖い顔しないでくれって。俺って昔から魔力が高いだろ?」


 多分凛姉のベットだろう。そこに腰を下ろしながら二人に聞いてみるとうん、と首を縦に振り近くの椅子に凛姉は腰を下ろした。智香はなぜかとてとて、と俺の横に腰を下ろす。


 なぜ凛姉の横に行ったのに戻って来た!?


 それと、なんで凛姉はしまった!? なんて顔してるんだよ?


 「で、その事なんだけどまず謝っとくわ。一緒に暮らしてた時、俺の最大魔力は5000って言ったじゃん? あれ、嘘なんだ。実際は20000。もっとも、いつもは820になるように鍵を掛けてるけど」


 「「……」」


 「お、おい。二人とも?」


 押し黙っちゃったけど横にいる智香と凛姉を交互に見て、どうすっか、と考えようとした瞬間、二人の口が同時に開いた。


 「「ええっーーーーーーーーーーっ!!!!??」」


 キーーーン、と右耳から左耳へ貫かれたと錯覚するほどの叫びが俺を襲った。さらに凛姉はガタン、と椅子から弾かれるように立ち上がり、椅子が倒れた。そう、椅子が──────


 「うおぁ!?」


 違った。椅子ではなく、俺が、ベットに、凛姉によって、押し倒された。

ボスン、とベットに埋まると間髪入れずに凛姉が上に股がり、綺麗に整った顔を近づけてくる。だが、その表情は笑顔だが目が笑って無い。


 「どーゆう事かなぁ? 柊羽君。おねーちゃんにも分かるようにもう一回、言ってくれる?」


 「わかっ───って、まずは退いて! 近い! 顔が近い!!」


 凛姉の両肩に手を当て、引き離すようにして凛姉を遠ざけるが、まぁ、遠ざけるだけであって馬乗り状態から抜ける訳ではないんだがな。


 「いや、だから俺の精神魔力は20000。学園一、いや、この国でも上位の魔力を誇る凛姉の8100を超えてる。あっ、先に言っとくけど生まれつきだから。努力云々じゃ、ないからね。はい、説明終了!」


 凛姉も智香も信じられない、って顔して互いを見合っている。まぁ、分かるけどな。いきなり魔力20000です、って言って誰が信じるかって。


 「質問は後で受け付けるからまずは話を進めるな。で、今まで俺は契約精霊は炎の一体って言って来たけど実は五体と契約している。それぞれの属性の精霊とね」


 「ほ、本当……なの?」


 「此処まで来て嘘言ってもね。それに水魔導なら昨日の食堂で見せたろ?」


 「う、うん」


 昨日の事を思い出しているのか凛姉は答える。智香はもはやリアクションは無くなり呆然と聞いているだけである。

 

 「そんなわけで、俺が昨日、水魔導を使った理由は分かった?」


 二人に問いかけると頷く。よし、あとは退いてもらって帰るだけ、だな。


 「柊羽さぁ、なんでそんなこと言いに来たの?」


 「?」


 「いちいちそんなこと言わなくても私たちだったら別の精霊と契約を結んだ、って考えだけじゃん。魔力の事も契約精霊の数も言わなくていいことじゃない?」


 やっと口を開いたかと思えば智香はそんなことを口にした。

俺も五大の事だけ黙ってれば後々楽、って考えてたら口が勝手に動いてた訳だしな。


 「……まぁ、あれだ。二人にはずっと前から世話になってるし、迷惑もかけた。だからこの機会に俺の秘密を二人に教えておこうと思ったんだよ。二人なら俺の秘密をバラす事も無いって信頼してるからさ。それに……家族に隠し事って嫌じゃん?」


 五大以外の事はすべて喋ったから許してくれ、と心の中で誤っていると股がって見下ろしてくる凛姉と智香はなぜか俺から顔を背けた。で、顔を向けてくれたと思ったら二人ともなぜか怒ってる。いや、拗ねてるのか?


 「そこは家族、なんだ」


 「柊羽君は私たちの事、家族・・って認識なんだぁ。お姉ちゃんは寂しいな」


 え? 家族って思ってたの俺だけ!? と、普通に聞けばそう受け取れるが如何せん昨日の発言があるからな。下手なことを言う前に帰るか。


 「他にどんな意味があるんだよ? それじゃ、またね」


 スルッと凛姉の下から抜け出した俺はそのまま手を振って部屋から出ていく。どうやって抜け出したかってのは気にするな。したら負けだ。それと、出ていく俺を止めようと凛姉が口を開けて何か言ったようだが聞こえなかったな。


 そんなこんなで学生の貴重な土曜日と言う時間が終わってしまった。


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