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第12章 「赤眸の射星、暁に輝く」

 そうして江坂分隊の皆さんに哨戒をお願いしながら、私は援軍に来てくれた同期の特命遊撃士との再会を果たしたんだ。

「ち、千里さん…よくぞ、よくぞ御無事で…」

「まぁね、英里奈ちゃん。英霊になるのはもう少しお預けになったよ。もう偽王女の看板を下ろしても大丈夫だね。」

 西洋人形のような端正な美貌を涙で濡らしながら、胸元に顔を埋める英里奈ちゃん。

 そんな同期生に笑いかける私の胸中にも、万感の思いが湧いてきたんだ。

 この愛しき戦友や部下達と、再び相見える事が出来るとはね。


 もっとも、せっかくの感動ムードはすぐに水を差されちゃったの。

 青いサイドテールが目にも鮮やかな若き剣士によってね。

「おやおや、千里ちゃんったら…伯爵令嬢の英里奈ちゃんを(たら)し込むだなんて、なかなか隅に置けないじゃないの!」

「ちょ…ちょっと!変な事言わないでよ、京花ちゃんったら!」

 悪友気質のある京花ちゃんの軽口に対するツッコミは、支局では日常的に交わしている普通の遣り取りなの。

 だけど、今日に限っては何時になく愛おしいよ。

 服装と場所にさえ目を瞑れば、完全にいつものノリなんだから。

 とはいえ戦場にいる以上は、こうして感慨に浸ってばかりもいられないよ。

 哨戒をお願いしている江坂分隊の皆さんに何時までも迷惑をかけてはいられないし、私も一刻も早く戦いたいからね。

「冗談はさておき、予備のアサルトライフルを貸してくれないかな?紅露共栄軍の連中から分捕ったのを使ってたんだけど、性能が悪過ぎて閉口させられてたんだよね。」

「ホントだ、こりゃヒドい。」

 レーザーブレードを個人兵装に選んだ京花ちゃんは、私やマリナちゃん程には銃器に明るくない。

 そんな京花ちゃんでも分かる程に、紅露共栄軍から鹵獲した装備は劣悪極まりない物だったんだ。

 我ながらよく戦い抜いたって感じだよ。

「特命機動隊のアサルトライフルで良いのかい、ちさ?ちさにはもっと欲しいのがあるんじゃないの?」

「マリナちゃん、それは!」

 長い前髪で右側を隠した切れ長の赤目と視線が合った私は、思わず声を上げちゃったの。

 何しろ大型拳銃を個人兵装に選んだクールビューティーな少女士官が手にしていたのは、中一の時の正式配属から今に至るまで常に私が生命を預けてきたレーザーライフルなのだからね。

「コイツを使って敵を撃っていると、ちさと一緒に戦っているように感じられたよ。だけどこのレーザーライフルも、ちさにトリガーを引いて欲しいんじゃないかな。」

「補助兵装の自動拳銃とトレンチナイフ、それに軍用スマホ。キチンと持ってきてあげたからね。後は千里ちゃんが来るのを待つばかりだったんだ。」

 話を聞いてみると、英里奈ちゃん達三人は麗蘭王女殿下を紫禁城まで護衛した足でそのまま増援部隊に参加したらしいの。

 護衛任務完了後の休暇を辞退してまで増援部隊への参加を志願したのは、ひとえに自分達で直接私に装備品を届けたかったからなんだって。

 三人の厚い友情には、私も思わず感極まっちゃったなあ。

 何はともあれ、これで「赤眸の射星」は名実共に復活だよ。

「よし、これで準備万端!紅露の奴等なんか、何時でも来いだよ!」

「おっ!良いじゃん、千里ちゃん!クラシックな満州服はそのままにレーザーライフルを構えて、オマケに補助AI搭載の多機能ヘルメットまで被っちゃって。さっきまでのチャイニーズマフィアみたいななりが嘘みたいだよ。」

 せっかく装備を整えて気合充分だというのに、京花ちゃんったら仕方ないなぁ。

 チャイニーズマフィアじゃなくなったなら、一体何なんだろう?

 そう聞いてみたら…

「そうだね、こうしてレーザーライフルを構えているんだし…サイバー馬賊なんてどう?」

「えっ、サイバー馬賊?何それ?」

 何しろ馬賊というのは、清朝末期の中国大陸で活躍した騎馬軍団を指す歴史用語なのだから。

 何とも奇妙な渾名だけど、紅露共栄軍の連中に浴びせられたセンスのない蔑称とは雲泥の差だね。

 この吹田千里少佐、今日一日は「赤眸の射星」兼「サイバー馬賊」として思う存分に暴れさせて貰うよ!

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― 新着の感想 ―
軽口もTPOを考えるべきかもしれんなぁ。 戦場で、しかも感動の再会……それであの軽口なんて下手すりゃ洋画に出てくる不良の兵隊だよ(ォィ でもそういう友人がいるからこその日常のために戦ってるんだよねぇ…
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