表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/11

1人目の劇団員はイケメン騎士様!?(9)

 兵士の剣が、私の首すじをかすかにに突きつけられた

 つつ……と血が流れるのを感じる。


 やば、もう少し猶予があるかと――


 ――キィン!


「それが騎士のすることか!」


 私が次の出方を判断する前に、兵士の剣がアーロンの剣によって弾かれた。

 見たところ彼らは騎士ではなく雇われ兵士だとは思うけど、今つっこむところではないだろう。


 アーロンは私の腕をつかんでいた兵士の手を取り、そのまま引き倒した。


「ぐえっ」


 背中を打ち付けた兵士を、そのままステージの下へと蹴り出す。


 私が強化する前にこの腕前!?

 アーロンってもしかして、本気を出したら強い?


「これ以上、貴女に指一本触れさせません!」


 台本にないセリフだけど、ちゃんと繋がってるからOK!


 兵士達が一斉にステージに上がってこようとする。


 今だ!


 私は聖女の力で、アーロンの身体能力を強化する。


 そこからはもう、ハデなアクションの連続だった。

 迫り来る兵士達から私を護りながら、ちぎっては投げ、剣を弾き、蹴り飛ばす。


 広場にいる観客達は湧きに湧いた。

 日々を生きるのに精一杯な彼らにとって、これほどの娯楽は滅多に味わえないものだろう。


 アーロンは兵士達を次々に昏倒させていく。

 中には、文字通り空中に投げ飛ばされる兵士もいた。


 観客達のど真ん中に落ちた兵士の中には、「こないだうちの息子を殴ったやつだね!」などと言われ、踏まれまくっているのもいる。

 ちょっとかわいそうだが、自業自得なのでしょうがない。


 そして残るはリーダーただ一人。


「貴様ら、こんなことをしてただですむと思っているのか!」


 リーダーさん、お顔が真っ赤である。


「こんなにたくさんの仲間を殺してしまった……」


 アーロンはしっかり演技を続けている。


「いや、死んでないと思うが……。あとアーロンさんあんた、もう騎士団を退団したんだろ?」


 そこで冷静なツッコミはやぼでしょリーダーさん。


「あなたの罪、私も一緒に背負うわ」


 私はそっとアーロンの剣の柄にそっと手を添える。

 こくりと頷くアーロン。

 その真剣な表情に、お芝居だとしてもドキリとしてしまう。

 あれだけ湧いていた観客達も、静まりかえり、ごくりと息を呑む音すら聞こえてくるようだ。


「ここまで抵抗したのだ。腕の一本くらいは覚悟してもらおう!」


 リーダーがアーロンに斬りかかる。

 これだけ仲間がやられても自信満々に襲いかかってくるあたり、腕に覚えがあるのだろう。

 しかしアーロンは、リーダーの攻撃をなんなく裁く。


 私の能力は、動体視力や筋力などが総合的に強化される。

 ただ、アーロンの動きをみていると、決してそれに頼っているだけではないことがわかる。

 剣術は素人な私にも、彼の動きが洗練されたものだとわかる。

 ただ早く動いているだけではなく、美しさすら感じられる動きなのだ。

 きっと努力をしたのだろう。

 騎士団で評価されることはなかったと本人は語っていたが、これまでは身体能力がついてこなかっただけなのかもしれない。

 もしくは、暴力を扱うのに彼は優しすぎたか……。


 剣の柄でリーダーの首筋を殴り、彼を昏倒させたアーロンが私の手を取る。


「さあ、まいりましょう!」

「はい!」


 倒れた兵士達をそのままに、舞台は続く。

 あとはエピローグ的な一幕を残すのみだ。


 騎士に寄り添うヒロインが、彼の竪琴と歌を聞くシーンで無事閉幕となった。


 結果として、公演は大成功を収めた。

 想定以上だったと言っていい。


 万雷の拍手の中、私と手を繋ぎ、観客に向かって礼をするアーロンは、これまでで一番嬉しそうな笑顔だった。


「これはどういうことですの!?」


 観客達の歓声を破るように響いたのは、セーラの怒鳴り声だった。


お読み頂きありがとうございます。

本日の更新はここまでです。

面白いと思っていただけましたら、ブックマークや高評価で応援いただけますと嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ