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1人目の劇団員はイケメン騎士様!?(7)

◇ ◆ ◇


 いよいよやってきました、公演当日!


 会場に選んだのは王都の広場だ。

 いつもは処刑台がおかれる場所に、今はちょっとした舞台がある。

 3人も立てばぎゅうぎゅうだけどこれで十分。

 よくしてくれた大工の棟梁さんに感謝である。


 広場には大量の人が集まっていた。

 これ、五百人はいるんじゃない?

 宣伝もしたし、めったにない娯楽だからある程度来てくれるとは思ったけど、広場に続く路地までびっしりだ。


「す、すごい人じゃないですが……話が違いますよ……」


 アーロンが舞台の上から周囲を見渡し、ぷるぷる震えている。

 控え室や舞台袖など用意できるはずがないので、開演前から舞台上に並んで立つしかないのだ。


「いやー、予想以上ねー」

「これ、けっこう儲かのでは……」


 小声でそんなことを言うアーロン君。

 意外に現金なところのあるね。

 実は余裕ある?


「いやー、チケット全部タダで配っちゃった……というか、チケットなしで見られるから、何をやっても赤字だよ」

「え!?」

「だって、わざわざお金を払ってまで芝居を見ようなんて余裕のある人、そんなにいないでしょ。

 そもそも、この場所を選んだ時点で、チケットを持っていない人に見えないようにするなんてできないしね」

「それはそうですが……」

「パトロンなし、貴族相手でもないお芝居で食べていけることなんてほぼないわ。でも私はそれがしたいの」

「マリナさん……」

「大丈夫。広場に出てる屋台には出資したから、儲けの一部はもらえる手はずになってるの」

「いつのまにそんな?」

「お仕事先で、宣伝の他にそういう交渉もね。いやー、有り金全部そこにつっこんでるから、人が集まらなかったらどうしようかと思ったよ」

「全部!?」

「ここで失敗したらどうせ後なんてないんだし?」

「ものすごい度胸ですね……」

「あとは今回の公演で観に来てくれた人を楽しませること。それが全ての始まりになるんだから。がんばってよ?」

「が、がんばりましゅ」


 あ、かんだ。

 プレッシャーかけちゃったかな?

 ちょっとフォローしておこう。


「アーロンってさ、戦場に出たことあるんでしょ?」

「はい」

「人がたくさん死んだよね」

「はい……」

「でもさ、ここじゃあ誰も死なないし、殺されない。

 楽しいと思えば喜んでくれる。

 つまらなかったらそれまで。

 でも、今の私達は失うものがないところからのスタートなの。

 なにもなくて現状維持。

 よかったと思ってくれた分だけプラスになる。

 こんなにおいしいこと、めったにないよ?

 だから気楽にがんばろ」

「マリナさんは人をのせるのが上手いですね」

「なんたって団長さんだからね」

「え? 団長は僕にやらせてくれるんじゃないんですか?」

「やりたかったの!?」


 これは意外!


「冗談です」

「……真顔で冗談はわかりにくいのよ」

「表情の作り方はマリナさんに習いましたから」


 アートンはにかっとイタズラっぽい笑みを浮かべた。


 広場の一部からそれを見ていた女性陣が「「きゃー」」っと黄色い声を上げる。

 小声で話す私達の声は届いていないはずだけど、表情だけでこの反応。

 イケメンは特だなあ。

 いいよいいよ!


 ちなみに今の私は実家から持ち出した貴族用の服、アーロンは軽装鎧である。

 なんせ衣装はこれしかないので、脚本側をあわせざるを得ない。


 さあ、幕を開けましょう。

 幕なんてないけど!

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