表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第3章月の星団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/186

6.「〝礼拝〟のハサン」

 突然の衝撃がヴェダに襲い掛かる!?

「来るなぁああ! ヴェダぁああ!! 敵が襲いにくるぞぉおお!!!」


 ゴッ!


 その瞬間、アタシは凄まじい衝撃をくらった感触をした。アタシに向かって叫ぶアンナの声が……いや、この世界の音が聞こえなくなる気がした。


 だが、その視界は、そのまま川を渡った先の地面へと移動した。つまりうつ伏せで倒されたのだ。


 受け身はとれなかったけど、落ちる寸前、魔力を身体に纏ったので、怪我はなかった。


 アタシは何が起きたのかわからず、振り返る。すると目にしたのは驚きの光景だった。


 空中で、リチャードが敵二人の腕をつかみ、動きを止めていたのだ。


 そして、リチャードは川に落ちる寸前に、マミーたちがいる側の向こうの地面に向けて「オラァ!」と投げ飛ばした。


 敵二人は地面に叩きつけられ、砂ぼこりが舞う。


 そしてリチャードはそのまま川に着地した。川は浅瀬のため、リチャードの足が少し埋まる程度の深さでしかなかった。


 ここまでの一連の流れは一瞬だったため、敵二人の正体もよく見えなかった。


 だが、アタシは自分が何をしたのか、ようやく自覚した。


 アタシはエルザを救うことで頭が一杯で、考えもなしに飛び出したのだ。


 そして、川を飛び越えようとジャンプしたところを敵二人に襲われた。


 そして、今無事だったのは、リチャードがアタシを吹っ飛ばし、敵二人からの攻撃を守ったということだろう。


(リチャードが止めに行かなければ、アタシは死んでいたかもしれない……アタシはなんてことを!)


「リチャード! すみませ」


「構うなぁ!! 動いたなら救えッッ!!!」


 アタシが謝罪しようとしたところ、リチャードが大声で怒鳴って止めさせる。


(そうだ! 今すべきことはリチャードに謝ることでも今のやらかしを反省することではない! 一刻も早くエルザを治療すること!! 反省なんて全て終わってからでいい!!)


 リチャードが怒鳴ってくれたおかげで、アタシは今やるべきことを思い出した。


 そして、リチャードが怒鳴った頃に砂ぼこりが消え、敵の正体も判明した。


 今、リチャードと交戦していた敵二人の正体はオーク族とゴブリン族だったのだ。


 オーク族は、見た目が猪のような鼻と牙、灰色が混ざったような暗い緑の肌色と男女平均身長二メートルの体格を持つ種族だ。


 オーク族は、アタシたちエルフ族や人間族のように二足歩行の種族の中では力の強さはトップクラスとされている。


 一方ゴブリン族は、見た目がアタシ達エルフ族のように長い耳、青みがかった明るい緑の肌色と男女平均身長一・四メートルの体格を持つ種族だ。


 ゴブリン族は、オークと同じ二足歩行の種族の中で、力の強さはオークに劣るがそれでも小柄な身長に見合わない怪力を持つ種族で、油断ならない。


 オーク族とゴブリン族は主に砂漠の地域に生息している種族でこの辺りに見ることはほぼない。そしてインチキタウンにもいない種族でもある。


 敵としてどちらも強力な種族であるが、ここはリチャードを信じて任せるしかない。アタシは振り返り、エルザの元へと駆けつける。


「「させるか」」


「おっと! ここから先はおれを倒してから行きなって奴だ」


 オークとゴブリンのコンビがアタシを追撃しようとしたところをリチャードが止めたのだろう。敵がアタシの近くに来る気配がない。


「エルザ!」


 アタシはエルザの元へと駆けつける。


 そして、呼吸はしているし、心臓も動いていることがアタシの聴覚でわかった。


 ()()()()()()()()()。今ならまだ間に合う!


「今助けるッス!」


 ガバッ


 アタシが回復系魔術を発動しようとしたところ、アタシのすぐ後ろで何者かが動く気配がした。


「しまった! ヴェダ後ろだぁ!!」


 リチャードが叫んだ。後ろを振り返ると、地面から敵が表れた。今度は獣人族(ウシ科)がナイフを持ちこちらを襲おうとした。


(伏兵!? そんな! アタシの耳にまで聞こえないほど音を消して……)


 今にもナイフが刺さりそうな距離でアタシはそんな思考をしていた。リチャードが助けに行くにしても間に合わない。ここまでか。


「「聖風霊プニューマ」」


 そう叫んだのを聞こえた瞬間、アタシの目の前で突風が吹き、獣人族(ウシ科)の敵は、その風によって、森の中へと吹っ飛ばされた。


 アタシは風が吹いた方向を見る。すると、マミーとスザンナが、背中合わせにして指を刀印とういんの形にして狙いを定めていた。つまり今の風はマミーとスザンナが魔術を発動してアタシを助けたのだ。


「マミー! スザンナ!」


「ヴェダ! 今のうちにッッ!!」


 マミーに言われて、アタシは心の中でマミーとスザンナに感謝をしながら、エルザに向かって治療泉ルルドを発動する。


 魔術名【聖風霊プニューマ】。これは嵐風らんふう系魔術の一種。魔力を風に変換し、今のように飛ばすことや、槍や矢など武器に纏わせることで、突きの貫通力を高めることもできる。


 嵐風系魔術を発動する際の構えは、人差し指と中指を伸ばしてくっつけ、残りの指を握るいわゆる刀印とういんと呼ばれる形にする必要がある。


「うっ……ヴェ……ダ?」


 治療泉ルルドを終え、エルザが目を覚ます。


「良かったッス! 一命を取り留めたッス!!」


「あ、あんな早くに治療を!? くそっ! やはりヒーラーが助けにきたのか」


 リチャードと相対しているゴブリンがそう叫んだ。


 ザッ


「ヴェダ! ありがとう!! エルザを助けてくれて」


 アルファイを除く、アンナ隊の三人が駆けつけ、アタシとエルザを守るように囲んだ。


「へっ! 匂いからして、今この場にいる敵はあんたら二人と、さっき吹っ飛ばされた獣人族を加えても三人だけだ」


「どうする? 今この場で引き返すなら特別に見逃してもいいぞ」


 リチャードがオークとゴブリンのコンビに余裕を見せる。


 確かに。この場にいるアンナ隊の四人、リチャード、マミー、スザンナ、グーリュそして、ヒーラーのアタシと戦力は整っている。数で見れば有利なのはこちらに違いない。


 だが、そう思った瞬間。


「やれやれ。何に時間を食っているのかと思いきや……この〝礼拝〟のハサンを待たせるとはいい度胸ですね」


 川の頂上から突然声がした。


 先ほどの獣人族(ウシ科)のように飛び出るまでは、音を消していたように。そして今のリチャードの嗅覚のように捉え切れていなかった。


 声がする方向に振り向くと、川の頂上に頭にフードを被った黒いローブを着た男性が立っていた。



 〝礼拝〟のハサンとは!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ