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【連載版】確かに幼馴染みをかわいいと褒め続けてきたのは俺だが、ここまで自己肯定感爆上がりするとは思ってなかったんだ  作者: りんご飴ツイン


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第十六話 中学校時代 その十

 

 夏祭りが終わって数日後。

 家での勉強会で俺は内心頭を抱えていた。


 おかしい。

 こうして二人きりでいることに落ち着かない。


 前まではこんなのはなんてことなかった。

 幼馴染み。昔からずっと一緒で、つまりそれくらい『好き』で、気心が知れた相手だからこそこうして二人きりで過ごすことに何かあるわけもなかった。


 そのはずだった。

 なのに、これはなんだ?


『んうー? 大和、どうかした?』


『っ!? べ、別に!? どうもしてねえけど!?』


『いやいや。明らかにどうかしている反応じゃん。なによおーかわいいかわいい雪菜ちゃんに見惚れていたとかあー? まーあーこんなにかわいい私がこんなに近くにいて平常心でいられるほうがおかしいんだけどおー。本当この野郎いっつも一緒のせいかまったく動じないのよねえ学校の連中だったら興奮しすぎてぶっ倒れてもおかしくないのに!!』


『……っ』


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 改めて見ると、本当にかわいい。

 アイドル。テレビの中のトップと呼ばれる人たちと比べたって雪菜のほうがかわいいと断言できるのは身内贔屓なのか、それともそれくらい俺の中で雪菜の存在が大きくなっているのか。


 世界一かわいい。

 そんなのは前から俺の中で当たり前ではあったが、だからってこれまではこんなに意識していなかった。


 幼馴染みだから。

 だけど、それがこうも意識してしまうということは──


『だあっ!! こんなの論外だよなあ!!』


『わあっ!? なになにどうしたの!?』


『俺の馬鹿さ加減に気づいてやってられねえってだけだ!!』


『確かに大和はおばかさんだけど。ぶっちゃけ私い、テストで困ったことないからこんな風に時間かけてお勉強したことないしい☆』


『そっちじゃ……いやまあそっちもだけど。くそが! 天才様には凡人の気持ちはわからねえよ!!』


『だから私ができるまで付き合ってあげるから、さっさと天才と同じところまできましょうねえ。剣城繚乱高校? 超絶かわいい私の幼馴染みならこれくらいの高校には合格して当然よ!!』


『はいはいよろしく頼むな、雪菜様』


『ふっふん! かわいい私に感謝感激感涙して崇め奉ることね!!』


『はいはい』


 何とか誤魔化せたが、多分この時からだ。

 かわいい、と。雪菜のことをそう真正面から言えなくなるくらい意識してしまったのは。


 幼馴染み。

 だからこその『好き』。

 それだけじゃ説明できない。


 これまで気安く接していた男が実は異性として意識していたなんて雪菜からしてみたら気分のいいもんじゃねえはずだ。


 だから隠し通すしかなかったんだ。



 ーーー☆ーーー



『木刀かっけえ!! こんなの買うしかないよなっ』


『大和ぉー。修学旅行のしおり読んでないの? そーゆーの買ったらダメって書いてあるじゃん』


『馬鹿野郎!! これはロマンだろうが!!』


『亀山よく言った!! だよなこいつはロマンだよな男なら手を出さずにはいられないぜえ!!』


『ふっ。黒川。話がわかるじゃねえか』


『はっはっ。当然だぜ』


『あれえ? 二人ってそんなに仲良かったっけ? まってまってそこの馬鹿二人絶対損だってバレて無駄に怒られるリスクを背負ってでも修学旅行中に木刀買う必要なくない!?』


『『男ならここで退くわけにはいかない!!』』


『なんだこの馬鹿ども!?』


 修学旅行。

 二泊三日、クソデカい木刀を先生に見つからないよう隠蔽のために奔走したっけか。……俺もそうだが、あのスポーツ万能イケメンの黒川もテンションおかしくて、二人で色々と馬鹿やった気がする。



『なあ亀山っ。文化祭でバンドやろうぜ!!』


『何で俺を誘うんだ? 黒川ならもっといい人材を集められそうなもんだが』


『体育祭といい修学旅行といい、イベントに全力でぶつかっていけるお前となら楽しめそうだと思ったから。で、どうだ?』


『……、誘ってくれたのは嬉しいが、俺は──』


『ちなみにボーカルは月宮さんを誘う予定なんだぜ』


『何でそれを付け加えやがった?』


『え? こうすれば釣れると思ったから』


『何か勘違いしているようだが、俺と雪菜は単なる幼馴染みなんだからな?』


『はいはいそうなんだ、で? お返事は?』


『……はぁ。バンド初心者でもよければ付き合ってやるよ』


『もちろんそれでいいって! 俺も楽器とかロクに触ったことないしな!!』


『おい。メンバーにバンド経験者は?』


『そんな奴がいたらそいつを真っ先に誘っているぜ!!』


 こんな感じで文化祭に向けて奔走したり。

 黒川と雪菜が基本ハイスペックなのと、見てられないと後から参加した繭香が意外にも音楽に詳しかったおかげでどうにか形にはなったっけか。



『さあ野郎ども、楽しんでいこうぜえ!!』


『『『おおおおおおおお!!』』』


『なあ黒川。これってどういう集まりなんだ?』


『クリスマスだってのにぼっちな野郎どもの集まりだけど?』


『なんだってクリスマスに野郎が数十人も集まらないといけねえんだか』


『でもでもお、亀山もクリボッチだろ? 今のところはにしてもな。一人寂しい思いをするくらいならみんなで楽しんだほうが絶対いいだろ!』


『…………、』


『あれ? まさかもう月宮さんに手を出した感じ?』


『雪菜はただの幼馴染みだ!!』


『だったら流石にクリスマスも一緒のわけないし、今日くらい野郎だけで楽しもうぜえ!!』


『……毎年のように約束なしで雪菜が押しかけてきているとは言えねえなあ』


『ん? 何か言ったか?』


『野郎だけの暑苦しいクリスマスも悪くねえって言ったんだよ』


 そんなクリスマスもあったり。

 一応雪菜には家に帰るの遅くなると連絡しておいたんだが、家に帰ったらクリスマスプレゼントまで抱えて待っていた雪菜にぷんすか怒られたんだ。


 事情を説明したら私も誘えとか無茶言っていたっけか。野郎だけの寂しいクリスマスパーティーだってのに女を連れ込んだら場の空気がとんでもねえことになるだろうが!



 そして、中学三年への進学。

 ひとまず黒川には一年越しに勝負を挑む必要があった。


 ……黒川は根っからの良い奴だから、恨むも何もなく、俺の自己満足でしかねえんだが。

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