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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章:現実世界侵攻 編

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第75話 血のハッキングと、復讐のツルハシ

ようこそ、管理区画へ。 鮮血のヴァーミリオンは、機械化された左目で私たちをスキャンしながら、玉座から立ち上がった。 彼の背中からは、血管のように赤いケーブルが伸び、周囲の巨大なサーバーと直結している。


ヴァーミリオン……。その姿は、なんなの? 私が問うと、彼は自分の金属の手を見つめ、陶酔したように笑った。


進化だよ、コーデリア。 我々魔族の肉体は、旧式レガシーすぎた。 あの方……葛城総理から頂いたこのナノマシンこそが、我らを次の次元へと導くのだ。


彼は指を鳴らした。 すると、彼の手首から赤黒い液体が噴き出し、空中で鋭利な刃へと変形した。 それはただの血液操作ではない。液体金属と魔力が融合した、生体兵器だ。


さあ、データ収集の時間だ。貴様らの死に様を、我が軍のライブラリに記録してやろう。


ふざけんなよ、半端野郎。 低い、地を這うような声が響いた。 前に進み出たのは、イグニスだった。 彼は背中の巨大ツルハシを地面に突き立て、怒りに震える拳を握りしめていた。


進化だ? データだ? ……そんなもんのために、テメェは親方を殺したのか。


ガンテツか。……ああ、あの頑丈なだけの壁のことか。 ヴァーミリオンは冷笑した。 あいつは無駄死にだったな。私の計算では、あと3秒早く逃げていれば生存確率は……。


黙れェェェッ!! イグニスが吼えた。 彼の全身から、青白い炎が噴き上がる。


計算だの確率だの、現場じゃ関係ねえんだよ! 親方の命を……数字で語るなッ!


イグニスが地面を蹴る。 ガンテツの形見であるツルハシを振り上げ、特攻を仕掛ける。


遅い。 ヴァーミリオンの左目が赤く光る。 予測演算完了。回避行動へ移行。


ヴァーミリオンは最小限の動きでイグニスの大振りをかわし、カウンターの蹴りを放つ。 ドガッ! イグニスが吹き飛ぶが、空中で体勢を立て直し、着地する。


援護します! ランスロットとアーサーが左右から切り込む。


【営業スマイル・乱れ斬り】! 【社畜剣技・納期厳守スラッシュ】!


二人の高速剣技がヴァーミリオンを襲う。 だが、ヴァーミリオンの周囲に浮遊する赤い血液ナノマシンが自動的に壁を作り、全ての斬撃を弾いた。


【オート・ディフェンス・システム】。 貴様らの攻撃パターンは、すべて学習済みだ。


ヴァーミリオンが手をかざす。 【ブラッド・ガトリング】! 血液が硬質化し、無数の弾丸となって射出される。


うぐっ!? ガラハッドが盾で防ぐが、弾丸は着弾した瞬間にドリルとなって回転し、盾を削り取る。


貫通属性が付与されています! 私の盾でも長くは持ちません!


ククク。この力こそが現実リアルのテクノロジー。 魔法ごときで防げると思うな!


ヴァーミリオンが哄笑する。 圧倒的な性能差。 彼一人が、要塞そのものの処理能力を使って戦っているようなものだ。 このままでは、じり貧になる。


ネット! 彼のシステムに介入できないの!? 私は通信機に叫ぶ。


『無理だ! 彼の回線は、この要塞のメインフレームと直結してる! ハッキングしようとすれば、逆に僕の脳が焼かれる!』


くっ……物理で叩くしかないってこと!?


絶望的な状況。 だが、イグニスだけは諦めていなかった。 彼は血を吐きながら、再び立ち上がる。 その目は、以前のような激情の赤ではなく、静かで高温な青色に燃えていた。


……学習済み、だってな。 イグニスがツルハシを構え直す。


なら、教えてやるよ。 俺たち職人はな……昨日と同じ仕事なんてしねえんだよ。 常に改善カイゼンし、昨日の自分を超えていく。それが現場だ!


イグニスのツルハシに、異常な熱量が収束していく。 周囲のサーバーが熱暴走警告アラートを発し始める。


おい、何をする気だ? その熱量は……自爆する気か!? ヴァーミリオンが警戒する。


自爆? バカ言え。 これは溶接だ。テメェという歪んだ鉄屑を、俺の炎で溶かして、あるべき姿に戻してやる!


イグニスの背後に、亡きガンテツ親方の幻影が重なる。 彼は魔法を使っているのではない。 魂を燃料にして、限界を超えた熱を生み出しているのだ。


俺たちは……四天王じゃねえ! 株式会社ユグドラシル、国土交通省・事務次官……イグニス様だァァァッ!!


【最終奥義・解体工事スクラップ・アンド・ビルド】!!


イグニスが突っ込む。 速い。先ほどまでの比ではない。 ヴァーミリオンの予測演算がエラーを吐く。


警告。熱量測定不能。回避不能。防御障壁、展開! ヴァーミリオンが全血液を集め、極厚の盾を作る。


溶けろォォォォッ!! イグニスのツルハシが、血の盾に突き刺さる。 ジュワアアアアッ! ナノマシンが瞬時に沸騰し、蒸発していく。 機械的な防御など意味がない。それを上回る熱量で、物理的に消滅させているのだ。


な、バカな……!? 私の装甲が……データごと焼失しているだと!?


親方の痛みに比べりゃ……テメェの装甲なんて薄っぺらいんだよォォッ!!


ズドォォォォン!!


ツルハシが盾を貫通し、ヴァーミリオンの機械化された左胸を直撃した。 高熱が内部に伝わり、サイボーグの動力炉を融解させる。


ガ、アァァァァァッ!?


ヴァーミリオンが絶叫し、吹き飛ばされてメインサーバーのラックに激突した。 バリバリバリ! 彼と接続されていたケーブルが千切れ、サーバー群が誘爆を起こす。


はぁ……はぁ……。 イグニスが膝をつく。 ツルハシは高熱で溶け落ち、柄だけになっていた。 だが、彼は勝った。 親方の仇を、己の力で討ち取ったのだ。


やったか……? ランスロットが身構える。


煙の中から、ヴァーミリオンが這い出してきた。 半身が溶け、機械部品が露出している。 もはや戦う力は残っていない。


カハッ……。見事だ……現場の……馬鹿力め……。 ヴァーミリオンが自嘲気味に笑う。


私の負けだ。……だが、覚えておけ。 私はただの番犬に過ぎん。 この奥にいるのは……あの方は……もう、この世界の住人ではない。


どういう意味よ。 私が問いただそうとした瞬間、ヴァーミリオンの身体に走っていた赤いラインが、青色に変わった。 そして、彼の意思とは無関係に、口が勝手に動き出した。


『――テスト、テスト。聞こえるかね?』


その声を聞いた瞬間、私の全身が粟立った。 ヴァーミリオンの声ではない。 もっと軽く、それでいて底知れない冷たさを持った声。 葛城総理の声だ。


『やあ、コーデリア君。そして優秀な社畜諸君。 まさかヴァーミリオンまで倒すとはね。予想外のバグだよ』


総理……! あなた、どこにいるの!


『どこに? ……愚問だね。私は今、君たちの目の前にいるし、空にもいるし、地面にもいる。 私はこの世界の【管理者アドミニストレータ】になったんだ』


ヴァーミリオンの残骸が、光の粒子となって分解されていく。 総理は彼を用済みとして削除したのだ。


『さあ、上がっておいで。 世界の終わりの風景を、特等席で見せてあげよう』


部屋の奥、巨大なモニターウォールが左右に割れ、その先に光り輝く道が現れた。 その道は、空中に浮かぶ階段となって、天井のさらに上、雲の上の【天空の城】へと続いていた。


行くぞ、みんな。 イグニスが立ち上がる。 これ以上、あいつの好きにはさせねぇ。

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