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過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章:現実世界侵攻 編

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第61話 第99廃棄区画の戦いと、命がけの面接試験

手取り3000円の絶望から一夜明け。 私たちは怒りを原動力に変え、さらなる業務に邁進していた。 金がないなら、稼ぐしかない。そして稼ぐためには、このブラック国家の構造を変えるだけの人材が必要だ。


次の任務だ。


サキョウ長官から下された指令は、地下帝国の最下層、【第99廃棄区画】の調査だった。 そこは開発から取り残され、地図にも載っていないスラムの奥地。


最近、あの区画で謎の勢力が独自のコミュニティを作っているらしい。 危険分子なら排除、利用可能なら徴税せよ。


イチヨウ大臣からの「徴税」という言葉に、私はピクリと反応した。 また搾取か。だが、任務は任務だ。現場に行けば、何か金になる種が落ちているかもしれない。



【第99廃棄区画】。 そこは地下の汚水が流れ込み、巨大な発光キノコが怪しく光る陰湿な場所だった。 しかし、奥に進むにつれ、私たちは意外な光景を目にする。


なんだ、ここは? アーサーが目を丸くする。


廃材で作られた家々。しかし、それらは驚くほど精巧に組まれていた。 壊れた配管を利用した水力発電システム。 キノコの光量と土壌を完璧に管理した地下農場。 そこには、貧しいながらも高度な技術を持った街があった。


止まれ! 人間か!


屋根の上から鋭い警告が飛ぶ。 現れたのは、ボロボロの布を纏った亜人たちだった。 長い耳を持つエルフ。小柄で髭の濃いドワーフ。そして獣の耳と尻尾を持つ獣人たち。


我々は、地上を追われた亜人だ。 ここはお前たち裏国家の人間が来る場所ではない!


リーダー格と思われる、銀色の毛並みを持つ狼の獣人が、巨大な曲刀を構えて飛び降りてきた。 彼の瞳は、私たちへの明確な憎悪で濁っている。


地上では迫害され、逃げ込んだ地下でもお前たち人間に搾取される。 もうたくさんだ! 我々の楽園を荒らすなら、死んでもらう!


彼らの悲痛な叫び。 どうやら、裏国家の一部、おそらくスカーレット配下の荒っぽい連中が、過去に彼らを酷い目に合わせたらしい。 交渉の余地はない。彼らは本気で殺しに来ている。


排除しますか、係長? アーサーがネクタイを外し、剣に変える。


私は冷静に彼らの戦力を分析した。 数は約50。装備は貧弱だが、その連携と殺気は正規軍以上だ。


適当にあしらいなさい。 ただし、殺すのは禁止よ。彼らは……金の卵かもしれないから。


了解!


号令と同時に、狼の獣人が地面を蹴った。 速い。獣人特有の瞬発力で、一瞬でランスロットの懐に潜り込む。


オラァァッ! 《疾風・餓狼連撃》!


獣人の曲刀が、目にも留まらぬ速さで三連撃を放つ。 それは確実に急所を狙った、殺意の籠もった一撃だった。


遅いですね。営業回りの足ではありません。


ランスロットは紙一重でそれを回避する。 彼の能力は【超加速】。音速で動ける彼にとって、獣人の速さはスローモーションに過ぎない。


お返しです。《営業スマイル・カウンター》!


ランスロットがすれ違いざまに、剣の峰で獣人の脇腹を叩く。 ガハッ!? 獣人が吹き飛ぶが、空中で体勢を立て直し、壁を蹴って再突撃してくる。 さすがのタフネスだ。


一方、後方ではエルフの魔導師たちが詠唱を始めていた。


侵入者を焼き払え! 《精霊魔法・爆炎の矢》!


数十発の炎の矢が、私たち目掛けて降り注ぐ。 直撃すれば黒焦げは免れない火力だ。


コンプライアンス違反です。火気厳禁エリアでの発火行為は認められません。


ガラハッドが前に出る。 彼は大盾を掲げ、固有スキルを発動した。


《絶対防御・六法全書障壁》!


カカカカカンッ! 炎の矢が、見えない壁に弾かれ、虚しく霧散する。 ガラハッドの能力は【理不尽なまでの拒絶】。彼が「ダメ」と定義した攻撃は、物理法則を無視して無効化される。


なっ、魔法が通じないだと!? エルフたちが動揺する。


そこへ、アーサーが歩み出た。 彼の前には、ドワーフの戦士たちが巨大なハンマーを構えて立ちはだかる。


潰れろ人間! 《重打・岩盤砕き》!


ドワーフの怪力が唸りを上げ、ハンマーがアーサーの頭蓋骨を狙って振り下ろされる。 まともに食らえば即死の威力。 だが、アーサーは避けようともしなかった。


君たちの労働意欲は評価する。だが、残業時間が長すぎるようだ。


アーサーの剣が、光を帯びる。 彼の能力は【切断】ではない。【強制終了】だ。


《社畜剣技・定時退社スラッシュ》!


一閃。 アーサーが剣を振るった瞬間、ドワーフたちのハンマーの柄が、まるで最初から折れていたかのように切断された。 攻撃判定そのものが「時間切れ」として処理されたのだ。


な……!? 武器が……!?


武器を失い、呆然とする亜人たち。 勝負あった。 圧倒的な戦力差を見せつけられ、狼の獣人が悔しげに膝をつく。


くっ……殺せ……! 我々は屈しない……! 人間の奴隷になるくらいなら、ここで誇り高く死ぬ!


彼らは死を覚悟していた。 その悲壮な覚悟に対し、私はアタッシュケースを開き、一枚の書類を取り出した。


殺す? とんでもない。


私は眼鏡の位置を直し、彼らに歩み寄った。 私の目は、彼らの敵意ではなく、彼らの背景にある技術に釘付けになっていた。


あの家、釘を一本も使わずに組まれている。ドワーフの建築技術ね。 あの畑、地下なのに野菜が育ってる。エルフの農業魔法による環境制御。 そして獣人たちの足の速さと連携。あれは物流と警備に最適だ。


私の【元PMの脳】が、激しく反応していた。 彼らは危険分子ではない。 裏国家が使いこなせていない、未発掘の【高度専門職スペシャリスト】の集団だ。


あなたたち……いいスキルを持っていますね?


は……? 狼の獣人がポカンとする。


弊社ウチで働きませんか? ……もちろん、【正規雇用】で。


な、何を言っている……?


私があなたたちの【代理人エージェント】になります。 不当な差別も、搾取もさせません。その代わり、あなたたちの技術を貸してください。


私はニヤリと笑った。 これは慈悲でも人助けでもない。 私の出世と、待遇改善のための【ヘッドハンティング】だ。


提示条件は以下の通りです。 一、裏国家での居住権の保証。 二、正規の身分証の発行。 三、そして……人間と同等の給与体系。


給与……だと? エルフの長老が震える声で尋ねる。


ええ。あなたたちの作る野菜、そして建築技術。 それは今の地下帝国に欠けているリソースです。 私が財務省と交渉し、正当な対価を勝ち取ってみせます。


彼らは顔を見合わせた。 信じられない、という顔だ。だが、その目には微かな希望の光が宿り始めていた。


もし嘘なら、その時は私の寝首を掻きなさい。 私は逃げも隠れもしません。


私は名刺を取り出し、狼の獣人――リーダーのボルグに手渡した。


株式会社ユグドラシル、経理課係長のコーデリアです。 ……さあ、どうしますか? 誇り高く飢え死にするか、泥にまみれても豊かに暮らすか。


ボルグは名刺を受け取り、しばらく震えていたが、やがて大きく息を吐き、私の前に頭を下げた。


……分かった。あんたの言葉、信じてみる。 俺たちの命、あんたに預ける。……ボス(雇い主)。


交渉成立ね。


私は心の中でガッツポーズをした。 これで、地下帝国の食糧事情とインフラ事情が一気に改善する。 そして何より、私の手駒(部下)が一気に50名増えたのだ。


さあ、明日は忙しくなるわよ。 まずは財務省に乗り込んで、あなたたちの【人件費】をもぎ取ってこなくちゃいけないから。

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