勝敗は決まり
「うぅん……?」
辰真が目を覚ますと、そこは寂れた廃墟の中だった。周囲を見渡すと、操姫刃と楓加が少し離れた所で、倒れていた。
(ここはどこだ? ライ……は、そうか。これが、新しい理の世界って事か……?)
ゆっくりと身体を起こすと、辰真は操姫刃達の傍に向かう。操姫刃は目を覚ましそうな気配がしたため、楓加の肩に触れると、小さく息を漏らし、彼女は目を覚ました。
「あれ? たっくん……?」
「浮風さん! 初架さんも! 大丈夫ですか?」
「問題ない。それより、お前はどうなんだ?」
「俺の方も、問題ありません。後は、伊鈴ノ宮先輩達ですね」
周囲に自分達以外の気配がない事を確認し、場所を移動する事にした三人は、廃墟からまずは出る事にした。
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同時刻。
件の志修那達は、力が弱まった『革命の奏者』の者達と再び戦闘に入っていた。理が新生した事で、状況は大きく一変していた。
「くっ! 何てこと! 力が弱まっていやがるわ!」
矢成が、悔しさを滲ませながら叫ぶ。その傍にいる諒詠もまた、力が弱まった事に動揺を隠せずにいた。そんな彼らに対し、等依がいつも通りの口調で、告げた。
「新生した世界っスからね~。もう勝ち目はないッスよ?」
「くっ! 黙りな! 新生したところで! 理……が……! まさか⁉」
「そうっスよ? 理ごと、新生したんス。だから、諦めな」
矢成達が壊したかった理が、既に上書きされた事実に、彼女は脱力した。それを慌てて、諒詠が支えに行くが、二人含めた『革命の奏者』達は、トクタイによって次々と捕らえられていく。
なお、空飛はすでに術式から離れて、志修那の近くで座って休んでいた。もっとも、志修那は渋い顔をしているが。
そんな二人を、鬼神と五奇が守っていた。
どう考えても劣勢な矢成と諒詠は、ようやく敗北を認め、降伏した。
これにて、トクタイと『革命の奏者』との戦いが、ようやく終焉したのだった。
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同時刻。
「ちきしょう! 死ねると思ったのに! 嘘つき!」
榛登は、やはり死ねなかった。售月とかいう者の怨念に乗ったはいいが、理に触れる前に先を越され、怨念は霧散していき残された彼は、悔しさで涙を流す。
だが、新生した世界において……良い事もあった。
それは、『爆炎の妖魔』の力を喪失したこと。
(まぁ、これで少しは楽になれるなら……いいか)
廃墟の中で寝転ぶと、目を閉じる。そこへ、足音が響いてきて、目をを開ければ……疲れ果てた顔をした青年だった。
彼は、榛登の近くによると、静かに尋ねた。
「失敗したのか……お前も。ふっ、感じるぞ。死にたいという念をな? 我が名は李殺道。新生した世界では、無価値な存在だ」
「そう。それで? 殺してくれるのか?」
「いや、その力も残っていない。だが、目的が同じなら……あるいは」
二人の青年は、新生した世界で出会い、そして――死に場所を求めて、共に旅する事を決意するのだった。




