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勝敗は決まり

「うぅん……?」


 辰真(たつま)が目を覚ますと、そこは寂れた廃墟の中だった。周囲を見渡すと、操姫刃(ときは)楓加(ふうか)が少し離れた所で、倒れていた。


(ここはどこだ? ライ……は、そうか。これが、新しい(ことわり)の世界って事か……?)


 ゆっくりと身体を起こすと、辰真(たつま)操姫刃(ときは)達の傍に向かう。操姫刃(ときは)は目を覚ましそうな気配がしたため、楓加(ふうか)の肩に触れると、小さく息を漏らし、彼女は目を覚ました。


「あれ? たっくん……?」


浮風(うかせ)さん! 初架(はつか)さんも! 大丈夫ですか?」


「問題ない。それより、お前はどうなんだ?」


「俺の方も、問題ありません。後は、伊鈴ノ宮(いすずのみや)先輩達ですね」


 周囲に自分達以外の気配がない事を確認し、場所を移動する事にした三人は、廃墟からまずは出る事にした。


 ****


 同時刻。

 (くだん)志修那(しずな)達は、力が弱まった『革命の奏者』の者達と再び戦闘に入っていた。(ことわり)が新生した事で、状況は大きく一変していた。


「くっ! 何てこと! 力が弱まっていやがるわ!」


 矢成(やなり)が、悔しさを滲ませながら叫ぶ。その傍にいる諒詠(りょうえい)もまた、力が弱まった事に動揺を隠せずにいた。そんな彼らに対し、等依(とうい)がいつも通りの口調で、告げた。


「新生した世界っスからね~。もう勝ち目はないッスよ?」


「くっ! 黙りな! 新生したところで! (ことわり)……が……! まさか⁉」


「そうっスよ? (ことわり)ごと、新生したんス。だから、諦めな」


 矢成(やなり)達が壊したかった(ことわり)が、既に上書きされた事実に、彼女は脱力した。それを慌てて、諒詠(りょうえい)が支えに行くが、二人含めた『革命の奏者』達は、トクタイによって次々と捕らえられていく。

 なお、空飛(あきひ)はすでに術式から離れて、志修那(しずな)の近くで座って休んでいた。もっとも、志修那(しずな)は渋い顔をしているが。

 そんな二人を、鬼神(おにがみ)五奇(いつき)が守っていた。


 どう考えても劣勢な矢成(やなり)諒詠(りょうえい)は、ようやく敗北を認め、降伏した。


 これにて、トクタイと『革命の奏者』との戦いが、ようやく終焉したのだった。


 ****


 同時刻。


「ちきしょう! 死ねると思ったのに! 嘘つき!」


 榛登(はると)は、やはり死ねなかった。售月(しゅうげつ)とかいう者の怨念に乗ったはいいが、(ことわり)に触れる前に先を越され、怨念は霧散していき残された彼は、悔しさで涙を流す。

 だが、新生した世界において……良い事もあった。

 それは、『爆炎の妖魔』の力を喪失したこと。


(まぁ、これで少しは楽になれるなら……いいか)


 廃墟の中で寝転ぶと、目を閉じる。そこへ、足音が響いてきて、目をを開ければ……疲れ果てた顔をした青年だった。

 彼は、榛登(はると)の近くによると、静かに尋ねた。


「失敗したのか……お前も。ふっ、感じるぞ。死にたいという念をな? 我が名は李殺道(りつーうぇい)。新生した世界では、無価値な存在だ」


「そう。それで? 殺してくれるのか?」


「いや、その力も残っていない。だが、目的が()()なら……あるいは」


 二人の青年は、新生した世界で出会い、そして――死に場所を求めて、共に旅する事を決意するのだった。

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