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約束は果たされ、再会は叶い……

 機構が動き出し、(ことわり)に彼が繋がってからどれくらい経っただろうか。

 辰真(たつま)は、自分がすべきことのために動き出した。

 それは、蒼主院公謐(そうじゅいんきみひつ)()()()()。そのために、走り出す。

 来た道を戻ろうとするが、歪んだ空間内の中では道がわからない。


(こういう時こそ、ライからもらった札で!)


 ライと別れる前、手渡された木札を取り出す。彼曰く、この木札が蒼主院公謐(そうじゅいんきみひつ)の元へ導いてくれるとの事だった。視線を向ければ、木札が淡白く光り出し、線が現れた。どこかと繋がっているような線に、希望を託して進む。


(お前の想いに、俺は報いるんだ!)


 ****

 

 同時刻。

 操姫刃(ときは)楓加(ふうか)の二人は、妖魔王になり果てた男の前にいた。威圧感に緊張し、冷や汗が二人の背中を伝う。

 ようやく二人に視線を向けた妖魔王は、静かに尋ねて来た。


〔小娘二匹が、何故ここに居る?〕


 威圧感のある野太い声と、興味が無いと言わんばかりの冷たい視線。だが、楓加(ふうか)は負けじと、勇気を振り絞って声を発する。


「あなたに会いたがっている人がいるから、ウチらは伝えに来たの」


〔興味等無い。失せよ〕


雪原(ゆきわら)(むすめ)。そう名乗る者に心当たりはないか?」


 操姫刃(ときは)が尋ねると、妖魔王の瞳が揺らぐ。どうやら心当たりはあるようだ。楓加(ふうか)がトドメを刺すかのように、雪原(ゆきわら)(むすめ)から託された想いを言葉にして、彼に伝える。


「約束の場所で待っていると、言っていたの。あなたは会いたくないん? 好きだったんでしょ?」


〔異形と成り果てたこんな男が、今更会わせる顔等どこにあるという?〕


「どんな姿でも、好きな人は好きやと思うよ? だって、ウチがそうだから! 答えてあげてよ! 想い合っていたのだから!!」


 妖魔王と名乗って来た男の姿が揺らいでいく。二人が驚いていると、背後から空間が開き、女性の姿が現れた。

 雪原(ゆきわら)(むすめ)を名乗って来た女性だ。

 彼女は、彼を包容し、涙を流して言葉を紡ぐ。今までの想いを込めて。


「ようやく、繋がりましたね、縁が。お二人のおかげです」


〔は……な? (はな)、なのか?〕


「左様でございます、零壱(れいいち)様。お会いしとうございました」


 彼女の涙が、彼の首元に落ちたと同時に、姿が変わって行く。異形であったはずの姿は、青年の人の形へ戻って行った。


「楔が……役目から解かれた、のか?」


 戸惑う零壱(れいいち)(はな)が接吻をした。それをきっかけに、二人の身体が透けて行く。


「そうか。解放されたから、あなた方はこれから本当の意味で眠りにつくのだな」


 操姫刃(ときは)が口を開けば、(はな)が微笑み零壱もつられたように笑う。穏やかな笑みを浮かべ、互いを見つめ合いながら二人は消えて行った。

 それを見届けると、操姫刃(ときは)楓加(ふうか)がいる空間が崩れ始めた――

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