巡り巡って行く戦い
「なんだ? 空間が?」
操姫刃が珍しく静かながら驚く。走っていた空間が歪み、思わずこける楓加と操姫刃の視界が歪む。
「何があったんかな……?」
「わからん。だが、トクタイと『革命の奏者』との間で、何かが起こっている可能性は高いな」
「みんな、大丈夫かな?」
「楓加。おれ達はおれ達の出来る事をするしかない」
「うん、そうだね」
二人の少女達は何もかもが歪んでいる感覚に襲われながらも、なんとか進む。しばらくして、空間の歪みが解けた。ようやくまともに歩けるようになった彼女達の前に――彼は現れた。
当世の妖魔王。
元の名を衛刹零壱……現在"始まりは嘆きから"を名乗る彼が。
彼は視線を二人に向ける事なく、虚空を見つめていた。
人間から妖魔となり、妖魔の王へと至った者。
そして……雪原の娘を名乗る女性と恋仲であった男性。
ようやく目的の人物に出会えた操姫刃と楓加だが、その威圧感と妖気に思わず息を飲む。
――禍々しいオーラに包まれた彼に畏怖する。
(どうする? 声をかけるにしろ、敵対する意思がないとどう証明する?)
操姫刃は楓加の方へ視線を向ける。彼女もまた、悩んでいる様子であり、二人は顔を見合わせた。どう動くのが正解なのか? そう思い悩んでいると、突如彼の身体が歪み始めた。
「なっ!?」
「ど、どういう事なの?」
動揺しながら、二人は覚悟を決め……妖魔王の彼の元へ走り出した。
救うために……。
****
同刻。
『革命の奏者』、矢成と諒詠二人からの攻撃に対し、圧されていた。たった二人でありながら、優位に立っているのには理由がある。
神霊的存在を無理矢理利用しての、全ての能力の強化をしているからだ。
それもかなりの数の神霊をだ。
それにより、二人でありながら……その祓力はとてつもなく、高くなっている。
「クソが! 百戦獄鬼! 覚醒して飛ばすぞ!」
鬼神が自身の鬼を覚醒させた。彼女の能力は鬼憑き……その身に鬼を宿す一族の者だ。
強大であればあるほど、その制御が難しい。
だが、彼女はそれを制御しきった。
故の覚醒。
「行くぜ!? 真奥義! 爆裂業火獄炎斬!」
巨大な炎の塊が、神霊達と『革命の奏者』である二人との繋がりの部分を、断ち斬った。
それでも、ラグによりまだ二人の祓力は高いまま。
――時間稼ぎにしろ、儀式に介入している空飛の身体と精神が持つかどうか? 時間の問題だ。
皆の限界が……近づいている。
世界の命運が、変わるまで……後。




