それぞれ動き出して……。
辰真達が動き出した頃。
操姫刃達もまた、動き出していた。
気配だけを頼りに、妖魔王の元へ走る。禍々しい妖気に近づく程、鳥肌が立ち、冷や汗が背中を伝う。
それでも、操姫刃と楓加は走り続ける。
何としてでも、託された想いを叶えたいからだ――。
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一方その頃。
『革命の奏者』の襲撃を受けている志修那達は、他のトクタイメンバーの援護により、どうにかその場を維持していた。
「ちょおおお!! やばいって!! 無理だって!! 破壊されるの、時間の問題じゃんんんん!!」
叫ぶ彼に等依が優しく声をかける。
「落ち着いた落ち着いた~。まだいけるっスよ、多分」
「多分んんんんんん!? 何さ、多分てぇぇぇぇぇ!?」
悲鳴じみた泣き言とは裏腹に、やる事はやっている志修那を等依は感心しながら見ていた。
その間にも、矢成と諒詠の猛攻は止まらない。
結界を守るために、動くのは五奇と鬼神だ。
二対の武器を振るう五奇を鬼神の鬼、百戦獄鬼が援護する。二人が先を行くのを、ルッツが更なる援護を行う。紙札を出し、簡易式神を無数に出して、『革命の奏者』達を翻弄する。
だが……それも時間稼ぎにしかならない。
故に――託された想いに早急に答えなければならない。
世界を救うために。
今度こそ――。
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「それじゃあ……やるけど、ライ。お前は……それでいいのか?」
辰真が尋ねれば、彼は静かに頷いた。その覚悟に応えるべく、辰真も覚悟を決めた。ライの指示通りに、術式を展開させる。
機構が動き出し、世界が回る。
――妖魔王と蒼主院公謐、そして雪原の娘をこれより、この空間から解放するのだ。
そして……新たな理の守護者として、ライもとい月詠の尊がなる。
つまりは、代変わりだ。
それで何が解決するのか?
わかるのは実行に移してからとなる。
「術式……起動。理に、接続開始!」
展開された術式により、彼の身体が淡く光り輝き出す。そして、姿を変えて行く。身体は大きくなり、だけれど神聖さをより増して……人型の妖魔でもない、神の姿へと覚醒する。
そして、理に接続した彼により……止まっていた世界の未来は進み始める。
回り始めた機構は、どんどんその速度を上げて行き、同時に彼と融合していく。
茫然とする辰真の脳内に、声が響いた。
――タツマ。お前と共に過ごした絆……この信頼が糧となり、我が力となる。改めて、出会ってくれてありがとう……。
その言葉を聞いたのと、異空間が変異し始めたのは同時で、辰真は気づけば涙を流していた。
悟っていたのだ。
もう、彼と相棒にはなれないのだと。
決着まで後……。




