介入
その頃。
「儀式は順調に進んでいます」
部下からの報告を受けて『革命の奏者』の代表である彼女はほくそ笑む。
(計画完遂まであと少し。ふふふ……)
彼女……矢成が確信した瞬間だった。突然、異音が鳴り響く。
「何事!?」
声を荒げれば、彼女の部下の一人が叫ぶ。
「大変です! 半妖を使用した儀式が! 何者かに介入され、乗っ取られました! このままでは、儀式が遂行できません!」
「介入? トクタイか! ちっ、うざいわね! 皆はそのまま! 諒詠、行くわよ!」
「承知しました」
側近である彼を連れて、矢成が儀式の場から出て行く。術式の中心には、椅子に座った李殺道が眠るように目を閉じている。
一瞬そちらを見ると、彼女は敵の元へ向かうのだった。
****
「介入に成功したけどさぁ……これからの事、本当に上手く行くわけ?」
志修那の不安げな声が響く。今、まさに空飛が『革命の奏者』の儀式を防いでいる所だ。
彼は床に胡坐をかいて目をつぶりながら、等依の指示で志修那が生成した術式に囲まれている状態だ。
「等依さん、これから敵が来ると思うが……どう迎え撃つ?」
操姫刃が尋ねれば、等依が顎に手をやりながら答えた。その声色は真剣そのものだった。
「おそらく、敵はまっすぐこっちに来る。オレちゃんは空飛ちゃんと志修那ちゃんを結界で守りつつ、援軍待ちってところ?」
そこで言葉を一端区切ると、彼は辰真の方へ視線を向けた。
「その間に、辰真ちゃん達は為すべきことを為す! っところ? 操姫刃ちゃんと楓加ちゃんは雪原の娘さんの願いのために。辰真ちゃんは申し訳ないけどうちの先祖のために。それぞれよろしくっス~」
「ねぇ!? 僕は不安しかないんだけど!? 結界ってどれくらい持つわけ!? それに援軍来る保証あるぅ!?」
声高に不安を叫ぶ志修那に対し、等依がはっきりと宣言した。
「来る。それが……トクタイの使命であるかぎり、ね?」
****
黒樹市内にて。
「門への接続、完了しました! また、内部にて現蒼主院当主のものと思われる術式と、先行した夜明空飛の気配に行方不明である件のEチームの気配も観測いたしました!」
部下からの報告を受けて、ルッツが静かに頷く。その横で、五奇と鬼神が戦闘体勢に入っていた。
それを確認した上で、ルッツが指示を出す。
「それじゃ『革命の奏者』との決着をつけようか。総員、門の中へ!」
その言葉を合図に、次々と門の中へと突入して行く。今回、トクタイは総力をあげての作戦展開を行う事にしたのだ。
なにせ――世界の命運がかかっているのだから。




