今こそ
「作戦会議って言っても……どうするんですか?」
尋ねる辰真に対し、等依が微笑みながら返す。
「そうっスね~。……辰真ちゃんは、作戦会議の前に、向き合うべき相手がいるっぽいスね?」
そう言うと、等依が視線を移す。そこにいたのは……艶やかな黒髪をした青年、月詠の尊だった。
「タツマ……」
声をかけられても、辰真は視線を彷徨わせるだけで口を開こうとしない。その光景を見ていた操姫刃が不思議そうに訊く。
「誰だ? ……いや、この気配は……ライか? その姿は一体?」
「ワタシは……ライであり、そして……月詠の尊と呼ばれる存在だ……。真名を呼ばれたことで……本来の姿に、あるべき姿に戻ったんだ」
「え……? あるべき姿ってなに!? どゆこと!?」
志修那が困惑しながら、声を張りあげ彼に説明を求める。
だが……。
「すまない。説明をしている時間が……もうないんだ」
その言葉を聴いた辰真が、伏せていた顔をあげる。
「それ……は? 妖魔殺しの儀式、が、あるから……か?」
「……そうだ」
それを聞いて、辰真の表情が強張る。しばらく黙り込んだ後、彼はゆっくりと呼吸を繰り返し……そして覚悟を決めた視線を向けた。
相棒である彼に。
「話を、しよう。二人で……ライ」
「タツマ……」
「そいじゃ~! 二人は少し離れたところで話しをしていてもらうとして! 残りでちゃちゃっと作戦会議しちゃうっスかー? いうて、オレちゃん半分、部外者っスけどね!」
「あぁぁぁぁ!! た、確かに等依さんアンタ、トクタイ……じゃない!?」
志修那の指摘に、等依が頬を搔きながら、口を開く。
「まぁ、一応元トクタイっスけどねー? まぁそれもおいといて! 急ぎめで、どーするっスかね?」
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少し離れた所で、相対する辰真と彼。
「それで……その、ライって呼んで……いいのか?」
「……あぁ、構わない……」
少し沈黙した後、ゆっくりと辰真が口を開く。
「なぁ……なんで、俺と契約をしたんだ?」
問われた彼は、はっきりと言い切った。
「タツマ、君だからだ」
「俺……だから?」
「お前は、ワタシを畏れなかった。それでいて、ワタシの存在を赦してくれた。だから、契約をしたんだ」
その言葉を聞いて、辰真がゆっくりと深呼吸をして――呟いた。
「俺に、望むものはなんだ?」
一瞬、目を見開く彼。
その上で、彼は真剣な眼差しと声色で辰真に告げた。
「世界を……理を……全てを救ってほしい。何者でもなく、タツマ。お前に」
ここに来て、ようやく辰真の瞳に光が宿った。
今まで何も為して来なかった自分を――変えるために。




