悲しみを知る者達
「ルッツ……さん? たっくんとしずなんは知っているみたいだけど?」
楓加が尋ねれば、志修那が横にいる等依を気にしつつ話し始めた。
しばらくして、説明を聞き終えた操姫刃と楓加は、困った表情を浮かべる。
「まぁそうなるっスよね~。そっちの二人からすると、誰? って感じっしょ? ま、それはオレちゃんにも言えるけどにゃ~?」
等依の声が響く。その最中だった。
地面が……揺れ出した。
『いよいよ、始まったね。妖魔殺しの儀式が』
公謐の悲しげな声に、辰真が尋ねる。
「妖魔殺しの儀式って……なんですか?」
「妖魔殺しの儀式とは、文字通りこの世から全ての妖魔を殺す儀式でございます。理を壊すと言っても良いでしょう」
雪原の娘が静かに告げた。
突如として、大声を上げたのは志修那だった。
「はぁぁぁ!? 全ての妖魔って……! なに考えてるのさ!?」
「まぁ……妖魔憎しってとこなんだろーけど……それはそれとして、オレちゃんは困るっスね~。いやーまさか、当主権限で狭間に入ってみたらとんでもないことに巻き込まれたっつーか?」
等依の言葉で、ふと操姫刃が尋ねる。
「貴方は自分からここに来たということか? ……つまり、蒼主院はここの存在を認知していた?」
「鋭いっスね~! 操姫刃ちゃんだっけ? だいせーかい!」
あっさりと言い切る彼に、驚く四人。
だが、等依は平然と話を続ける。
「ここの存在を知ってたのは、まぁ今は置いといて~。それよか、妖魔殺しの儀式をなんとかしないとじゃね?」
「た、確かにそうですけどもぉ! 理を壊しちゃうほどのことでしょ!? 僕達にどうしろって言うのさぁ~!!」
そんな志修那の言葉を否定したのは、雪原の娘だった。
「皆様だからこそ……可能だと思います。なぜなら……何かを失う悲しみを知っていらっしゃるのだから」
その言葉に自然と辰真、志修那、操姫刃、楓加……四人の視線が交わる。
「悲しみを……知っている……」
辰真が小さく呟く。その声に反応したのは、楓加だった。
「ウチらさ、まだ出会ってそんなに経ってないチームだけど……なんとなくね? 思ってたんよ。あぁ、この二人はウチらの事受け入れてくれる気がするって。ね? トッキー?」
彼女の言葉に操姫刃が静かに頷く。その様子を見て、志修那が今度は口を開いた。
「ま、まぁ確かに。そう言われると……そうかも、だけど……。それとこれと! どう繋がるのさ?」
もっともな疑問に答えたのは、以外にも等依だった。彼は今までの口調とは違う年相応……いや当主相応の口調で語りかけた。
「コホン、あえてこの口調で言わせてもらおう。私も、失う悲しみを知った身ではある。だが、君達だからこそ可能な事があるのではないか? そう思えてならないのだ」
一端言葉を区切ると、彼はいつもの口調に戻る。
「つっーわけなんで! 作戦会議といきますかねーっと!」




