思わぬ遭遇
その頃。
李殺道との対峙を終えた志修那は、ようやく動けるようになったため場所を移動することにした。
「……とにかく……誰かしらとは合流したいんだけ、ど……?」
ふと遠目から視界に入ったのは、若い銀髪に赤と青のメッシュをした白い狩衣の青年だった。
雰囲気からして生きた人間だというのは理解したし、気配からして……蒼主院家の者であることも認識した。
――だからこそ、どうしたものかと悩む志修那に気づいたらしい……彼が声をかけてきた。
「んー? その隊服はトクタイっスね~? なつかし! じゃあなくて……なんでここにいるんスかー?」
見た目とは裏腹な口調に思わず言葉が出てこない志修那に対し、彼は名乗った。
「オレちゃんは、蒼主院等依っス! 現蒼主院家の当主っスけど……あんま気にしないでい~っスよ! よっろ~!」
「……は、はぁ!? 当主ぅぅぅぅ!? そんな人がなんでこんなところにいるわけぇぇ!?」
大声で叫びながら尋ねる志修那に等依が微笑みながら答えた。
「そりゃあ……当然、知るためっスよ?」
「知る? って……なにを?」
「うーん、簡単に言うなら~……大兄上のしくじりをってとこっスかね~」
「……え? ちょお!? 僕達を助けに来たとかじゃないわけぇぇ!?」
志修那の叫び声に少し驚いた表情をしながら、等依が尋ねる。
「助けって……? そもそも、ここに立ち入れるのは蒼主院家の関係者だけなはずっスけど……君はどこから来たんスか?」
ここに来てようやく等依に名前を名乗っていなかったことに気づいた志修那は、咳払いをすると少し抑え気味に口を開く。
「僕は伊鈴ノ宮志修那と言いましてね! トクタイ隊員ですけど今迷子なの! というか、変な門に吸い込まれて気づいたらここにいたしで大変なんですけど!?」
「あー? なるほど……。ここは時空が歪んでるっスからね~。まぁそういうこともあるかー」
「……はい?」
意味深なことを告げられ、志修那は大げさすぎるほどの動きで膝を地面につき、大きくため息を吐く。
その様子を見て、等依は何か考える素振りをすると静かに声を発した。
「火雀応鬼、氷鶫轟鬼。ちょっち出てきて調べてちょー」
彼の呼び声に応え、二体の鬼が現れた。目を見開く志修那に等依が優しい声色で語りかけた。
「まぁ一応そういう家系なんでね? つーわけで、よっろ~」
指示を受け、二体の鬼達が別々に走り出していく。
「あ、あのぉ~?」
「あー志修那ちゃん? 今、オレちゃんと君の状況を確認中みたいな? その、もろもろ調べてきてもらうっスから、ちょい待ってねーん」
等依のペースにすっかり飲まれた志修那は、もはや何も言葉がでなかったのだった。




