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再会と常世

「……あのさぁ……」


 志修那(しずな)はやや半泣きになりながら、横で歩く()に声をかける。


「なんで辰真(たつま)と一緒じゃないの君ぃ!? ねぇライ!?」


 呼ばれて、ライは静かに答える。


【そうだな、タツマとの契約自体は切れていないようだが……随分とここに()()()()()()()()()()? だからだろう】


「それ答えになってないんですけどぉ!?」


 そんな会話をしていた時だった。一陣の風が吹く。


「うわぁぁぁぁ!? な、なになになになに!?」


 叫ぶ志修那(しずな)とライの前に現れたのは、赤い長髪に黒い中華風の装束に身を包んだ青年だった。


「お前は! 李殺道(りつーうぇい)!? なっ! えぇ!?」


 困惑する志修那とライを交互に見つめながら、李殺道(りつーうぇい)が口を開く。


「全ての妖魔が今宵死ぬだろう。だから問おう。そこの男、()()()()()()?」


 自分が問われているのだと気づいた志修那(しずな)の表情が暗くなる。


「ぼ、僕……は……」


「お前からはかすかに、妖魔の気配がする。しかも人為的な、な?」


 そう追求され、志修那(しずな)がゆっくりと答える。


「僕の、中には……人造式神がいる。別人格として、活動している……よ。だけど……それだったらなんだって言うのさ?」


「……そうだな、戦う理由の一つが増えた。とだけ言おうか」


 李殺道(りつーうぇい)の目つきが鋭くなり、殺気を放つ。


「……結局そうなるの、ね……。はぁぁ……嫌だなぁ。僕は前線向きじゃないんだよ……」


 そう愚痴りながら志修那(しずな)は、ライに声をかける。


辰真(たつま)と合流しに行きなよ。僕は……」


 震える声で、志修那(しずな)は覚悟を決めたように声を発した。


「……朱納(しゅな)……」


 瞳の色が変わる。雰囲気も……先程までの志修那(しずな)ではなくなる。その手に握られているのは、ハルバード。不本意ながらも、志修那(しずな)朱納(しゅな)を認識した瞬間だった。


「さぁ、やろうか?」


 静かに告げる朱納(しゅな)に対し、李殺道(りつーうぇい)がバタフライソードをどこからか取り出し、構える。


 二人の戦いが始まる中、ライは迷った末辰真(たつま)を探すため走り出した。


 ****


「ここ、どこなん? ねぇ、雪原(ゆきわら)(むすめ)さん? で、ほんとにいいの?」


 前を歩く十二単の綺麗な黒髪をした女性、雪原(ゆきわら)(むすめ)の後ろを操姫刃(ときは)楓加(ふうか)が歩く。

 雪原(ゆきわら)(むすめ)は静かな口調で楓加(ふうか)の質問に答える。


「ここは、常世と現世の狭間の世界でございます。死者と生者が交わることのできる唯一の世界とも言えるでしょう」


「なるほど。それで死者である貴女とこうして話せているというわけか」


 操姫刃(ときは)が納得したように呟けば、雪原(ゆきわら)(むすめ)がゆっくりと頷いた。

 彼女こそが、二人に助けを求めた声の主だ。


「なぁ、おれ達で本当にいいのか? おれ達は……()()()だが……」


 操姫刃(ときは)の言葉に、雪原(ゆきわら)(むすめ)が言う。


「この世に、そもそも完成された人間などいるのでしょうか? 皆、なにかしらの()()()()()()()?」


 彼女の言葉に、操姫刃(ときは)楓加(ふうか)が思わず目を合わせる。それに振り返ることなく、雪原(ゆきわら)(むすめ)は告げる。


「貴女達に助けを求めたのは……人の不完全さを知っているからこそ、あの方を救えるのではないかと思ったからです。どうか――お救い下さい」


 祈るような声に、操姫刃(ときは)楓加(ふうか)は静かに……頷いた。

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