再会と常世
「……あのさぁ……」
志修那はやや半泣きになりながら、横で歩く彼に声をかける。
「なんで辰真と一緒じゃないの君ぃ!? ねぇライ!?」
呼ばれて、ライは静かに答える。
【そうだな、タツマとの契約自体は切れていないようだが……随分とここにやられているようでな? だからだろう】
「それ答えになってないんですけどぉ!?」
そんな会話をしていた時だった。一陣の風が吹く。
「うわぁぁぁぁ!? な、なになになになに!?」
叫ぶ志修那とライの前に現れたのは、赤い長髪に黒い中華風の装束に身を包んだ青年だった。
「お前は! 李殺道!? なっ! えぇ!?」
困惑する志修那とライを交互に見つめながら、李殺道が口を開く。
「全ての妖魔が今宵死ぬだろう。だから問おう。そこの男、お前はなんだ?」
自分が問われているのだと気づいた志修那の表情が暗くなる。
「ぼ、僕……は……」
「お前からはかすかに、妖魔の気配がする。しかも人為的な、な?」
そう追求され、志修那がゆっくりと答える。
「僕の、中には……人造式神がいる。別人格として、活動している……よ。だけど……それだったらなんだって言うのさ?」
「……そうだな、戦う理由の一つが増えた。とだけ言おうか」
李殺道の目つきが鋭くなり、殺気を放つ。
「……結局そうなるの、ね……。はぁぁ……嫌だなぁ。僕は前線向きじゃないんだよ……」
そう愚痴りながら志修那は、ライに声をかける。
「辰真と合流しに行きなよ。僕は……」
震える声で、志修那は覚悟を決めたように声を発した。
「……朱納……」
瞳の色が変わる。雰囲気も……先程までの志修那ではなくなる。その手に握られているのは、ハルバード。不本意ながらも、志修那が朱納を認識した瞬間だった。
「さぁ、やろうか?」
静かに告げる朱納に対し、李殺道がバタフライソードをどこからか取り出し、構える。
二人の戦いが始まる中、ライは迷った末辰真を探すため走り出した。
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「ここ、どこなん? ねぇ、雪原の娘さん? で、ほんとにいいの?」
前を歩く十二単の綺麗な黒髪をした女性、雪原の娘の後ろを操姫刃と楓加が歩く。
雪原の娘は静かな口調で楓加の質問に答える。
「ここは、常世と現世の狭間の世界でございます。死者と生者が交わることのできる唯一の世界とも言えるでしょう」
「なるほど。それで死者である貴女とこうして話せているというわけか」
操姫刃が納得したように呟けば、雪原の娘がゆっくりと頷いた。
彼女こそが、二人に助けを求めた声の主だ。
「なぁ、おれ達で本当にいいのか? おれ達は……失敗作だが……」
操姫刃の言葉に、雪原の娘が言う。
「この世に、そもそも完成された人間などいるのでしょうか? 皆、なにかしらの失敗作なのでは?」
彼女の言葉に、操姫刃と楓加が思わず目を合わせる。それに振り返ることなく、雪原の娘は告げる。
「貴女達に助けを求めたのは……人の不完全さを知っているからこそ、あの方を救えるのではないかと思ったからです。どうか――お救い下さい」
祈るような声に、操姫刃と楓加は静かに……頷いた。




