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思わぬ出会い

 動揺する辰真(たつま)の前にライが立つ――守るように。


「……ライ?」


【タツマ、この妖魔……ただの妖魔ではない。人為的なものを感じる! 何が仕込まれているか……わからない!】


 ライの言葉に、辰真(たつま)は刀と拳銃を構え直す。そこへ遅れて麗奈(れいな)雅姫(まさき)志修那(しずな)がやってきた。


「うっわ!? なにこれ!? (よど)みえっぐいじゃないかぁあああ!?」


 叫ぶ志修那(しずな)の背後から、彼の人造式神である武律(ぶりつ)が飛び上がり倒れている妖魔の前へと出る。


 ライと武律(ぶりつ)、似て非なる存在達が妖魔を挟む。倒れている妖魔はというと、(よどみ)みをなおも噴出し続けている。


 その澱みはどす黒く、空気が重く感じる。そんな中、またしても門が突如として現れた。


「またぁ!? どうなってるのさぁぁ!?」


 志修那(しずな)が叫ぶのと、門が開くのは同時だった。途端、風が強く吹く。

 抵抗しようにも、勢いが強くて身体が持っていかれる。気づいた時には、数名が門の中へと吸い込まれていた。


 ****


「う、うぅん……?」


 目を覚ましたと同時に、自分が地面に倒れていることに気づき慌てて辰真(たつま)は身体を起こす。周囲を見渡し……ライの気配がないことに気がついた。


「ライ? ライ!」


 呼びかけても、気配を探っても()()()()()()()()()

 その事に珍しく焦る辰真(たつま)の前に……彼は現れた。


『君は……神蔵(かみくら)の血の子かい?』


 平安時代の貴族を思わせる服装に身を包んだ、銀髪の青年がそこにはいた。慌てて武器を構えようとする辰真(たつま)に対し、彼は穏やかに微笑みながら語りかける。


『そう身構えないでおくれ? 私の名は蒼主院公謐(そうじゅいんきみひつ)。今だととくたい? そう呼ばれているのだったかな? その前組織と言ったら恐れ多いけれど……妖魔との和平のための組織を作った者だよ』


 彼の名を聞いて、辰真(たつま)は動揺を隠せなかった。なぜなら――神蔵(かみくら)家はその組織設立を手伝った一族だからだ。

 それになにより、蒼主院公謐(そうじゅいんきみひつ)といったら蒼主院(そうじゅいん)家の開祖であり、蒼主院流退魔術式そうじゅいんりゅうたいまじゅつしきの構築者だ。

 

「……本物にせよ、偽物にせよ……立ちふさがるなら!」


「まぁ、待っておくれよ。私は君と殺しあおうなんて思ってはいないんだ。……ただ、そうだね。救ってほしいんだ……この世界を、君に」


 唐突な公謐(きみひつ)の言葉に、辰真(たつま)は驚き言葉を失った。それでもなお、公謐(きみひつ)は言葉を続ける。


「君は……あの伝説の妖魔、いや……言い方が悪いね? 神である月詠(つくよみ)(みこと)と契約しているのだから……」


 彼の言葉が一瞬理解できなかった。


 ただ……なにかとんでもないことが起こる。


 それだけは理解できた――。

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