門
「一体……なに、が!?」
思わず辰真の語尾があがる。目の前に現れたのは、門。
禍々しいオーラを纏った、黒い和風の門がそこにあった。
「なんですの!? これは……!?」
麗奈が声を張りあげながら、門を睨みつければゆっくりと両開きの扉が開いた。そこにあったのは、渦巻く何か。
そこから黒い大きな手がゆっくりと現れ、門から出てこようとしている。
(これは、マズイ……!)
直感的にそう感じた辰真は魔本・刹歌を開く。麗奈が鉄扇を広げ雅姫が薙刀を門に向ける。そして志修那が人造式神の一体、武律を出した。
緊張の最中、現れたのは全長が把握できないくらい大きな身体に両手、そして不釣り合いにずんぐりとした両足をした妖魔だった。
身体から澱みを発生させているその妖魔の顔には、目がなかった。
「どう、しますか? 相手の動きが! 読めません……!」
辰真が声をあげると同時に、妖魔がその不釣り合いな体型からは想像もできない速度で辰真に向かって突進してきた。
(は……やぁ!?)
その攻撃を魔本から出たライが辰真を背に乗せ移動したことで回避できた。だが……。
【ふむ。この妖魔、こちらに標的を絞ったか?】
ライの言葉通りのようで、辰真達の後をどんどん追ってくる。縦横無尽に追いかけてくる妖魔に向かって、魔本から拳銃を出した辰真は発砲するが、上手く当たらない。
「外す……か。なら! ライ!」
【おう!】
辰真は拳銃を魔本へと戻し、かわりに黒い刀を取り出し構えると、ライが辰真を乗せたまま方向転換する。刀を垂直に構えたまま妖魔に向かって行く。
「……今! 火の術式、肆銘! 雷砲烈火!!」
手にしている刀に雷が集まり、それを纏った飛ぶ斬撃を妖魔に放つ。雷鳴を轟かせながら、見事、妖魔の顔面に当たった。
「よし……ライ! このまま!」
【あぁ、トドメを刺すとしよう】
よろけた妖魔の足元に向かって、再度同じ技を放つ。右足に命中したのを確認すると、辰真が右手から左手に刀を持ち替え、魔本から拳銃を取り出して祓力を込め、左足と両腕を狙い撃つ。
辰真の持つ拳銃は、祓力を乗せた分で弾数が変わる。故に……ある意味では無限に放つことができるのだ。
(数撃てばいいだけだ……精度は後回し……!)
妖魔に向けて何発も発砲する。両腕と左足が吹き飛び、大きくバランスを崩した妖魔はその場で倒れた。
「このまま! トドメ……を……!?」
今まさにトドメを刺そうとライから降りた辰真が思わず息を飲む。なぜなら――妖魔の身体から澱みがあふれ出したからだ。
「な、なんなんだ……!? この妖魔は……!」




