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合流と悲しみの声

「いいですこと!? わたくし達の目的はあくまでも保護です!! しっかり把握してくださいまし!」


 高圧的とも捉えられるような、圧のある女性の声に辰真(たつま)志修那(しずな)は困惑しながら、彼女ともう一人の女性の後ろを歩いていた。


 金髪を縦ロールにし、隊服をきっちりと着た女性天大路麗奈(てんおおじれいな)と、隊服の名残りが所属部隊のロゴバッジしかない、黒の革ジャンにミニスカートの深翠色のサイドテールの女性甲斐雅姫(かいまさき)


 麗奈(れいな)の方は先程から口を開いては、辰真(たつま)達に発破をかけ、雅姫(まさき)の方は単調に自己紹介しただけでずっと無言のままだ。


 そんな対称的な二人だが、なんでも入隊してからの仲らしい。彼女達は、トクタイの中でも精鋭部隊の一つに所属しているんだとか。

 これらの話も、訊いてもいないのに麗奈(れいな)から教えられた。


 (正直……だから? としか、思えないけど……)


 そんな辰真(たつま)の横を歩く志修那(しずな)の表情は一見するといつも通り不安げな感じだ。というよりも、麗奈(れいな)の勢いに()されているのかいつも以上に不安げかつ不気味なくらい大人しかった。


(どうしたんだろう? いや、深入りするのは……良くないな)


 辰真(たつま)が自己完結していると、腰に下げている魔本・刹歌(せつか)の中にいるライが声をかけてきた。


【タツマ、シズナの様子がおかしいが……声をかけなくていいのか? 気になっているのだろう?】


「……ライ……」


 ライに促され、志修那(しずな)に話かけようとした時だった。無言だった雅姫(まさき)が突如立ち止まり薙刀を構える。


雅姫(まさき)、なにか気づきまして?」


「嫌な気配、察知。警戒求む」


 彼女の言葉で、全員に緊張が走る。そこに――それは現れた。


 ****


 その頃。

 楓加(ふうか)の病室で横になっていた操姫刃(ときは)が、目を覚ました。


「何者だ?」


 静かに起き上がり尋ねれば、その気配が濃くなった。


【……お願いがあります。あのお方を――お救い下さいませんか?】


 どこか(はかな)く、でも美しい凛とした女性の声。その声にいつの間にか起きていたらしい楓加(ふうか)が語りかける。


「ウチらに、誰を救ってほしいの……ですか?」


「……楓加(ふうか)……お前な……」


 呆れた声を出す操姫刃(ときは)を気にすることなく、その声は静かに答えた。


【私の、愛した人であり――今では人でなくなってしまったお方でございます】


「……どういうことだ? 人であったが人でなくなった? 人が妖魔に転じたということか?」


 操姫刃(ときは)が訊くと、声はより一層悲しそうな声を発する。


【左様でございます。人であった頃の名を衛刹零壱(えいせつれいいち)。今の名を――妖魔王"始まりは嘆きから(ファーストロア)"と申します】

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