表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/52

億劫な日

 トクタイには特殊なルールがある。それは入隊時に振り分けられるA~Eまでのチームは通常通りなら二年で解散し、メンバーはそのまま、または追加や配置換えなどでそれぞれ正式な部隊へと編成されなおすというものだ。

 

 それを知ったのは入隊後だった。二年とは短いな……というのが辰真(たつま)の印象だった。そんな彼は今、Eチーム専用の家近くにある自販機の前にいた。

 幸いにも、水神・篠雨主命(さざれぬしのみこと)は順調に回復し始めており、楓加(ふうか)もたいした怪我ではなかった。だが、辰真(たつま)がここにいるのは別の理由がある。

 それは――。


【今日は、お前の父親の命日だな。そして……()()()()()()()()()()()()()。いつまでもここにいるわけにはいかないぞ?】


 そう。今日は辰真(たつま)の実父、神蔵龍二(かみくらりゅうじ)の命日なのだ。この日は家族が集まる日と約束されている。だが辰真(たつま)は継父にも、実母にも会いたくない。


(父さんが死んでたったの二年で再婚されて、新しい父親なんて言われても……受け入れられるわけないじゃないか……)


 そう。辰真(たつま)が十歳の時に龍二(りゅうじ)は事故死した。その悲しみは深く、幼い心にトラウマを宿(やど)すには十分で、だからこそ、たったの二年で別の男と再婚した母を――(ゆる)せないでいる。

 だからこそ、気が重い。重いのだが……。


「……そろそろ、行くよ」


【あぁ、共にな】


 待ち合わせにはギリギリになるだろう。それでいいかと思い直し、辰真(たつま)とライは家を後にした。


 ****


 その頃。

 楓加(ふうか)は経過観察で入院中で、操姫刃(ときは)はその付き添いで家を空けている中、リビングで一人志修那(しずな)は静かに本を読んでいた。

 別に自室でもよかったのだが、今は広い空間にいたい気分だった。


(最悪だよ……またアイツが出たなんてさ……)


 志修那(しずな)は認識こそしていないが、周りからの証言で存在は知っていた。もう一人の人格、朱納(しゅな)を。

 彼の発現要因は理解している。だからこそ――()()()()()()()()()()()()

 そんな自分の現状が心底嫌なのだが、尊敬する祖父に「お前は人を救える!」と力説されてしまったからには、入隊試験を受けるしかなかったし、なんとか人造式神(じんぞうしきがみ)で誤魔化していたつもりだった。

 しかし、今回の件で自分にもう一人の人格が存在することはバレてしまった。この状況だからこそ追求されていないだけで、おそらく今後なにかしら説明しなければならないだろう。


 それが億劫(おっくう)で仕方ない。自分の負をさらけ出すような行為が、志修那(しずな)は嫌だった。


「……はぁ~……」


 こんなにも明日を迎えるのが嫌なのは久しぶりで、志修那(しずな)は深くため息を吐きながら座っていたソファに沈み込むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ