現れしは
「せっかくの宴を台無しにしてくれたのは……お前達か、トクタイ。そして、彪ヶ崎ぃぃ!!」
現れたのは白髪交じりの壮年の男性。その目は濁り、むき出しの敵意が圧として襲ってくる感覚に襲われる。
「彼が~瀧ヶ原勇生ですね~。皆様、お気をつけてください~」
争護の言葉を受けて、Eチームの面々は勇生と対峙する。ここでも先に動いたのは操姫刃だった。
勇生に向かって伍掛剣を振りかざす。だが……。
「お前さん、剣については素人か? 動きの雑さが目立つぞ?」
勇生が片手で操姫刃の剣技を受け止め、彼女を蹴り飛ばす。そして、そのまま猛スピードで水神を保護している楓加に向かって突進して行く。
そこへライに跨った辰真が割り込み、勇生の拳による攻撃を黒い刀で阻む。
「っ! 妖魔と共存しているガキか! 邪魔だ!」
なぜか刃で防がれても無傷な勇生の拳。その事実に一瞬目を丸くした後、すぐに勇生からの蹴りをギリギリでかわし、ライから降りると辰真は魔本・刹歌から拳銃を取り出し、容赦なく発砲する。
その弾丸は勇生の拳により弾かれた。
「な、な、なぁぁ!? 人間じゃなくない!? ちょ、えぇ……?」
武律を出して、勇生から距離を取っている志修那の動揺の声が響く。しかし、その声に答えている余裕はなかった――勇生を除いて。
「ふっ。あははは! わしは人間だ! まごうことなき、そして混じりもない純粋な! そう、ただの人間だ!」
どこか狂気すら感じさせる勇生の猛攻に、Eチームの四人も、争護も圧される。
「恐れろ! さぁ、人間様の世の始まりだ! 天下を妖魔共なんかに渡してなるものか!」
独り言のようにも、宣告にも思える言葉。その勢いが尚更恐怖を煽り、辰真の足を思わずすくませる。
その一瞬のスキを突いて、水神・篠雨主命の治療で動けない楓加に元へ近寄り……彼女を容赦なく蹴り飛ばした。
「楓加!」
操姫刃が叫び、急いで楓加の元へ走る。勇生はそれには目もくれず、篠雨主命の頭を踏みつけた。
「っ!?」
極度の疲労と反動で身動きできない篠雨主命に向かって、今度は拳を振り上げようとしたその時だった。
「……おい」
気づけば、さきほどまで弱音を吐いていた志修那が勇生の拳をハルバードで防いでいた。その目つきはいつもと違って光がないかわりに鋭かった。
「人造式神とかいうのを扱うガキか。なんだね? その目つきは!」
「うっせぇ。黙れ」
普段とはあまりに違う様子に驚く辰真とライに、それどころではない操姫刃と楓加。対照的な状況にすら無反応に志修那? が言葉を発する。
「オレの目の前で……やりやがったな? てめぇは……殺す」
そう告げる彼に勇生が尋ねる。
「ほう? お前さんは……誰だね?」
「……答える義理はねぇよ」
睨み合う両者の殺し合いが……始まった。




