『革命の奏者』
不気味な雰囲気を纏う、突如として現れた二人組の男女。
ベールに覆われている故に表情こそ読み取れないが、敵意と……殺意が込められていることだけは全員がわかった。
一斉に戦闘体勢へと入るEチームの四人を見ても、彼らは何一つ態度を変えることなく動き出した。先に攻撃を仕掛けたのは女性の方だった。
「消えな! ひよっこ共! 火の術式、肆銘、雷砲烈火ぁぁぁぁ!!」
両腕から青い炎を吹き上げながら、女性が技を放つ。
「な、な、なぁああああああ!? 蒼主院の退魔術式と同じ技ぁ!? 同じトクタイってこと!?」
驚きの声を上げながら志修那が護連を出す。青い炎を防がれながらも、女性が声を張り上げ答える。
「トクタイ!? この私をそんな生ぬるい連中と一緒にするな! 私達は『革命の奏者』! 全ての妖魔を……殲滅してみせるわよ!! すべて! すべてね!!」
その声色には妖魔への憎悪がハッキリと感じられた。自然と辰真の背筋に冷や汗が伝う。
(この人……いや、この人達は……敵、だ)
魔本、刹歌を握る手に自然と力が入る。それは、護連を召喚している志修那以外の二人も一緒のようで、気づけば武器を手にし、臨戦態勢に入っていた。
楓加と操姫刃、二人と視線が交わった。
「しずなんはそのまま防いどいて! トッキー、たっくん達は攻撃を!」
楓加からの指示に従い、操姫刃と辰真が護連の守りから出る。
「行くぞ辰真」
「……はい!」
青い炎を、辰真は土の術式で防ぎながら、操姫刃は金の術式で払いながら女性に向かって前進して行く。そこに立ちふさがったのは、女性の後ろにいた男性の方だった。
「ボス、ここで火は不利です。荒ぶる水神の力が増していますし、挨拶はその程度で」
ボスと呼ばれた女性は後退し、高い木へと飛び移る。そして、宣言した。
「いいかい!? 生ぬるいトクタイのひよっこ共! 私達は妖魔も、それを容認する人間も全部殲滅するわ! 全てを! これは始まりに過ぎない! この世界は変革するのよ! 我々『革命の奏者』の手によって!! あははははは!!」
狂気すら感じられる笑い声が遠のく。意識が一瞬飛んだ感覚。その違和感を打ち破ったのは、争護が放ってくれた水の術式だった。
「え~皆様~。あの男の方から放たれた水の術式の幻覚は~なんとか相殺しましたが~。時間を取られました~、もはや水神の荒ぶりは~町へ甚大な被害を及ぼしそうです~」
その言葉を受けたEチームの四人は、争護の案内を受けながら水神の元へ急ぐことにした。『革命の奏者』が施した術式は破壊した。なのに、水神の荒ぶる気配は……どんどん危険度を増しているように感じられた。
(……なにが、起こっているんだろう? 水神様に)
根本的な疑問に立ち返った辰真の思考。それの答えが出たのは、水神を視認できる距離までたどり着いた時だった――。




