状況把握
「……それで? 彪ヶ崎一族と因縁のある人物とは何者なんだ?」
操姫刃が争護に鋭い視線を向ける。その目に怯えるでもなく、彼はただまっすぐに見つめ返すと口を開いた。
「はい~。名を瀧ヶ原勇生と言いまして~。元は彪ヶ崎家と同じく蒼主院門下の退魔師の一族だったのですが~、数百年前でしたか~? 現在の妖魔王が誕生した頃に~どうやらなにかがあったようでして~。その意志を引き継いだ勇生と私達は~対立関係にあるのですよ~」
「ちょっと待ってくださいよぉ!? え、なに!? 彪ヶ崎家って退魔師の血統だったの!? それがなんで今こんなことになってんの!? 『革命の奏者』でしたっけ!? それの援助受けてたんですよね、弟さん! ねぇ!?」
志修那の真っ当な指摘に、争護が額に手を当てながら答える。
「はい~。弟は退魔師の才に恵まれなくてですね~? それで家を出て行きまして~……いやはや困ったものですな~……はぁ」
口調とは裏腹に、その表情は暗い。咳払いをすると、争護が話を強引に戻す。
「さて、そろそろ本題に戻りましょうか~。『革命の奏者』の仕業にしろ、まずはこの水害をなんとかしなければ~この町は終わりますので~」
「ウチらはそのために来たんです! そのためにも、早速動きましょう!」
楓加が明るい声で促せば、心なしか争護の表情の曇りが晴れたように見えた。
「はい~。それでは~暴れておられる水神様の近くまでご案内いたします~」
土砂降りの中、Eチームの四人は争護の案内で町内を進むことにした。だが、足場が悪くその上どんどん雨の勢いが凄くなってきたために進みが悪い。
(……こんなひどい雨の中なのに、洪水みたいになっていないのは……なんでだ?)
不思議に思っていると、ライが魔本の中から辰真に向かって声をかけてきた。
【ふむ。どうやらトクタイの者達が、被害を最小限にとどめているのだろう。そんな気配を感じる】
「……なるほど……」
辰真が納得したのと轟音が鳴り響いたのは同時だった。
「うひゃあ!? なんだなんだなんだよぉ~!!」
志修那が怯えた声色で近くの木につかまる。それを冷静な目で見つめながら操姫刃が争護に尋ねる。
「この音、覚えは?」
「いえ~全く~。ですが~忌々しき事態であることは確かでしょうな~。先を急ぎましょう~」
楓加が志修那を木から引き離すと、そのまま彼を引きづり先へ進む。
「あいたたた!? わかったって! 歩くから引っ張るのはやめておくれよぉ~!」
志修那の情けない声が雨の音で覆われた町中に響くのだった。




