次なる任務へ
振り返りのミーティングが終わった四人は、家に戻りそれぞれの自室に入って行った。片付けきれていない部屋で、辰真はベッドへと転がり込む。
妖魔憑きとなった青年、魅使榛登はトクタイで検査と治療を受ける事になった。なんでも、憑りついていた『爆炎の妖魔』の思念が想定よりも強かったらしく、後遺症が残る可能性もあるからだと和沙から聞いた。
(……妖魔との、関係……か)
自分達がかなり特殊なのだと、頭では理解していても……。そんな想いを抱きながら、辰真は息を静かに吐いた。
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トクタイ本部近くの某屋上にて。
赤い長髪を揺らしながら、青年は呟いた。
「……今度こそ、全ての妖魔を終わらせる……必ずな……」
彼はバタフライソードの片方を天へと掲げる。……誰かに誓うように。
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翌々日。束の間の休日を過ごしたEチームの四人は、待機室に集合していた。次の任務の指示を受けるためだ。
「はぁぁ……。もう少し、休ませてくれたっていいじゃないかぁ~」
「まぁまぁしずなん。ゆっくりできる時間があっただけよかったじゃない? それにほら、ウチらこの間の任務じゃほとんど活躍できてなかったわけだしね~。次こそ、がんばろ?」
「ぐはっ! それを言うのかい!? 追い打ち!!」
愚痴る志修那に対し、無自覚に心を抉る発言をする楓加。そんな二人のやりとりを見つめていた操姫刃が、辰真に向かって静かに声をかけてきた。
「辰真、調子はどうだ?」
「えっ?」
突然訊かれて驚く辰真に対し、彼女は何気ないと言った様子で告げる。
「お前、顔色悪いぞ? 不眠か?」
図星を突かれた辰真は何も言い返せなかった。確かに、最近眠れていない。だが、それは……。
どう答えようか迷っていると、司令室から和沙が現れた。全員が自然と静かになる。
「皆、集まったようね? では、新たな任務について話す。資料を回すから、各自で目を通して?」
渡された資料を回していく。最後に受け取った辰真は、資料を見て思わず目を丸くし呟いた。
「……神の、暴走……?」
そこに記されていたのは、川の主であった水神が工事により暴走し、水害を起こしているとのことだった。具体的な被害で言うと、川の氾濫に雨が止まない……など。
一般人からすれば、ただの災害にしか見えない事柄だ。
「ほえ~! 一見したら神の仕業だなんて思わないかも~。これって、工事に怒っているんだよね?」
楓加の言葉に和沙が静かに頷き、口を開いた。
「そう。なんでもこの工事は、川の埋め立てみたいなの。それも、どうやら周辺住民の反対を押し切った強引な方法での……ね? 今時にそんなことがまかり通るのも、おかしな話なのだけれど……」
呆れたようにため息を吐きながら、和沙が続ける。
「要約するとね? 正しい手順を行わなかったために、水神を怒らせたというのが今回の話。それで、任務内容としては、現地に行っての現状把握と水神の保護。そして……水害を止める事よ。よろしく」
(ん? 水神の……保護? 確かに、トクタイは妖魔をただ倒すだけの組織じゃないとは聞いているけれど……神を保護して……どうするんだ?)
疑問を口に出すかどうか悩んで……辰真はやめた。気が咎めたのだ。
(俺なんかが、口出しするようなことじゃ、ないしな……)
「誰か疑問はある? ない? なら、早速だけれど行ってきて?」
四人は「了解」と答えると、待機室から出て駐車場へと向かって行く。それを見送ると、和沙は静かに呟いた。
「無事に遂行できるといいのだけれどね……?」




