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番外編⑥無意識に対抗

 「芽衣は椎名先輩のことが大好きなんですけど、御影先輩は結局椎名先輩のこと好きなんですか?」

 「――えっ?! 芽衣ちゃん佑くんのこと好きだったの?! た、ただのファンかと……」


 ど、どうゆうこと?! いきなりの宣言にびっくりしちゃったんだけど……?!


 「むしろ気づいてなかったんですか?! 椎名先輩ですら気づいてますよ?! それより御影先輩はどうなんですか?」

 「わ、私?! な、ないない! そんなことないよぉ!」

 「動揺が激しいですねぇ」


 み、見破られてる?! 嘘は言ってないけど動揺はしてるんだよね……。


 「じ、実を言うとね……。昔から何度も好きになりかけたよ? でも違う。私の場合はそういうわけにはいかないから」

 「なりかけ、ですか……? うーん、でも確かに椎名先輩の妹さんが言ってた通りみたいですね」

 「渚沙? 知り合いなの?」

 「ストーカーを辞めるように言われたことがありまして。それで過度なストーキングは辞めてテニスの応援だけするようになったんですよね。妹さんも、それ以来会えば良くしてくれましたし嬉しかったです」

 「そうだったんだ……。私も全然気づかなかったよ……。まさか佑くんのストーカーがいたなんて」

 「えっへんっ!」


 芽衣ちゃんは腰に手を当て誇らしげに胸を突き出している。


 「そこ! ドヤるとこじゃないからね?!」


 そう言う私も、頻繁にドヤるけどね。

 けど、芽衣ちゃんの場合は素直にドヤるとこじゃないと思う。だってストーカー行為だもん……。


 「ストーカーだったことは心底反省してますし自分でも本当に気持ち悪いと思ってますよ。ですけど芽衣が椎名先輩のことが好きな気持ちは本当です。御影先輩のことは昔から勝手にライバル視してたんですけど、本当に妹さんの言う通りだったとは……」


 この子の真っ直ぐな目から本当に佑くんのことが好きだということが伝わってくる。

 だけど、芽衣ちゃんは何かはわからないけど決定的なミスを犯した。だからまずは佑くんとのギクシャクした関係をゼロに戻さないといけない。


 「め、芽衣ちゃんよりは私の方が優勢かなぁ~?」


 口が勝手に動いてしまった。


 ――わ、私ってば何対抗するようなこと言ってるのぉ~?! これじゃまるで私が佑くんに恋愛感情を抱いてるみたいじゃん……。


 「と、言いますとやっぱり御影先輩も……?!」

 「ち、違うよ?! め、芽衣ちゃんの場合今は佑くんとの関係は良くないでしょ?! だ、だから今は私の方が……、と言いますか何というか……。私もそうだし、あとほら! 有紗ちゃんとか! 芽衣ちゃんより佑くんと良い関係の子はいるから、まずはちゃんと謝らないと佑くんに振り向いてもらえないよ? ってこと……!」


 自分でも上手くまとめられたとはとてもじゃないけど思えないし、結局私は何を言ってるのか全然わかんないけどとりあえず伝わって……!


 「……何となく言いたいことはわかりました。つまり、今の椎名先輩が振り向くとしたら御影先輩か姫宮先輩ってことが言いたいんですよね?! だったら芽衣もお二人に肩を並べる為にまずは早く謝りにいかないと! こうしちゃいられません! 御影先輩、芽衣は今から謝りに行きたいんですが良いですか?」

 「ちょっと違うけど……。まぁ、そんなところかな? それじゃ行こっか」


 正座をしていたから、少し足が痺れてる。立ち上がるのがちょっと大変だったけど何とか足を持ち上げて部屋を出た。


 もし、今から芽衣ちゃんが謝ることで今後佑くんが芽衣ちゃんに振り向くようなことがあったら、私はどうなるんだろう? 

 ふとそんな疑問が頭を過ぎったけど、想像なんてしたくない。


 そんな風に思う、私がいた――。


 とはいえ、流石の佑くんもそれで振り向くほどお猿さんじゃないと思うけど……。

 だから、やっぱそんなこと想像する必要もないかっ!


 謎の安心感を覚えた私は、軽い足取りで外に出た。

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