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番外編⑤確かに今日は林間学校に出発する日だけどよ……

 ちゃんと間に合うようにスマホのアラームはセットしておいた。

 だから俺はまだ布団の中で眠っているはずだったのだが……。


 薄らと耳にある音が聞こえてきたような気がした。まだ頭が覚醒しきっておらず手探りで頭上付近にあるはずのスマホに手を伸ばす。


 ……だが、アラームは鳴っておらず何ならまだ起きる予定時刻よりも一時間早い……。


 な、なんだ……? 確かに音が聞こえたような気がしたんだが。ま、気のせいか。


 あと一時間寝る為に再び布団に潜る。

 がしかし、それを許してくれない音が再び鳴った。


 家のインターホンだ……。犯人は予想がつく。確実に陽歌だ。


 とりあえず、


 【うるさい。鳴らすな】


 とだけ陽歌にメッセージを入れて目蓋を閉じる。

 だがそんなことを言っても無駄らしい。お構いなしに鳴り続けるインターホン。


 仕方ない……。渋々階段を降りて玄関の扉を開ける。


 「おはよ! 佑くん!」

 「おはよ! じゃねーよふざけてんのかテメェ!」

 「さ! 行くよ!」


 まるで俺の怒りが伝わっていない模様。


 「あのさ……、まだ早くない? 普通に後一時間は寝てる予定だったんだけど……」

 「気合が足りてないなぁ。そんなんじゃ三日間乗り切れないよ?」


 むしろここでちゃんと睡眠を取ることで乗り切れると思うんですが……。


 「じゃ、先行けば? 俺はまだ寝るから」


 そう言って扉を閉めようとしたのだが防がれてしまった。


 「さ、早く支度して」

 「な、なんで……?」

 「寝坊したら困るから早く来たんじゃん? まさか、寝坊してクラスに迷惑を掛けたいとでも言いたいのかな?」

 「何で寝坊する前提?」

 「あれ? 覚えてないのかな? 忘れたとは言わせないよ? あれは中学三年の頃の修学旅行当日の朝でし――」

 「――わかった! 今から支度するから待っててください!」


 真顔で語り出す陽歌に過去の自分の過ちを掘り返される。


 あの時は寝坊した。だから今日はそうさせない為にこんな早くから来てくれた。

 それならば仕方ないから言われた通りに今から支度をすることにした。



※※※※※



 学校に着くとバスが沢山並んでいた。

 だが当然生徒は誰も来ていない。


 「おはよう二人とも。やけに早く来たじゃないか」


 俺のクラスのバスの前に立っていた藤崎先生がキリッとした挨拶をしてくる。


 「おはようございます藤崎先生」


 朝から担任教師に爽やかスマイルを浮かべて挨拶をしている陽歌。


 「遅刻しない模範生なので……」

 「うむ! その心意気はいいぞ!」

 「ま、私が起こしてあげなきゃ遅刻確定だったけどねぇ」


 やたらしたり顔な陽歌。なんかムカつく……。


 「……まさかとは思うが、椎名! 御影を家に泊めたりしてないだろうな?」

 「何でそうなる?! してませんよ?! 家が近所なだけですから!」

 「それならいいが……」

 「でも何回もお泊まりに行った事はあるよね~?」

 「な、なんだと……?」


 今にも俺にお説教をかましそうな表情をしている藤崎先生。


 「昔の話です! 子供の頃の! 変な誤解を生むから余計な事言うんじゃねぇ!」

 「あははっ! ごめんごめん!」

 「ならいいんだが……」


 藤崎はホッと胸を撫で下ろしている。


 「もうバスには乗れるんですか?」

 「あぁ、もちろん乗れるがまだ誰も来てないぞ?」


 陽歌の質問に藤崎先生は当たり前のようにそう答える。

 ですよねぇー。いくらなんでも早すぎますよねぇ……。


 とりあえずバスには乗れるらしいので、中で出発するのを待つことにした。


 適当にバスの中央辺りの席に腰を掛け、陽歌も隣に座ってきた。


 「それにしても懐かしいねぇ。昔はよくお泊まり会したんだよねぇ」

 「お前と渚沙がな。俺は全く関係ないんだが?」

 「とか言って、私が泊まりに来てて嬉しかったくせに!」


 悪戯に笑っている陽歌だが、泊まりに来る度陽歌と渚沙、二人揃って理由なく俺を貶してただけだから特に嬉しくなかったよ?


 「いや全く」

 「また今度泊まりに行ってあげよっか……?!」

 「――はぁっ?!」

 「なーんてね! 嘘だよーん! 佑くんと二人とか襲われちゃったら嫌だし」

 「あっそ……」


 それもそうですね。陽歌が泊まりに来たら襲わない保証はないので来ないでください。


 突然座っていた俺の隣から間を挟んで反対側の席に移る陽歌。


 「え……? なんで移るし」

 「だってバスの中で襲われたら嫌じゃん?」

 「いや襲わねーよ?! 何非現実的な事言ってんの?! そうゆうのはDVDとか本の中だけの世界ですけど?」


 何でわざわざ俺が逮捕一確の犯罪を犯さねばならんのだ。

 というかそんなことする奴世の中にほんの、そう、ほんの僅かなバカしかいねーよ……。


 「ヘンタイ……」


 久々に出ましたね。そのワードしばらく言われてなかったよ。少なくとも五月に入ってからは初だね。


 それにしても眠い。ホント、めちゃくちゃ早い時間から起こしやがって……。遅刻しないのはいいけどさ……。


 「みんな来ないねー」


 陽歌はポツリと呟く。


 そりゃそうだろ。


 確かに今日は林間学校に出発する日だけどよ、いくら何でも早すぎだろ!

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