第六十九話 仲良しコンビ
「あ、ミラ! おかえりなさい」
無事に問題を解決した後、サイラス君とのんびりギルド長室で待っていると、ミラが笑顔で戻ってきた。
とても嬉しそうだけど、向こうで何か良いことでもあったのかしら?
「お姉様、サイラス様。今日は連れて来てくれてありがとう!」
「どういたしまして。途中で置いていってしまって、本当にごめんなさい。楽しかった?」
私の前に立ったミラの頭を撫でながら問いかけると、笑顔のまま大きく頷いた。
「楽しかったし、素敵な出会いもあったよ!」
「それって、レージュとのことか?」
「はい!」
私達がギルド長室に戻ったら誰もいなくて、代わりに置き手紙があって、支部に行っているって知った時も驚いたけど、それ以上にミラの今の表情の方が驚きだ。
だって……それを言った時のミラの顔は、明らかに恋する乙女の顔だったから。
「レージュ君って、とても素敵な人ね……あたし、今日が初めましてだけど、好きになっちゃったかも……」
……ん? あれ、今レージュ君って……あらあら、これは私の予想が的中しちゃった?
「おお、お目が高い! あいつは口数が少なくて、感情を表にはあまりださないが、実はかなりのお人好し! 実際に俺も何度も助けられてるしな! それに製薬の腕もいい! 満場一致で支部長に就任したのが何よりの証! あとはお茶もうまいし、人の話をよく聞いてくれるし……他にも……」
「ふふっ、前から知ってたけど、本当にサイラス君は、レージュ様のことが大好きよね」
「一番の親友で、幼馴染だからな。そりゃ大好きさ!」
私なら、今みたいに聞かれたら、多少は照れながら言うだろうけど、サイラス君は堂々と胸を張って言える。それって、とても素敵だと思わない?
「それなら、レージュ君のこと、たくさん教えてください! あの人のこと、色々知りたいんです!」
ずいっと身を乗り出して問いかけるミラに、サイラス君はノリノリで答える……なんてことはせず、静かに首を横に振った。
「教えてもいいけど、そういうのは本人と交流する中で見つけあうのがいいんじゃないか? 俺がもし同じ立場で、事前にエリシアの性格とかサイズとか全部知る機会があっても、絶対に聞かないよ」
「お~、さすがです! ちなみに、サイズを知る機会って……?」
「ちょっとミラ! そんなことは聞かなくてもいいの!」
「それはもちろん、決まってるよなぁ!」
完全に悪乗りをしているサイラス君は、両手をワキワキして私に近づいてくる。それに対抗して、私は往復ビンタをお見舞いした。
「うーん、今日もエリシアは絶好調だな! はっはっは!」
「もうっ、急に変なことをしようとするからよ! そういうのは、そのうちみせてあげるから!」
「あ、そのうち見せるんだ。お姉様、だいた~ん」
あっ……い、今の発言は違うの! いや、違くは無いんだけど……あ、あぁ~もう!!
「ほ、ほら! いくら良いことがあったからって、すぐに調子が良くなるわけじゃないんだから、今日は帰るわよ!」
「なるほど、姉っぽさを出しつつも、うまく話題をすり替える話術……さすが俺のエリシア」
「サイラス君! なにか言ったかしら!?」
「な、なんでもありませんっ!!」
「サイラス様、お付き合いする前から、既に尻に敷かれてるんだね……」
えぇ……私って、そんなふうに見えるの……? なんだか、ちょっとショックかも……。
****
ギルドを後にして、チュレンヌ家の屋敷へ帰る途中の馬車の中で、元気になったミラは、サイラス君と楽しそうにお喋りをしていた。
「あいつ、結構堅物な感じだけど、女性には奥手なところがあるんだ。つまり、ガンガン行けば、必ず惚れてくれる!」
「そうですよね、やっぱりなんでも攻め攻めが一番ですよね!」
「あなた達、こういう時は驚く程意見が一致するのね」
基本的に、この二人は迷う前にまず行動! って感じの考え方だから、気が合うみたい。
一方で、私やレージュ様は、どちらかというと、考えてから行動しようってタイプだと思う……最近の私は、感情に身を任せちゃうことが多い気もするけど。
「……今更だけど、二人共わざわざうちまでついてきてもらって良かったの? もうあたしは大丈夫だから、デートでもしてくれば?」
「ははっ、心配ないよ。これから家族になる君と仲良くなるのも、必要だからね」
「それならよかったで……す……? あれ、家族になるって?」
……あっ……そういえば、色々あったせいで、ミラにはまだ私達が結婚することを伝えていなかったわ。
「実は、今日実家に帰ってきたのは、お父様とあなたに結婚の報告をするためだったの」
「えぇ~!? そうだったの!? 二人共、おめでとう!」
まるで自分のことの様に大喜びするミラは、私とサイラス君に順番に抱きついて、結婚を祝して――って、なにしてるのー!?
「ミラ、私のサイラス君なのを忘れないでね!?」
「ありゃ、ごめんね~! 嬉しくて、つい! 大丈夫、あたしにはレージュ君がいるから!」
「だ、そうだ! ほら、嫉妬でほっぺが膨れてる君も可愛いけど、俺はいつもの笑顔の方が好きだよ」
「うぅ~! もうっ! もうっ!」
嫉妬心とか、恥ずかしさとか、好きって言われたことへの嬉しさとか、色々と混ざってしまって、どうにもならなくなって……ただサイラス君の肩をポカポカ叩いて、現実から逃げることしか出来なかった。
「お姉様、可愛い~! レージュ君も、今みたいなカッコいいことを言ってくれますかね?」
「ん~………………」
「え、そんなに考えることかしら?」
「いやぁ、言いそうな場面を妄想して、それをレージュに置き換えてみたんだが、あいつなら確実に緊張して、盛大に噛んで、そして恥ずかしさで死にたくなるとみた!」
「わっ、すごい! さっき、噛んで恥ずかしがってましたよ! とても可愛かったんですよ~!」
……一見すると、彼氏と妹が楽しそうに話してるだけのように見えるけど、さっきの言葉……妄想の部分って、聞いた感じだと、普段は自分が出て、格好良いことを言ってるってことよね?
それはつまり、私に対して……脳内では格好良いことを言って……思春期みたいなことをしてると。それはそれで可愛い……かも? ちょっと判断に困る内容ね。
……とはいっても、私もサイラス君と付き合うようになってから、口には出せないような妄想をしているから、人のことを言えるような立場じゃないのよね……あはは……。
「皆様、到着されました。お足元にお気をつけてお降りください」
「ほら、捕まって」
先に降りたサイラス君の手を捕まって馬車を降りると、ミラも続いて手に捕まって降りる。
至って普通のことなのだけど……それだけのことなのに、ちょっとだけ嫉妬しちゃっている自分がいるのに驚きだ。
「今日はありがとうございました! とても楽しかったです!」
「それはよかったわ。それで、お父様には……?」
「もちろん言うよ! レージュ君のこともね! あ、今日はお母様のところは行った?」
「これからよ」
「そっか。言ってあげると喜ぶと思うよ! それじゃあ、あたしはそろそろ行くね。今日は本当にありがとう~!」
うんうん、あれこそ私の知っているミラの姿だわ。元気になってくれて、本当に良かった!
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