第六十六話 ギルド見学
なにごともなく到着した私達は、日曜日でも営業しているギルドの中に入る。すると、ミラの目に少しだけ輝きが戻った。
「ここがお姉様の職場? 広いし人がたくさんいるね」
「最近は職員も依頼人も増えているのよ。おかげで、最近支部も出来たのよ」
「あれ、エリシアさん? 今日はお休みなのでは?」
「少し事情があって、今日は妹にギルドの中を見学させたくて来たんです」
「そうでしたか。ギルド長からの許可は……一緒にいるのですから、大丈夫ですね」
「ああ。みんなの邪魔はしないようにするから、安心してくれ」
「わかりました。ではこちらの札をかけてください。そうでないと、不法侵入したと思われてしまいますので」
受付嬢をしてくれている女性は、引き出しから首かけの札を出して、ミラに渡してくれた。これがあれば、自由に中を案内出来るわ。
「ミラ、どこから見てみたい?」
「やっぱり、お姉様がどういうところで働いているのか見たいかな」
「それじゃあ、製薬室から行きましょう」
ミラを連れて製薬室に向かうと、仕事をしていたみんなの視線がこちらに向き、どうしたのかと首を傾げる。
「エリシアさんにサイラスさん、どうしたんすか? 今日は休みっすよね。ここはデートスポットじゃないっすよ?」
「ち、違います! 今日は妹にギルドの中を案内したくて来たんです!」
「初めまして、ミラといいます。姉がいつもお世話になっています」
「あ、ご丁寧にどうもっす。見学は自由にしてもらって結構っすけど、あまり物には触れないようにお願いするっす。結構危険な素材とか薬物も扱っているんで」
「は、はい!」
ミラは、注意を受けて背筋をピンっと伸ばす。もともと私から言うつもりだったから、手間が省けたわ。
「エリシア室長、ちょうど良かった~! ちょっと聞きたいことがあって……!」
「あ、すぐに行きますね。ミラ、すぐに戻ってくるから、少し待っててもらえるかしら?」
「は~い」
「サイラスさん、来週の会議についての確認をしてもいいですか?」
「ん、どうかしたか?」
せっかく見学に来てもらったのに、放置するのは申し訳ないけど、相談を無下にすることも出来ない。だから、相談の元となった問題を手っ取り早く片付けて、ミラのところに帰ってきた。
「ごめんなさい、待たせちゃって」
「ううん、大丈夫。むしろ、お姉様が仕事をしているのを直接見られて、嬉しいくらいだよ」
「そ、そうなの? そこまで面白いものじゃないと思うけど……」
「そんなことないよ。相談を聞いて、すぐに薬の問題点を出すどころか、パパっと作ってたでしょ? かっこよくて、見惚れちゃった!」
あれだけ落ち込んでいたミラの目に、また少し光が戻ってきた。
放置して寂しがってるかと思ったけど、良い方向に向かってくれてよかったわ。
「……お姉様は、やっぱり凄いよね。あたしの自慢のお姉様だよ。それに比べて、あたしは何も得意なことがない。これじゃあ、彼氏に捨てられても仕方がないよね……」
「なにを言ってるのよ。ミラにだって素敵なところはいっぱいあるのよ。私よりも社交的だし、運動も得意だし、親身に人の話を聞ける優しい子だし、他にもたくさんあるわ」
「えへへ……ありがとう、お姉様」
「どういたしまして。それじゃあ、他のところも行きましょうか。その後に、あなたの薬を用意しましょう」
「うん。あ、次はサイラス様の部屋に行ってみたいな」
「俺の部屋か? ああ、好きなだけ見ていってくれ!」
製薬室を後にして、次に訪れたのはギルド長室だ。
正直、結構散らかっているから、見せるべきではないのかもしれないけど、ミラが見たいのなら仕方がない。サイラス君の許可も出てるしね。
「わぁ、凄い書類の山……お姉様から聞いてたけど、ギルド長の仕事って本当に大変なんだ……」
「ははっ、もう慣れたものさ!」
「いくら慣れてるっていっても、大変じゃないんですか?」
「確かに大変だけど、先代から引き継いだ大切なものだし、なによりも俺は世界一の薬師ギルドを作るのが目標だからな! そのためなら、これくらいへっちゃらさ!」
普通にやれば大変なものでも、目標があると頑張れる。感情論じゃないかって思われるかもだけど、これがとても大事なのよ。
「……あれ、あの花瓶に生けてあるお花……」
「あれかい? エリシアが俺にプレゼントしてくれたものだよ」
「そうなんですね。お姉様、大事にしてもらえてよかったね」
「ええ……あの時は、本当にありがとう」
私にだけ聞こえるように、耳元で伝えてくれたミラに、同じ様に耳元で感謝を伝えていると、製薬班の女性が、血相を変えて部屋に飛び込んできた。
「あ、本当に来てくれてた! お休み中にすみません!」
「どうしたんだ、そんなに慌てて……」
「少々問題が起きまして、お二人のお力を貸していただきたいのです! お休み中なのは重々承知なのですが、今日出勤している人間では、対処が難しくて……」
「…………」
彼女の慌てぶりからして、本当に切羽詰まっているのだろう。私の予想だと、しばらくは戻ってこれないと思う。
そうなると、元気のないミラを放っておくことになる。それも嫌で、凄く申し訳なくて、自然とちらりとミラに視線を向けると、ミラはにっこりと笑っていた。
「もう、なんでそんな顔をしているの? あたしの自慢のお姉様は、困ってる人を放っておくような人じゃないでしょ? あたしは大丈夫だから、行ってきて!」
「ミラ……本当にごめんなさい。なるべくすぐに戻ってくるから!」
「お姉様、くすぐったいよ~」
私はミラを抱きしめながら、もう一度ごめんねと伝えてから、ギルド長室を後にした――
「まったく、あいつはこんな初歩的なミスをして……おいサイラス、いるか?」
「……あっ」
「えっ……ええ? エリシア様……ではない? あなたは……?」
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