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【完結】真実の愛を見つけたから離婚に追放? ありがとうございます! 今すぐに出ていきます!  作者: ゆうき


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第二十二話 望まぬ再会

「……それにしても、エリシアは凄いな。的確に物音がしにくい道を選んでるじゃないか」


「伊達に経験は積んでないってことよ」


 月の泉を目指して進んでいると、不意にサイラス様が私のことを褒め始めてくれた。


 ランプが一つしかない暗い夜道でも、私なら音がしない道を進むことは、さほど難しいことではない。

 まあ……この経験を手に入れた経緯があれだから、嬉しいような悲しいような、複雑な心境ではあるけどね。


「月の泉はもうすぐ着くはずよ」


「確か、森の中心にあるんだよな」


「ええ、記録が正しければその通りよ。ただ……」


「ただ?」


「所々に、自然界ではつくはずがない痕跡があるのよね」


 ここまで進んできた道中に、たくさんの人間の足跡や、馬車の車輪の跡が残っている。それも、かなり新しいものだ。


「きっと、あの商人達が残した痕跡と思って間違いないと思うわ」


「それ、マズいんじゃないか!? 明らかに、大きく出遅れてるってことだよな!」


「その通りだけど、焦っては駄目よ。サリューの採取も大切だけど、生きて帰れなければ何の意味もないもの。それは、サイラス様もわかっているわよね?」


「……ああ、そうだな」


 直前に、自分が無理をして迷惑をかけてしまったことを学んでいるサイラス様は、私の言葉に反論せず、素直に頷いた。


「……? 何か音が聞こえるわね」


「本当だ。人の話し声か……?」


 こんな森の中で、私達以外の話し声がするのは、さすがに気になった。しかも、それは私達が向かっている先から聞こえてくる。


 もしかしたら、例の商人たちに先を越されてしまったのかもしれない……そう思うと、焦りそうになる。

 人に偉そうにいっておいて、自分が焦ってたら話にもならない。落ち着かないとね。


「あれは……」


 声のしたところに到着すると、そこにはやはりあの時にあった商人がいた。それも、しっかりと武器と防具を装備した護衛を何人も引き連れ、何か入った麻袋を馬車に積み込ませている。


 その中で、一人だけ何もしないでふんぞり返っている人物がいたのだけど……その人物は、私にとって最悪の人物だった。


「……マグナス様!?」


「む? ふふっ、やはり来たか」


 まさか、マグナス様と再会するとは思っていなかった私は、驚いて声を荒げてしまった。


 一方のサイラス様は、私の前に出て、私を守ろうとしてくれた。


 そして……マグナス様はというと、私の登場に一切驚いていないどころか、嬉しそうにニヤニヤと笑っていた。


「久しぶりだなエリシア。まさか、貴様が本当にサイラスと一緒にいるとは」


「ど……どうしてこんなところに!?」


「仕事と私用だ。最近、サリューが必要になる仕事が来たものでね。それで、サリューを仕入れようとしていたこの男と取引をして、サリューを手に入れに来たのだ」


 マグナス様の視線の先には、カロ君に高値で取引をしようとしていた、あの商人が不敵な笑みを浮かべていた。


「あなたのような、仕事を丸投げして女遊びをしているような人が、こんな危険な場所に来るだなんて、信じられないわ!」


「もっともだな。私も普通なら絶対に来ないのだが……こいつと雑談をしている時に、貴様の話を聞いた。サイラスのギルドで世話になっていることや、サリューを求めていることもな」


「どうしてそんなことまで……?」


「ひっひっ、私の情報網を甘く見てはいけませんよぉ。あの忌々しいジジイがモール病なのも、あなた達が治療のためにサリューを求めていることも、全て調べがついてますのでぇ」


 私の知らないところで、ずっと監視をされていただなんて……何とかしないとって気持ちばかりが焦って、全然気づかなかった……!


「……一つ聞きたい。あなたは、モール病にかかっている彼を、どうしてそこまで憎んでいる? 初めて出会った時も、彼が病で倒れているのを、喜んでいるようなことを言ってましたよね?」


 サイラス様の言う通り、もし何か恨みがあれば、カロ君に法外な値段で売ろうとしていたことにも、それを喜んでいたことにも説明がつく。


「おや、聞かれていましたか。奴は私のかつての商売敵でしてねぇ。それはそれは腕利きの商人でした。奴のせいで、随分と損をしてしまったからですよ」


 ……人を一人、間接的に殺そうとしているのだから、もっと恨んでも当然と思えるような内容かと思っていたのに、思った以上にどうでも良い理由だったわ。

 いや、商人からしたら、凄く恨むような内容なのかもしれないけど。


「ジジイをこのまま殺すために、サリューを独占したい我々と、仕事でサリューを求めているマグナス様。双方の利益が一致したというわけですよぉ」


「そういうことだ。話を聞いた時に、まさかとは思ったが、本当だとしたら面白いと思ってな。エリシアなら必ず自分で採りに来ると踏んで、こうして出向いてやったのだよ」


「ふん、天下の薬師ギルドの長がフラフラ出歩くとは、随分と暇なんだな」


「サイラス様、それをあなたが言うの……?」


 明らかに自分に返ってくるような言葉を投げつけるが、マグナス様は特にそこに言及することなかった。


「ごほんっ! それで、どうしてこんな危険地帯に来てまで、エリシアに会いに来たのですか?」


「私は、エリシアの悔しがる顔を見たかったのだよ。社交界で私に恥をかかせた、忌々しい女め……!」


「は……はぁ!? ありもしないことをでっちあげて、なんですかそれ!? 私はそれを利用しただけです!」


「私の所有物の分際で、主人である私を利用しようとしたこと自体が、許されざる愚行なのだ!」


 誰が聞いても、絶対に悪いのはマグナス様だと言われるような仕打ちをしておいて、いまだにこんな酷いことが言えるだなんて、本当に人として終わっているわ。


「……ふん、まあいい。その偉そうな口も、もうすぐきけなくなるだろうからな」


「どういうことだ!?」


「既にサリューは、我々が全て採取し、ちょうど積み込みが終わったところだ。もう月の泉には、なにも残されていない!」


 さっきの麻袋には、サリューが……!? そんな、一本も残っていないとうの!?


「嘘だと思うなら、確かめてくるがいい。月の泉は、目と鼻にあるぞ?」


「くっ……サイラス様、行くわよ!」


「ああ!」


 もしかしたら、不意打ちをしてくるかもと警戒しながら、月の泉に向けて走り出す。


 それから間もなく、私達は少し開けた場所に出た。

 夜だというのに、水面が月の光でキラキラと輝く、不思議な泉……ここが、月の泉だ。


「……なにも、ない……」


 私が読んだ本には、採取できる時期になると、月の泉をぐるっと囲うように、白い花ビラに赤いラインが入っている特徴的な花……サリューが咲いているはずだ。


 なのに、目の前にはサリューの姿は一切無く、荒らされた土が広がっているだけだった――

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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