悪徳領主を退治したら、25年ぶりに火山が噴火しました!
私は軽いつもりで、オスモの所に行くことにしたのだ。そこに危険があるなんてこれっぽっちも考えていなかった。本当に能天気姫だった。
後で「なんで、俺を連れて行ってくれなかったんですか?」とアードルフに散々怒られたけど。普通自国内の領主が反逆するなんて思っていないじゃない!
だって、私は嫌なんだけど、ついた二つ名が厄災女なのよ!
そんな私を狙う命知らずが、この前、隕石雨で被害受けたところの星にいるなんて思うわけ無いじゃない。
私は領主の執務室に案内された。
確かに案内する奴らの目付きがやくざっぽいなと思ったのよ。
それに案内去れた所がなんか殺風景な部屋だった。領主の机と椅子があるだけで、王族である私の座る椅子もない。
後ろのヨーナスの目がキラリと不気味に光ったんだけど、この領主、下手したらもう終わりかもしれない。私は関係ないけど、ガマガエルのような領主に少しだけ、同情してあげた。
「これはこれは王女殿下、わざわざお越し頂けて光栄ですな」
全然光栄そうでない口調でオスモは話してくれた。良かった。アードルフを連れてきてなくて……
連れてきてたら、今頃こいつの頭は首から切断されていたと思う。
「何の用なの? 私はこの星を浄化するのに忙しいんだけど」
私は少しだけいらっとしてオスモを睨んでやった。
「ほう、きれいな声で鳴かれますな。鳥のように」
なんか下卑た口でガマガエルが言ってくれるんだけど、こいつ死にたいんだろうか?
私はよく理解できなかった。
私にこんな口聞いてきて、まともに生き残れた奴は今までいないんだけど……
いつの間にか私たちの回りを目の鋭い男達が囲んでくれたんだけど……
「怯えられる顔もおきれいですな」
私は飛び出して行きそうなヨーナスを押さえた。
「別に怯えてなんていないわよ」
こいつは馬鹿なんじゃないの?
私はほとほと呆れた。
「ふんっ、空元気はそこまでだ」
回りの男達が全員銃を抜いて私に向けてきた。
これで反逆罪確定だ。
いや、待てよ、やっぱり一発くらい撃たしたほうが良いだろうか?
私が下らない事を考えていた時だ。
「やっと自分の立場を理解していただきましたか? 判るのが遅いですな。こんなところに文官と二人だけで来るなんて、本当に飛んで火に入る夏の虫ですな。フッセン男爵に可愛がってもらえばヒイヒイ良い声で鳴かれるんでしょうな!」
ガマガエルが下卑た笑みを浮かべてくれた時だ。
ズバッ
止める間もなかった。
我慢ならなかったのか、私の後ろから、ヨーナスがレイガンを発射していた。
レイガンの光線はガマガエルの右腕を貫いていた。
「ギャーーーー、貴様なにやりやがる!」
ガマガエルがのたうち回ってくれた。
「貴様、閣下に向けて何をしやがる」
鋭い視線を私達に向けていた男達が一斉にヨーナス目指してレイガンを発射した。
こいつらは本当に馬鹿だ。防御体勢万全の私達にレイガンを撃って来るなんて。
マッドサイエンティストのボニファーツご自慢の絶対防御システムが瞬時に作動した。私の回り半径2メートルに薄いバリアが張られる。仕組みは私には説明してもらっても全然判らなかったけれど、当然そのバリアはヨーナスも覆っていた。レイガンの光がその幕を通過することはなかった。
何しろ、ボニファーツが言うには熱核爆弾が近くで爆発しても、一度なら大丈夫とかいう代物だ。
更にこれ、光は反射するのだ。レイガンが当たったところが反射して、多少拡散して、撃った本人に返った。
ズバッ、ズバッ、ズバッ
「ギャーーーー!」
男達の悲鳴が聞こえた。
御愁傷様。
見たくないけど、回りの男達は瞬時に倒れていた。拡散したといえどもレイガンの直撃を受けたのだ。
私は腕を押さえて、のたうち回っているガマガエルに近付いた。
レイガンをガマガエルに向ける。
「ヒィィィィ!」
ガマガエルは驚愕して私達を見た。
「な、何で貴様らは無事なのだ?」
「何でって、完全防御してるからね」
私は肩をすくめた。
「よくも姫様に銃を向けたな。貴様は反逆罪でここで処断してやろうか」
ヨーナスが冷たい視線でガマガエルを見た。
普通なら、ここで格好良く、ガマガエルの名前を述べて、罪状を説明して捕まえるんだけど、名前を忘れてしまった……
ガマガエルって言うわけにもいかないし……
私が下らない事を考えていたら、
扉が開いて、わらわらと警備兵が駆け込んできた。
「お前達!」
ガマガエルが嬉々としたが、ヨーナスがガマガエルを起こして、レイガンを突き付けた。
「動くな、このオスモがどうなっても良いのか?」
そうだ。オスモだった。私はガマガエルの名前を思い出していた。
「ふんっ、オスモの代えなどいくらでもいる」
指揮官らしき男が人質のオスモを無視してくれたんだけど……
ええええ! こいつらオスモの部下じゃないの?
「お前ら、何を言うんだ?」
「我らは男爵様の配下のものだ。貴様の命などどうでも良い」
「おいおいお前ら、そんなこと俺達に言って良いのか?」
ヨーナスが呆れた。
「構わん。男の貴様はここで死んでもらうし、王女は奴隷として帝国に連れていくからな」
この指揮官らしき男が宣ってくれたんだけど、こいつら、倒れている男が見えないのか?
「ふんっ、こちらは実弾だ。バリアは利くまい」
男は笑って言ってくれたけど、ボニファーツの説明に実弾だからダメというのはなかった。それよりも私はとても、大切な事を忘れているような気がした。
絶対防御システムが発動すると、次は反撃だったような気がする。それもとんでもない反撃だったような気が……
「ピロリロリン!」
また、人を馬鹿にしたような音楽がなった。
「姫様、また、何を遊んでいらっしゃるんですか?」
そこにいきなり現れた立体スクリーンにアンネが映った。
「遊んでないわよ、帝国の特殊部隊に襲われているのよ」
「ああ、やっとオスモが尻尾を出したのですね」
「ちょっと、アンネ、知っていたら、私に報告しなさいよ」
私が怒って言うと、
「なにいってるんですか、報告書ならあげていますよ」
アンネが呆れてくれたけど、そういえばとても分厚い報告書をもらっていたような気がした。
「あんな分厚い報告書を見る訳ないでしょ!」
私は叫んでいた。
「それよりも、絶対防御システムが発動したので、艦砲射撃がカウントダウン開始しました」
「艦砲射撃って、衛星軌道上から撃ち込むの?」
私は唖然とした。
「ふんっ、そんなのは大したことはなかろう」
帝国の奴らは平然と言ってくれるけど、いや、ボニファーツの考えることだ。絶対にろくなことはない。
「隊長、こいつ、厄災女ですよ」
ぎょっとした顔をして、黒ずくめの一人が叫んでくれた。
「なんだ、厄災女ッて」
「気に食わないことがあったとかで、主砲を恒星ガニメデめがけて放ったら、ガニメデが超新星爆発起こしたっていう疫病神です」
「しかし、いくらなんでも、大気圏外から撃ち込んでもどうということはあるまい」
「なにいってるんですが? 普通赤色巨星に主砲撃ち込んでも超新星爆発は起こりませんぜ。それを起こすから厄災女なんですって」
「はあ、しかし、」
男達が少し慌て出したときだ。
「3、2、1発射」
淡々とアンネはカウントダウンしてくれたのだ。
空の一角がピカッと光った。
衛星軌道から一条の光の帯が領主館を直撃した。
ドカーーーーン
大爆発が起こった。
その前に私はヨーナスに地面に押し倒されていた。
背中に爆風が襲う。
爆音と爆炎が飛び交って凄まじい爆発だった。
爆煙が収まった時に回りを見ると、上にあった建物が消えていた。
もう、周りに立っている者はいず、私の上でヨーナスも気を失っていた。
ドッカーーーーン
唖然として、立ち上がった私の前に遠くで爆発音がした。
「えっ?」
遠くにそびえ立つサーリア山が噴火したのだった。
25年ぶりで噴火したサーリア山のからの火山灰でこの中継都市が覆われるまでそんな時間はかからなかった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
厄災女の黒歴史がまた1ページ!








