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側近の独り言 王女を助けるために緊急二段階ワープをすることになりました

 俺が考えに考えた帝国の第一艦隊に勝つ作戦は最初は恐ろしいほど順調に進んだ。


 姫様が上手く皇帝の側近達を誤魔化してその目の前で貨物船を避難船だと主張して通過してくれた。

 それも皇帝が率いる無敵の大艦隊の進路まで変更させてくれた。


「儂が知る限りでは皇帝陛下が避難船のために艦隊の進路を変更したことはこの25年間にない。それをされた姫様は素晴らしいな」

 ボニファーツなぞ諸手を挙げて喜んでいた。


 俺もまさか皇帝の進路を変更させるとは想像だにしていなかった。


 姫様の勇気というか蛮勇と言うかには驚かされた。


 その艦隊を過ぎた後に、後方の今回の作戦の要の補給部隊に姫様一行は襲いかかってくれた。

 何故か第二戦隊のドワルスキーがいて計画外だと驚いたが、そのドワルスキーの船を瞬時に戦闘不能にして後方部隊を一気に叩き潰してくれた。


 よし、これで勝った!

 そう俺は確信した。



 今回、俺とボニファーツは帝国の戦略コンピューターの侵入になんとか成功した。

 そして、できる限り各艦に積む燃料も弾薬も少なくなるように細工したのだ。

 各艦の重量を軽くして各艦の航行スピードを上げるという名目のために。


 当然燃料等が少なければ各艦の重量が減って移動速度は上がるが、補給を受けないで戦える時間は短くなる。姫様が奇襲で補給部隊を殲滅してくれたので、帝国艦隊はおそらくあと一両日くらい行軍するくらいの燃料しか保持していないはずだ。


 もう帝国軍はこの瞬間撤退するしか手はなかったはずだ。


 しかし、普通は撤退するはずなのに、銀河帝国皇帝は姫様を攻撃する暴挙に出たのだ。

 脇目も振らずに一気に姫様の貨物船一隻に全艦隊で襲いかかった。

 途中で艦隊が航行できなくなっても、姫様さえ押えれば良いと皇帝が判断したのだ。


 さすが銀河帝国皇帝、伊達に100戦100勝していない。


 俺は補給船団が殲滅されれば8割方皇帝は手を引くと思っていた。

 しかし、そうならなかった。皇帝の性格を俺は読み間違えていたのだ。

 帝国の皇帝からしたら辺境の姫など大したことはないと想定したのに、ここまで姫様に執着するとは思ってもいなかった。



 まあ、最悪こうなる事は想定はしていた。


 主にボニファーツが……

 ボニファーツはこうなったときのため用に自分が手塩をかけて開発した最終兵器のコンパクト版を貨物船セラフィーナ丸に積んでいたのだ。


 でも、その最終兵器を皇帝相手に使うのか?

 俺はさすがに躊躇した。


 もし皇帝がここで亡くなれば帝国は皇帝位を巡って争いが起こり、下手したら内乱が起こる可能性があった。そんなことをして良いのか?


「ふんっ、小僧。戦いを始めたということは最悪の事態を想定しなければいけない。皇帝陛下も当然想定しているはずだ。それをどれほどリスクと想定しているかは知らんがな」

 ボニファーツは遠くを見るようにして言った。


「イグナーとが口を酸っぱくして陛下に話しておったわ」

 イグナートは皇帝の王配だ。皇帝のために100戦したと聞いている。皇帝の百勝の多くに多大な貢献をしていたとも噂されていた。


 そのイグナートがもういないことは皇帝にとっては誤算だろう。

 いなくなってリスク管理がおろそかになったという事か?


 姫様が皇帝を倒せば本当に歴史に名を残すことになるだろう。

 俺にとって姫様が到底手が届かなくなるに違いない。


 俺はそう考えて、慌てて首を振った。今はそんなことを考えているときではない。


 ボニファーツが喜々として姫様に最終兵器の使い方を教えていた。


 姫様も使う気は十分にあるみたいだ。

 これで歴史は変わるかもしれない。

 俺は戦慄を覚えてみていた。


 帝国はまさか姫様が最終兵器を持っているとは思ってもいなかったのだろう。

 何の警戒もなく突き進んできた。イグナートがいなくなった弊害だろう。

 俺は勝利を確信した。



 姫様が最終兵器を撃った。


 姫様の機体が真っ白に光る。

 そして凄まじい光芒の塊が帝国の起動歩兵に襲いかかった。

 大半の起動歩兵は一瞬で蒸発した。

 幾多の戦いで勝利をもたらしてきた第一艦隊起動歩兵部隊は大半が活躍することなく宇宙の藻屑に消えた。


 そして、その光の束は先頭の第十戦隊に襲いかかった。

 第十戦隊もひとたまりも無かった。一瞬で宇宙の藻屑に消えた。

 第九戦隊は少しの間は残っていたが、これも宇宙の藻屑に消えた。

 第八も第七もそうだ。第六戦隊は戦艦を残して消滅した。

 そして、真ん中にいた皇帝の上座船マーズはを中心とした第一戦隊は光芒に包まれたが、端の駆逐艦は半壊したが、巡洋艦はかろうじて残っていた。旗艦マーズはうっすらと赤く光って、最終兵器の光芒を弾いたのだ。


「くそ、儂が設計した防御兵器をまだ残していたのか」

 ボニファーツはコンソールに両手を叩きつけて悔しがったが……

 無敵の盾と矛が戦えばどちらが勝つか。どうやら、防御の盾の方が強かったらしい。


 閃光が消えた後、旗艦マーズは残っていた。

 赤い艦影が少し黒くなっていたが、その地に存在していた。

 姫様の攻撃が利かなかったのが判った。


 これで勝てたと俺が安心したときだ。

「25番暗黒流の動きがおかしいです」

 悲鳴に似たアンネの声が聞こえた。

「何だと」

 俺は慌てて暗黒竜の流れを睨んだ。

 流れが速くなっている。

「姫様に直ちに撤退の連絡を」

「連絡がつきません」

「悪黒流の妨害か」

「判りませんが、どうやら、ビーナスのメインエンジンが故障したのでは」

「なんじゃと」

 慌ててボニファーツが計器を見て確認を始めるが、暗黒流の流れが急速に早くなっている。

 やはり最終兵器はビーナスのエンジンには高負荷過ぎたのだ。

 でも、エンジンが止まってしまっていては絶対防御システムが使えない。

 このままでは姫様はやばい。

 やっぱり25は姫様にとって鬼門だったのかもしれない。

 でも、そんな鬼門から俺が救ってやると俺は決意した。


「緊急ワープを行います」

 俺が言うと

「ヨーナス。この船は短距離ワープは出来ないぞ。それよりはセラフィーナ丸にさせた方が良いのでは無いか」

「ワープの細かい位置決めは熟練の技術がいります。マルコに二段階ワープさせた方が確実でしょう」

「えっ、二段階ワープですか?」

 俺の言葉にマルコが驚いて俺を見返してきた。

「1光年のワープを行って、すぐ二回目のワープで姫様の傍に出て収容する」

「えっ、そんなことができるわけないじゃないですか」

マルコが目を見開いて拒否してきたが、

「マルコなら出来るだろう、頼む」

 俺はマルコを拝んだ。

「マルコ、時間が無い。すぐにワープだ」

 艦長が命令してくれた。

「えっ?」

マルコは俺と艦長を見比べたが、2人が指示を翻さないとわかったのか

「了解しました。どうなっても知りませんからね。短距離二回ワープ準備入ります」

 マルコが頷いた。

「頼むぞマルコ」

 ボニファーツの声にマルコは頷く。


「総員二回の短距離ワープを行ってエンジンの動かない姫様の傍に強引に接近して姫様を回収する。回収班は直ちに準備せよ」

 全員慌ててワープ準備に入った。

 非常警報が鳴ってフックで回収する班が準備に駆け出す。


「座標決定しました」

「よし、短距離ワープなら、すぐに行けるじやろう」

 慌てたボニファーツの声に

「緊急ワープ」

 艦長が命じていた。

「緊急ワープ」

 次の瞬間ホワイトアウトしてジュピターはワープした。

ここまで読んで頂いて有り難うございます。

あと少しで完結です。

お楽しみ頂けたら嬉しいです

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


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