惑星浄化中に領主から呼び出さて文官一人だけ連れて行くことにしました
惑星サーリア浄化計画は、ヨーナスとボニファーツが協力して作ってくれた。
よく出来た計画書だった。
一言で言うならば隕石雨から放出された隕石の破片を集める、これに尽きた。
大まかに分けると大気圏内に放出された細かい隕石の破片をできる限り集めて、地上に降り注いだ隕石片も可能な限り集めるのだ。
でも、言うは易しやるは難しだ。
「ええええ! ヨーナス、こんな事をやるのか?」
アードルフは計画書を見て叫んでいた。
「当然だ」
「しかし、高度1万メートルで微速で回収装置を背負って飛ぶってなんだ?」
「微速って何キロなんだ?」
「25キロ前後って書かれているぞ」
「また、25かよ」
アーロンが何故か私見てくるんだけど……
「そもそもそんな低速で飛べる訳内でしょう」
アードルフを筆頭に機動歩兵の騎士達が不平不満を述べたが、
「仕方が無いだろう。少なくても音速で飛ぶとほとんど回収できないんだから。この回収装置はボニファーツが微調整している分とても繊細なんだ。ただ、練度宇宙一のお前らなら出来るはずだから」
「えっ」
「練度宇宙一だと……」
「そうだ。練度宇宙一だ」
「まあ、そんなことはあるけどな」
「そこまで言われたらやるしかないな」
機動歩兵の騎士達は誤魔化されたけれど、それってめちゃくちゃ大変なんじゃ無いか?
私には出来るとは思えなかった。
でも、機動歩兵部隊がやるなら私も黙って見ているわけにはいかないだろう。
「仕方がない。やるか!」
私も嫌嫌立ち上がったら、
「姫様。どちらに行かれるおつもりで?」
ヨーナスが白い目で見てくれるんだけど……
「どちらにって、皆がやるなら私もやるしかないだろう」
「おやめください。機械が壊れます」
私の言葉に平然とヨーナスが言い返してくれたんだけど……
「はああああ!」
私はカチンときたが、
「この装置はとても繊細なのです。姫様には無理です」
ヨーナスはとんでもないことを言い出してくれた。
「何言っているのよ。私にも出来るわよ!」
「絶対に無理です。機械が壊れて下手したら暴走する未来しか見えませんから」
むかつくヨーナスは平然と言いきってくれた。
「な、何を!」
「まあ、繊細な機械を姫様が扱うのは無理だよな」
「言うこと聞かないからってボッチを張り倒していたけど、張り倒したら普通の機械は壊れるから」
「機械が暴走したら今度はサーリアが爆発するのかな」
アーロン、ヘイモ、ヨキアム達が何か言ってくれたが、そんなことで惑星が爆発する訳ないだろう!
私が怒鳴り返そうとしたときだ。
「お前ら何を言っているんだ。そんなわけないだろう!」
アードルフが怒ってくれた。
「さすが、アードルフ!」
私は嬉しくなった。
「でも、姫様、念のためにここはジュピターでお待ちください」
恭しくアードルフは言ってくれたが、絶対にこいつも信じていない!
そら見たことかというしたり顔をヨーナスがしてくれて、もう一度楓マークをつけたくなった。
「では、姫様行ってきます!」
海兵隊は渡された回収装置とデカイ袋を持って飛び出して行った。
ジェット噴射機を背負って低空を畑すれすれに飛んで落ちている灰を吸引機で回収するのだ。
「これが上手くいけばオスモ子爵には文句を言わせませんから」
なんか意地悪い表情で私にヨーナスは報告してくれたけど、絶対にアードルフ達には意趣返しに違いなかった。地上回収を手伝うと言っても海兵隊の皆して止めるように言われるし……どいつもこいつも……
「ヨーナスは何をているのよ?」
平然と座って何もしていないヨーナスを見て私は怒りの矛先を向けようとした。
「姫様。私にもやることは色々あるのです。王妃様への報告書とか陛下への稟議書とか、何でしたら代わって頂いても良いですが」
「いえ、良いです。がんばって下さい」
そんなの私が出来るわけはない。
判っていて言うなと言いたかった。
でも、忘れていた。報告書とかはいつもヨーナスが書いていてくれたんだ。
この前は父に切れたから飛び出してきたけど、ヨーナスだけは連れてくれば良かった。こいつはむかつくけれど、文官仕事は完璧だ。こいつがいれば適当な言い訳してくれて、母も許してくれたかもしれない。これからは文句の多いアーロン達は置いて行っても、ヨーナスだけは連れてこよう。
私が心の底で決意した。
すぐいい気になるヨーナスには秘密だけど……
仕方がないから私はヨーナスがまとめてくれた帝国の報告書に目を通していた。
帝国内では帝国貴族が色々暗躍してくれているらしい。
帝国内でやる分には問題ないが、我が国まで手を出してくれているとなると、こちらも手を控えているわけにはいかない。
しかし、いつ読んでもヨーナスの報告書は完璧だ。的確に私の知りたいことを教えてくれる。
一家に三人くらいヨーナスがほしい。ボッチをヨーナスに教育させようか?
そうすれば情報収集はボッチにさせて、母への報告書はヨーナスに書かせれば良いんではないだろうか?
私が下らない事を考えていたときだ。
「姫様、何をニヤニヤ笑っていらっしゃるのですか?」
私はいきなり目の前に整ったヨーナスの顔が現れてびっくりした。
そう、こいつは顔だけは良いのだ。性格は悪いけれど……
私は赤くなって……
「きゃっ」
驚きのあまり椅子ごと転けそうになった。
「だ、大丈夫ですか?」
慌ててヨーナスが椅子を支えてくれた。
「いきなり驚かせないでよ!」
私がヨーナスを手で押して遠ざけた。
ヨーナスは近すぎるのだ!
「何回もお呼びしたんですけど、姫様はニタニタされているだけで」
「もっと大きな声で呼びかけなさいよ」
私はしたり顔のヨーナスを怒鳴りつけていた。
「どうせまた、アードルフの事を考えていたのでしょう?」
「えっ?」
私はヨーナスが何を言い出したか判っていなかった。
「姫様の一番のお気に入りはアードルフですからね」
なんかヨーナスが拗ねているんだけど……
「アードルフは私の護衛隊長でもあるから傍には置いているけれど、今考えていたのは違うことで」
ヨーナスのことを考えていたなんて言うとまた調子に乗らすと碌な事がないし……
「ヴェルネリ王女のことですか。あの王女もおきれいでしたからね」
「えっ、そうか?」
私にべたつくヴェルネリに私はうんざりしていたんだけど……
「それよりもオスモから執務室に来て頂きたいと依頼がありましたが」
「えっ、オスモが……」
私は顔が引きつっていたと思う。
オスモはここの領主だ。今回のことを伝えなければいけないのだが、あんまり会いたい相手ではなかった。
「気が向かないのならば断りましょうか? そうかこちらに呼びつけますか?」
「いや、迷惑をかけたのは私達だから。こちらから出向くは」
私はどんな文句を言われるかと思うとうんざりしながら立ち上がったのだ。
私は私に忠実な態度を取っていたオスモがあんなことを考えているなんて思ってもいなかったのだ。
思っていたら海兵隊の一個中隊を引き連れていったのに! 皆忙しそうにしていたからヨーナス一人だけしか連れて行かなかったのだ。それが失敗だった。
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
帝国男爵へ王女を生け贄にしようと画策しているオスモの元に文官一人だけ連れてのこのこと行くセラフィの運命や如何に?
続きをお楽しみに!








