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皇帝の前で私の偽物が決め台詞を言い渡してくれました

「そう、その最終兵器ですぞ」

 ヨーナスの言葉を聞いてボニファーツが手を打って言ってくれたけれど、自分の作り出した兵器の名前くらい覚えておいてほしい。


「ボニファーツ、最終兵器があるってどういう事? それを積んでいるジュピターはユバスの衛星軌道上にしかいないじゃない」

「姫様、いつの話ですか? ジュピターも今はそちらに向かって全力で飛ばしておりますぞ」

「でも、それじゃ帝国の艦隊が来るまでに間に合わないじゃでしょ!」

 ボニファーツがこちらに向かっていると言ってくれたけれど、いくらジュピターでも来たときはもう終わっているはずだ。


「姫様、何をおっしゃっていらっしゃるんですか? ジュピターの最終兵器など今は話しておりませんぞ。ビーナスが使う最終兵器を改造した物があるのです。以前お話しましたよね」

 ボニファーツが指摘してくれたけれど……ビーナスの兵器ってどれも威力がありすぎて使いづらかった気がする。その最終兵器って……

「ちょっと待ってよ。あの、ビーナスの機体の2倍もあるって言う馬鹿みたいな大きさの搭載兵器よね。こんなのどうやって持つのよって私が無視した奴でしょう」

「左様でございます。折角儂が開発しましたのに、冷たくあしらわれたあれですよ」

 何でもボニファーツによるとあれはジュピターについている最終兵器をコンパクトに改良した物らしい。

「えっ、あれって本当にジュピターの最終兵器を改良した物なの? でもあれは発射実験さえしていないじゃない!」

 確かにボニファーツからは最終兵器だと言われてあったけれど、切羽詰まったどうしようもない時に使う兵器のことを最終兵器と言っていたと思っていたのよ。確かに規模が中途半端でもなくて巨大で、本当にボニファーツが開発した超新星爆発も起こせる最終兵器の改良型だとは思ってもいなかった。


「でも、いくらビーナスのエンジンがデカイとは言ってもあれだけの出力は出ないはずよ」

 私が言い張ると

「だからそれを改良したのです。その威力はジュピターの最終兵器には敵いませんが、10分の1くらいの威力はありますぞ」

 ボニファーツの言葉に私は驚いた。

 ジュピターの最終兵器は超新星爆発を起こさせるほどだ。

 その10分の一と言えども凄い物だと思う。

 そんな威力の兵器を本当にビーナスなんて小さい機体で放てるのか?


「発射した瞬間ビーナスが爆発するなんて事無いわよね」

 私は思わず確認していた。

「それはあり得ませんぞ姫様。ビーナスのエンジンなら発射に耐えられるはずです」

 耐えられるはずなのか?

 耐えられなかったらどうなるのよ?

 私は思わず聞きそうになった。


 まあ、その場合は爆発して終わりですねとかボニファーツは平気で言いそうだ。

 でも、あんなでかいの本当に持って本当にビーナスは飛べるの?


「そちらのアウノには装着方法を全て伝授しておりますからな。すぐに取りかかって下され」

 他に手段があればその手を使うが今回はそれを使うしかもう手がなかった。

 私は直ちに格納庫に向かった。


 メカニックが全員総出でビーナスにその最終兵器改を取り付けてくれた。

 しかし、どう見てもその逆でビーナスがその最終兵器改に取り付けられたとか見えなかったけれど……最終兵器が主でおまけがビーナスだ。

 これで本当に飛べるのか?

 私はとても心配だった。


「姫様。帝国第一艦隊、距離五万に接近中」

「艦隊が機動歩兵を射出し始めました」

「ようし、こちらもとりあえず全機発進よ」

 私はおっかなびっくりでゆっくりビーナスを上昇させた。


 両手で持ち上げてるんだけど、大きさの割にどでかいエンジンをつけているビーナスだから出来る芸当だ。身体の二倍の大きさの兵器を持ち上げるって普通は無理だ。

 普通なら完全に視界が遮られるし……

 さすが最終兵器はでかい。

 こんなのビーナスの手でも絶対に振り回せない。

 私の下に輸送船セラフィーナ丸を置いて、それを中心にマーキュリーを展開させた。


「敵機動歩兵その数200を越えました」

「姫様、帝国から通信です」

「繋いでくれて良いわよ」

 まあ、碌な事を言ってくるわけでもないし、私はこの兵器を操縦するので精一杯なのであまり話せないけど……


「ユバス王国セラフィーナに告ぐ。巨額の金を横領した貴様にはもう助かる道は無い。直ちに降伏せよ」

 そこにはわざわざ皇帝が出てきてくれて降伏勧告してくれた。

 横領って何よ。横領って!

 やったのはボニファーツとヨーナスよ! 私は叫びたかった。

「横領って姫様何やったんだ?」

「食い逃げじゃないのか?」

「それいえる」

「皇宮から金も払わずに逃げ出したからだろう」

「そうか」

「でも、あの皇帝も心が狭いな」

「本当だ」

「尻の穴が狭い」

アーロン達が好きに言ってくれてるんだけど……

私が反論しようとしたときだ。


「あっはっはっはっは!」

 いきなり私が馬鹿笑いしてくれたんだけど……ええええ!

 私は一言も話していないわよ。

 というか私の大写しが宇宙空間にデカデカと現れて両手を腰に当てて胸を反らしてくれていた。


「ちょっと、どうなっているのよ!」

 私がアウノに聞いたが、

「判りません。おそらくジュピターが何かしてくれているんだと」

「ボニファーツね!」

私はぷっつん切れたけれど、今更どうしようもなかった。


「ふんっ、侵略者風情が、大口を叩いてくれるわね」

「何だと、生意気な小娘め、何をほざいてくれる」

 画面の皇帝のこめかみがピクピクと震えているんだけど、

「いや、私は何も言っていないから」

 私が必死に言い訳しようとするがこちらの通信は届いていないみたいだ。


「高々機動歩兵25機とその壊れかけのちっぽけな輸送船一隻で何をするつもりだ」

「ふんっ。ここは聖地ユバス。かつて帝国の侵略を全て撃退してきた我がユバスに貴様が来たのが運の尽きだったな」

「き、貴様だと、小娘のくせに帝国の銀行から莫大な金を詐欺で搾取した上に、この帝国の皇帝たる私にその言い様、もう許さん」

更に怒らせちゃったよ。どうするつもりなのよ!

私はもう見ているしか出来なかった。


「それは私の台詞よ。かつて我が侍女を無礼打ちで虐殺、サーリアの地に麻薬を蔓延させて我が民である女達を奴隷にして貴族に売り飛ばして来た悪逆非道の皇帝よ。ここにサーリア、いやユバス王国の民に成り代わりて私が成敗してくれるわ」

 そのボニファーツが作り上げた私の偽物は私よりも格好良く決め台詞を決めてくれた。

次話に続きます

お楽しみに

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
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ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


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