中継星領主の独り言 可哀相な王女を捕まえて帝国の男爵に献上することにしました
私はオスモ、中継国家サーリアの領主だ。
我がサーリアは第25番恒星ヤムサの第三惑星ユバスへの中継都市として発展してきた。人口も今では100万人もいる。辺境の砂漠の惑星としては栄えている方だ。
ユバス王国には貴重な鉱物資源も多々あるし、銀河帝国と銀河連邦に囲まれた要衝でもあった。
しかし、ヤムサ太陽系は暗黒雲の動きが活発で一年の大半はこの暗黒雲に囲まれており、ヤムサ太陽系には中々、中に入れないのだ。
昔、探査隊が暗黒雲に阻まれて脱出に失敗、大半が死亡した事件に始まり、今までも年間数隻の宇宙船が暗黒雲に飲み込まれて行方不明になる魔の航路なのだ。彼の地自体は地球型の理想の惑星で人口はこのような辺境にもかかわらず五千万もの人々がいるのだが、船乗りにとっては命がけの航海でもあった。
そのために作られたのがこの中継惑星サーリアだ。
航路に慣れない商船や客船はこの地サーリアに碇を置いて、遊覧船や別の航路に慣れた貨物船に荷物を乗せ替えて人や荷物の搬入を行っていた。
我がサーリアはその中継貿易で成り立っていた。
50年前の紛争でサーリアの領地自体はユバス王国の管轄になったが、未だに帝国や連邦に繋がっている者も多々いる。
ユバス王朝自体が、帝国や連邦の傀儡国家であった。しかるにここ数年、ユバスのセラフイーナと言う若い王女が女だてらにいろいろ刃向かうようになってきてユバス王国がきな臭くなってきた。
まあ、女だてらにと言う言葉は帝国では禁句だが。
なにしろ帝国のトップはエカチェリーナという女帝で、その治世は25年にも及び、その間に帝国は領土を倍にしていた。
エカチェリーナは銀河帝国中興の祖なのだ。
その率いる艦隊は強力で何度も銀河連邦の艦隊を敗走に追い込んでいた。
帝国の威光は銀河の半数を照らし、俺も帝国の威光で領主になっていた。
一応ユバス王国内では一代子爵の地位を与えられていたが、ユバスの子爵など帝国では準男爵以下の扱いだ。そして、その地位は俺様一代限りだった。
俺は三代目の領主なる。
先代は帝国の威光に逆らったので、抹殺された。
強盗に射殺された事になっているが、その遺体は拷問された跡がそこかしこにある無残なものだった。
暗黒街では帝国のフッセン男爵の意向に逆らったからだと噂されていた。
そう、このような辺境の地には基本的に帝国の艦隊や偉いさんは出ててこない。
地方領主の領分なのだ。
フッセン男爵はここから200光年離れた地を治める男爵で領地の人口は1億を超える。
治める太陽系の数は100を超えた。
もっとも人の住む惑星は本星以外はほとんど無かったが……
帝国の国境地帯の一部の管理を任され、艦船は輸送船や哨戒艇全て入れると100隻を超えた。
この辺りでは一番栄えた領地なのだ。
その威光は帝国の威光を背にして周辺200光年に及んでいた。
そして、フッセン男爵が扱うものの中には銀河法で禁止された奴隷売買や海賊船の管理まで含まれていた。
俺はこの地の領主として、商会や船主からフッセン男爵への裏金を一部手数料を引いて仲介していた。
商会や船乗りは安全料の名の元に裏金をフッセン男爵に渡して、海賊の襲撃から守ってもらうのだ。この安全料を払わない愚かな客船や商船が海賊達に襲われると言う算段だった。
その暗黙の了解を破ってセラフイーナが海賊を攻撃し始めたのだ。
フッセン男爵の息のかかった海賊の辺境の赤髭が捕まってきたのには驚いた。
セラフィーナは銀河法に基づいて裁判をして重労働させるなり、処刑するなりしろと置いていったが、俺様がフッセン男爵の息のかかった海賊を処分できる訳などないではないか。
俺様は早速フッセン男爵にお伺いをした。
「ふんっ、そのような辺境の王女に捕まるようなドジな海賊などいらぬ」
しかし、高速通信に映し出されたフッセン男爵はけんもほろろだった。
「しかし、周りに対しての示しもございましょう」
俺様がそう聞くと、
「まあ、逃がしたければその方が好きにすれば良い」
フッセン男爵は赤ひげに対しては投げやりだった。
「セラフィーナの跳ねっ返りはいかがいたしますか」
「我が意向に逆らったのだ。ただで済ませる訳には行くまい。その方が捕らえて、我が方へ送れ」
俺様はフッセン男爵の言葉に目を見開いた。
「王国の王女をですか?」
「当たり前じゃ。王国の王女とはいえ、この地域を支配するのは儂じゃ。王国の奴らにも儂に逆らうとどうなるか目に物見せてやらんとな。
奴隷としてこき使ってやっても良し、娼館に売り払っても良し、その王女の体をじっくりと見た上でどうするか儂が判断する」
俺はフッセン男爵の目が一瞬欲望にギラギラと輝くのを見た。
このような男爵の前に可憐な王女がどのような目に遭わせられるか考えて、俺様は瞠目した。
まあ、帝国の男爵様に逆らう王女が悪いのだ。
「ふんっ、ヒイヒイ泣かせて見るのも良いかの?」
「さようでございますな」
俺様は画面の中でそう呟くエロ親父と一緒に笑ったのだ。
上手くいけば俺もそのおこぼれに預かれるかもしれないと期待したのだ。
俺は何故王女が厄災女と呼ばれているのかよく知らなかったのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
一代子爵のもくろみは果たして上手くいくのか?
続きをお楽しみに!








