側近がやった事に怒ったら帝国に勝つためにありとあらゆる手を打ったと開き直られて返す言葉がありませんでした
「上手くいきましたな、姫様」
ボニファーツが笑ってくれた。
「えっ、何が上手くいったの?」
よく判らずに私が聞き返すと、
「何をおっしゃっていらっしゃるのです。そもそも帝国は姫様が勝手に逃げ出したことに対して怒り狂っているのですぞ。それをエレオノーラ様を狙っているという風にすり替えましたからな」
ボニファーツがやりきった感満載で話してくれたが、
「それに姫様の25の呪いも初代聖女様からの呪いだったんですね」
ヨーナスが訳知り顔で言い出してくれた。
「何でよ」
「だって聖女様は25才で国王様にお会いになってそれから25年でお亡くなりになったのですよね」
「それがどうしたのよ?」
「いや先史文明から25万年眠られていたのでそれも25かなと」
「25の呪いの件はもう、良いわよ」
私は無視することにしたのだ。
「まあ、今はそれよりも帝国への対応ですからの」
ボニファーツは元に戻してくれた。
私は思い出した。
「そもそも今すぐ逃げましょうと言いだしたのはボニファーツとヨーナスじゃない! それに父上が怒り狂っていたのは私のフェイク動画を見たからでしょう! あの画像造ったのはどのみちボニファーツでしょう! どういうつもりなのよ!」
確信を持って私はボニファーツを睨み付けた。
ここまで私を傲慢にして果たし状を作り出せるのは身内くらいしか思いつかなかった。
「姫様。この映像を作ったのはヨーナスですぞ」
「ほ、ボニファーツ様、あなた様がもっと姫様の表情を触って傲慢な態度にしろとか、両手を腰に当てて偉そうな感じを出せとか指示されたんじゃないですか」
ボニファーツの言葉にヨーナスが慌てだした。
「何を言っとるのじゃ。儂の言葉に躊躇なく『そうですね』と頷いたのはその方ではないか?」
「それはそうですけど」
「そう、やっぱり二人が悪いのね」
私はこんな映像を作り出して皇帝に送ってくれた2人に対して怒りにまかせて叩こうとした。
「しかし、そもそも姫様がそのようにしろと言われたのではございませんか?」
ボニファーツが開き直ってくれた。
「何時私が皇帝にこんな上から目線の果たし状を送れって言ったのよ」
私が反論した。そんなことを言った記憶は無い。
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか? 決戦に勝つ確率を100%に上げよと命じられたのは姫様ですぞ」
「それと、こんな小娘のあんな傲慢な映像を送りつけるのとどう関係するのよ。いくら銀河帝国の皇帝でも頭にくるに決まっているでしょう!」
「そこがこの果たし状の肝なのです。皇帝がカンカンに怒り狂うことが大切ですからな。冷静なままこのユバス宙域にきてもらっても困るのです」
「えっ、そうなの?」
何かとても誤魔化されているような気がする。でもヨーナスによると、皇帝が親征してくるかどうかが、この作戦の肝だそうだ。そして、親征してきてくれた上で怒り狂って我を忘れて私に向かって攻め込んで来るかどうかでボッチの計算では作戦の成功確率が10%くらい違うそうだ。
高々10%の違いで、怒り狂った帝国軍に攻撃される私の身にもなってほしいんだけど……
「ボッチ、本当に10%も違うの?」
私が尋ねると、
「9.5%成功率が上がりました」
「そうなんだ」
この映像で10%も成功率が上がったんだ。
それを考えると私はあまり何も言えなくなってしまった。
でも、怒り狂った帝国軍を支えるのはとても大変なのではないだろうか?
私は呆然とした。
「他にも姫様が色々ありとあらゆる手を打てと言われましたからな。あらゆる手を打つました」
「どんな手を打ったのよ?」
心配になって聞くと
「帝国の銀行が一京ドルもの大金を我が国に援助して皇帝転覆を企んだとか、銀行のセキュリティがなっていないから何千億ドルもの金を盗まれたとか、皇帝は銀河法で禁止されている麻薬を輸出しているとか……」
「ああ、もう良いわ」
ボニファーツの言葉を私は途中でぶった切った。
「皇帝と一騎打ちして姫様が勝てば帝国からジュピターの建造費に関しては今後一切不問にするという、密約もニュースにして全銀河に流しましたからの」
「えっ、それも流したんだ」
「当たり前です。これで負けた皇帝が文句を言って来たら契約違反ですからな。堂々と帝国に対して文句を言えるのです」
自信を持ってボニファーツが話してくれた。
「でも、帝国ほど強いと密約を破って攻めてきそうだけど」
私が不安を口にすると
「皇帝陛下の自慢は今まで一度も嘘をついたことはないとのことでしたからな。それはありますまいて」
ボニファーツが自信満々に言ってくれるのたからそれはそうかもしれない。
でも、第一艦隊100隻相手に勝たないと話にもならないんだけど。
「まあ、エレオノーラが本当に先史文明の聖遺物を動かしてくれて帝国の艦隊を殲滅してくれたら、言う事無いんだけど」
私が期待を込めて言うと
「姫様我々は陛下の怒りを逸らすためにエレオノーラ様聖女説を大々的にしましたが、中々難しいのではありますまいか」
ボニファーツがあれだけ賛成していたのに、あまりにも手のひらを返すのが早いんだけど……
「でも、あの話は本当なんでしょう?」
私がボニファーツに聞くと
「本当の話も当然あるとは思いますが、話半分に聞いた方が良いかと。そもそもエレオノーラ様が本当に聖遺物を動かせるのならば少しくらい兆候があったはずです。陛下も王妃様も動かせるかどうかエレオノーラ様に触らせて実験していると思うのです。あのエレオノーラ様の性格からして少しでも上手くいったていたら、皆に、特に姫様に散々自慢されたと思いますが、姫様は何か聞かれたことがございますか?」
「そう言えばそうね。妹の自慢話はいろいろ聞いたけれど、何かを動かしたとか天気を変えられたとかきいたことも無いわ」
私は首を振った。
「なら何で帝国がエレオノーラを狙っているなんて嘘を言ったの?」
「陛下の怒りをフェイク動画から逸らせるために決まってるでしょう」
ボニファーツはにべも無かった。
まあ、エレオノーラに新たな力が宿れば勝つ可能性が上がるので私は妹が新たな力に目覚めるように神に祈ったのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
お待たせしました。
間もなく最後の決戦開始です








